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訪問販売だぞ

 1週間後、ぼくら3人は食堂をやってる店を廻ってる。

 伯父さんにぼくとリーグにぃが見習い商人の小僧さんとして付いていってる感じだ。


 作ってもらった半分くらいは売れたので、その売れた分だけ追加で鍛冶屋のガンツさんに注文してある。

 伯父さんはまだまだ売れると見込んでるけど、ぼくはそううまくいかないんじゃないかと思ってる。



「こんにちは、わたしは商業区で雑貨屋をやっておりますドワイトといいます。今少々お時間よろしいでしょうか」

「仕込みに入るにはまだ少し時間があるが、なんだい?」

「はい、今回は調理器具の販売に来ました。おろし金、ピーラー、ミートハンマーの三点です」


 商人の爺ちゃんのお店のことを口にする。行商人というよりは聞こえがいいし、そこの雑貨屋でも働いてるし間違ってはいない。

 それでも食堂の料理人のおっさんはうさんくさいものを見るような目でこちらを見ている。


「リーグ!」

「はい、では商品の説明をさせていただきます。そちら様のお店でじゃがいもや大根などは使われておりませんでしょうか」

「どっちも使ってるぞ」


「それでは皮むきが大変だと思ったりしませんか?」

「毎日思ってる。あれは結構めんどくさい」


「そこで取り出しますはこのピーラー! このじゃがいもを見てください、ほら、さっさっ。次に大根、すっすっ」

「おぉぉ」


「お次はおろしがね、この皮を剥いた大根を、だー」


 あらかじめ持ってきていたジャガイモと大根の皮をピーラーでささっと手早く剥いてしまう。

 次いで大根をすりおろしし、ついでにりんごもすりおろす。

 リーグにぃがすりおろしたリンゴを料理人に匙を渡して食べてもらうと旨そうにすぐに平らげている。


「最後はこのミートハンマー、それと今朝市場で買ってきた庶民の味方、安いが筋張って硬いビッグラットの肉。これを焼いて食べても硬くて美味しくないでしょ。あ、今その厨房で少し火を使わせてもらうことってできませんか?」

「あー、かまわんがどうするんだ」


「まずここに肉がふた切れあります。この片方をっと…… このようにミートハンマーで叩きます。差し支えなければこの叩いたのと叩いていないやつを焼いてもらえないでしょうか」

「あぁ」


 料理人が焼いてきてくれた肉を食べ比べてもらった。


「……」

「いかがですか?」


 声もない料理人に伯父さんが声をかける。


「柔らかい……あのビッグラットの肉が……大通りの宿屋で最近いい肉をだしてるって噂を聞いたが、もしかしてこれのことか?」

「よくご存知で。数日前にこのミートハンマーと他2点をお買い上げいただきました」


「買うぞ、そのミートハンマーってやつを。売ってくれ!」

「おろし金とピーラーはいかがですか?」


「おろし金ってやつはちょっと使いどころがわからん。リンゴはそのままかじればいいし、大根もどろどろにする必要が感じられん。ピーラーもじゃがいもの皮を剥くのが面倒とはいえ、別に今までどおり包丁で向けばいい話だしな。でもその肉を柔らかくするハンマーはぜひ欲しい!」

「かしこまりました。ミートハンマーのお買い上げありがとうございます」


 やっぱこんな感じだよな。

 おろし金って大根おろしとか、にんにくやしょうがをすりおろしたりするけど、買ったとしてもどう料理に使えばいいかイメージ湧かないんだろな。

 ピーラーも包丁の扱いがいまいちな人でも手軽に使える利点はあるけど、本職の料理人には必要ないかも。

 その点ミートハンマーは使ってみると明らかに肉が食べやすくなるし一目瞭然。

 あとなかなか買ってもらえないのは金額がネックだと思う。

 日本みたいに100均って価格じゃなく、職人が一点一点手作りした一品なもんで価格的に1万円くらいのイメージになってしまうのもしょうがないしね。


 ぼくらはミートハンマーをお買い上げいただいた店を後にした。

 粘って売りつけるのではなく、さっさと次に行こうって考えで次々に飛び込み販売をおこない、その日はミートハンマー5本とおろし金2個、ピーラー2個を売り上げた。



「父さん、結構売れましたね」

「まずまずかな」


 ぼくも手放しで喜べるほどだとは思えない。

 そこそこの金額になったとはいえ、製作費とか引くと他にはない新製品を作って売ったにしてはちと寂しい。

 やっぱあっちで売るしかないか。

 お貴族様街!


「伯父さんって貴族街で商売とかってできるの?」

「えっ、いやいや、わたしなんか出来るわけないよ。貴族街で商売できるのは大店かバックに大貴族がついてる商店くらいだよ」



 ぼくはニヤリとほくそ笑むのだった。


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