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木こりは木を伐る

 冬の間にうちの母や伯母ちゃんが作ってたナップザックを背負いぼくは街の外を歩いてる。

 ナップザックって言葉は日本ではリュックより簡易な背負う袋みたいな感じで使われている。

 あっと、急がなきゃ置いていかれちゃう。

 ぼくは前を歩いているラパウルに追いつくように小走りで駆け出した。


 実は父ちゃんは板芝居の絵を描く仕事をもらったけど、まだ板芝居を広めるゴーサインがでてないのでお金が入ってこない。

 それなのに屋敷では爺ちゃんところからメイドさんとか派遣してもらってて、その賃金はいらないけど食費とかは当然必要になるわけで実はちょびっと生活が厳しかったりしている。

 そんなわけで父ちゃんはちょくちょく冒険者のお仕事に出かけてるんだ。

 それで近場のあまり危険じゃないとこに行くときはぼくも時々連れて行ってもらってるっていうわけ。


 今日は東の森で木こりが木を伐る際の安全警護のお仕事。

 実は父ちゃんは結構気配をよむのが上手く、きこりさんからはいつも歓迎されてる。

 お荷物なぼくが一緒でも嫌な顔ひとつされないくらいにはね。


「ラパウルさん、今日もよろしくお願いします。それと坊主もな」


 がたいのいい木こりのまとめ役が、そしてそれに続いて4人の木こりもそれぞれ声をかけてくるので、こちらも挨拶を返す。

 腕とかむきむきでモンスターとか来てもひとひねりにできそうな感じだけど、集中して木を伐ってる時に襲われたらひとたまりもないみたい。

 電動のこぎりとかないこの世界、もちろん木を伐るのは斧でだ。


「あんまし離れすぎるなよ」

「わかってるよ」


 ラパウルの声に返事をし、ぼくは目当てのものを探すため辺りをキョロキョロしながら歩いていく。

 おっ、発見。目当ての薬草を見つけ腰に挿した鎌を引き抜き革カバーを外し薬草を刈る。

 5本みつけたら3本程度刈り、根こそぎ採ってしまうといったことは避けるようにしている。

 あっ、あれは痛み止めだっけ?

 大漁大漁!


 鮮度を保つためとかいって濡れた布に包んで背負ったナップザックに入れたけど失敗だった。

 革製とはいえ背中がじとっと濡れてきた。

 採取なら背負い籠にするべきだった。

 でも背負い籠ってあるのかな。


 ガサガサッ


 音がしたので採取の手を止め下を向いていた顔をあげた。


 えっ!?


 すぐ目の前の藪からやせっぽっちの子供が出てきた?

 いや、背はぼくと同じくらいだけど毛むくじゃらで顔が犬???

 とっさの事で思考が少しの間フリーズしてた。

 だが、それはぼくだけじゃなく相手も同じみたい。

 1メートルもない至近距離。お互いがお見合い状態だったが相手のほうがいち早く我に返ったみたいだ。


 右手、ぼくから見て左側だから右手で間違いないよな。

 右手を振りかぶり手に持った棒を振り下ろしてくる。

 やばっ!

 次いで再起動したぼくはかわそうとしたがしゃがんだ状態だったため尻餅をついてしまい、それで上体が後ろに反れたため難を逃れることができた。

 尻餅をついた状態で右手に持った鎌を振るう。

 犬顔のやつは飛び跳ねて下段に振るわれた鎌をかわす。

 腰も入ってないただ手を振っただけのひょろひょろの攻撃だから当然だ。


 今度は犬顔は体ごとこちらに飛び掛ってくる。

 ぼくは体をひねってそれをかわす。

 犬顔は手に持った棒を滅多矢鱈に振り回してくるのでぼくも対抗して鎌を振り回す。

 鎌の刃とか先とか向きも何も関係なくただただ振り回す。

 その戦いというにはお粗末な競り合いに勝ったのは犬顔だ。

 棒がぼくの手を叩き鎌を取り落としてしまう。

 犬顔は棒を投げ捨て鎌を拾うとニヤリと笑った……ように見える。

 明らかな不利を感じたぼくは背を向け一目散に逃げ出した。


 走り出し、追いかけてこないか振り向いたところで前方から肩を掴まれ止められてしまった。

 回り込まれた!?

 いや、仲間か?


「無理と判断したら逃げるのも大事だ。正しい判断だよ」

「と、とうちゃ~ん」


 不覚にもラパウルの足にしがみつき泣き出してしまった。

 ぼくプックル、5歳。だからいいよね。

 前世の年齢? なんのこと?



 しばらくすると落ち着き、涙も止まったので聞いてみた。


「いつから見てたの?」

「う~ん、たぶん最初からかな。コボルトとプックルが鉢合わせしてお互いに驚いてたところなんか笑いを堪えるのに苦労したよ」


「えー、どうして助けてくれなかったのさー。死んじゃうとこだったじゃない」

「あのコボルトもまだ子供みたいだったし、刃物も持ってなかったから試しに戦ってみるのもいいんじゃないかなって。危なくなったら助けに行ける位置にはちゃんといたぞ。鎌をとられた後逃げなかったら割って入っていくつもりだったし」


「あっ、鎌ー。商人の爺ちゃんから貰ったやつなのにー」

「残念だがあのちびコボルトも既に逃げちゃってるしな。それより俺は木こりさん達の護衛だからあんまし離れてるとまずいんだ、戻るぞ」


 その日は鎌を無くしたこともあって、薬草採取をそれ以上やる気もおきず皆が帰る時間までぼけーっと過ごしてた。



先週頃から書き溜めがなくなってしまった。

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