表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/94

リベンジ

 翌日ぼくは無理を言って父ちゃんに森につれてきてもらった。

 ガジローもチョロチョロ足元を走り回っている。

 護衛の仕事の時は無理だが今はギルドで仕事を受けてないので連れてきたのだ。

 今日は目的があってきたのだが、訓練で使ってる刃引きの鉄製の剣を持ってこようとしたら、お前にはまだ早いって許可が下りなかった。

 数回の素振りで重さに振り回されるようになるのであれば実践で使えるわけがないとのことだ。

 ごもっともです。


「ガジローくんはあんましうろちょろしてはぐれないようにね」


 キュゥンと返事をしたのかどうか分からないが、鳴いた後辺りをクンクン嗅ぎまくっている。

 コボルトのやつでも臭いで見つけてくれればいいんだけど。


「父ちゃんは気配で魔物とかが分かるんだよね。昨日のコボルトがどこにいるか分かったりしない?」

「気配が分かるっていっても、そんなに万能なものじゃないぞ。それよりは地面を見て足跡を探したり痕跡をたどる方がいいと思うぞ」

「それ教えてよ」

「いや……俺ができると思うか? 今のは昔パーティを組んでたやつがそんなこといってた気がするってはなしだ。それにしてもこの辺りにはゴブリンはいるがコボルトはいないはずなんだがなぁ。昨日見かけたのは子供のコボルトみたいだったが、群れがどっかから移ってきたのかな、それとも群れからはぐれたやつが流れてきただけなのかな」

「もー、そんなことはどうでもいいの! 婆ちゃんからもらった鎌を取り返さなくっちゃ。あっ、こら待て!」


 ガジローが走り出し、ある木の下でクンクン臭いを嗅いだと思ったら、上に向ってキャウキャウ鳴き出した。

 視線を上に向けると……奴がいた。

 間違いない、昨日の鎌泥棒だ。木にしがみ付いたコボルトを見つけた。


「コラッ、降りて来い!」


 叫び、木に張り手をかまし、体当たりを食らわせても当然非力なぼくの力では木はビクともしない。

 手伝ってもらおうと父ちゃんの方を向いたら20メートルくらい離れたところでニヤニヤしながら、指でちょんちょんとこっちの方を指している。


 !?


 視線を外した隙にコボルトは鎌を振りかぶりながら木から飛び降りてきている。


 ちょっ!


 宙にいるコボルトをガン見しながらまたもやフリーズしてたら背後から何かが飛んできてコボルトの手にぶち当たり、鎌を取り落とさせた。


『キャウン』


 着地にも失敗したコボルトが鳴き声をあげる。


 好機(チャンス)


 ぼくの手に武器はないが、それは相手も同じだ。

 拳をギュッと握り力を込めパンチを食らわしてやる。

 ぼくの体は自然に動いた。


 振り上げた拳を円を描くように、そして両手を使うことにより攻撃力は2倍。遠心力を使い攻撃力をさらに増加させる。

 左右の手をぐるぐると回転させながら連続で打撃をぶち当てる。

 そう、自然と出た技はぐるぐるパンチだ!

 駄々っ子パンチより稼動範囲が多く攻撃力はダンチだ。


 じゃねー

 なにこれ?

 子供の体には自然にこの技が組み込まれてるの?


 我に返り体を丸めてガードしていたコボルトから少し距離をとると、すぐに反撃してきた。

 弧を描くようにして少しだけ伸びた爪がこちらを襲ってくる。


「相手の動きは遅いぞ、焦らずよくみればかわせるはずだぞー」


 少し離れたところから緊張感のない呑気な声が聞こえ、それにより少し冷静さを取り戻すことができた。

 そうだ、こんなやつにビビッてどうする。

 心を安定させてくれるっていう精神操作(微)(自)スキルさんよ仕事の時間ださぼってないで働いてくれ。

 自動発動らしいが、意識すると効果があがるのか気持ちが落ち着いてきた。


 眼前に迫ってきた爪に対して相手の腕をこちらの掌で押し、軌道を変えることによって攻撃を避ける。

 先ほどまでの焦りによりよく見えていなかった動きが今でははっきりと分かる。

 両手を使って交互におこなう爪ひっかきも危なげなく捌いていく。

 もう負ける気はしない。

 握った拳を真っ直ぐ相手の鼻面に叩き込んだ。


『クキャン』


 鳴き声をあげうずくまる相手に追撃とばかりに殴りかかろうとしたところ、足元にガジローがちょろちょろじゃれついてきて上手くいかない。


「コラっ、ちょっとあっち行ってな」

『く~ん、く~ん』


 ぼくの足元を離れたと思ったらコボルトの方に行きペロペロと顔を舐めだした。


 あ~、もう何やってんだよ。

 やる気が削がれたぼくはコボルトを無視してその場を後にした。


「もういいのか?」

「うん、もう気は済んだからいい。あいつも子供なんでしょ」

「まぁそうだが、冒険者としては魔物をそのままにしておくってのもまずいんだが、今回はガジローの顔を立てるか」

「そういや、コボルトって犬顔だけど狼と仲良かったりするのかな」

「知らんがな、ほいっと」


 雑談中にしゃがんで石を拾ったかと思ったら軽く手首のスナップだけでそれを投げると、視線の先には倒れた角兎(ホーンラビット)がいた。

 また石を拾い、ひょいっ、ひょいっと歩きながら角兎を仕留め担いでいく。

 4匹目を仕留めたところでそれを後ろに放り投げるとそのまま歩を進める。


「なんで捨てたの?」

「捨てたわけじゃないぞ。持ちきれないからリリースしたんだ」


 リリース?とか思いつつ振り返ると角兎を抱えて木々の合間に走っていくコボルトが見えた。

 ふ~ん。


「なーにニヤニヤしてんだ。それより鎌は取り返さなくてもよかったのか?」

「あーー、すっかり忘れてた」


 昨日に引き続き少し落ち込んだ気分のまま家へと帰った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ