毎朝の体操
翌朝から庭の隅で早朝トレーニングが始まった。
吐く息が白くなるのはもう少し先だが、それでも朝は少し寒くなっている。
まずはラジオ体操から始める。
みんなは知らないのでぼく主導でだ。
参加は屋敷にいる人間全員強制参加だ。
「新しい朝が来た、、、ふにゃにゃ~の声にすこやーかな胸を~」
ラジオの部分を適当にぼかしつつ歌う。
そして第一と第二の体操をして解散。
体力をつけるというより日頃動かさない筋肉や筋を伸ばしたりするストレッチ効果目的でおこなうのだ。
もっともストレッチをより効果的におこないたいのであればそれ用の動きもあるが、お手軽にそこそこの動作ができるというのがラジオ体操の強みだ。
工場での作業開始前のラジオ体操ではないが我が家の日課にしよう。
今度ラジオ体操の曲のオルゴールでも作ろうかな。
ピアノを10年以上習っていたのでラジオ体操程度曲の記憶を頼りに楽譜を書くのは難しいことではない。
それにしても結構続けてたよな。
最初は姉がピアノの発表会でお菓子の詰め合わせをもらってきたのが羨ましくて4歳の頃にぼくもピアノやるって言ったのが始まりだった。
それがなんだかんだで高校までやってたんだから……
ピアノの中を覗いてみると弦楽器のような打楽器のような機能がみてとれる。
それを再現するのはちと面倒そうなので木琴を作ってみた。
ソルフェージュとかいう楽譜をドレミでうたったりリズムをとったりも教わっていたので、絶対音感とはいかないまでも音程の高さなどそれなりに判別する自信もある。
長さの違う板を組み上げ、音を調節しつつそれなりのものを作り上げた。
といっても、実際に手を動かして作ったのは通いで来てくれている庭師のおじさんだ。
ぼくは後ろから口を動かすだけだ。
自分の不器用さは知っている。
庭仕事そっちのけでやってもらった。
板の長さ厚さで音を調整し、音が決まったらだんだん長さが変わってくるはしごというか線路のレールのように縦と横に組んでいく。
完全に固定すると音が響かないので間にクッションを挟んでゆるめに固定。
実は木琴って案外簡単に自作できるのだ。
できあがった木琴は少し軽くて音に重厚さがないのが不満といえば不満だが、叩いてドレミファソラシドの音がでるだけでありがたい。
先に丸い塊が付いた棒を持ち音楽を奏でる。
いくつか簡単な曲のさわりを演奏した後、ラジオ体操を演奏した。
うん、うん、懐かしい……ちがーう!
僕が演奏したら体操できないじゃないかよ。
昔はラジオ体操といえば、ラジカセを持って録音したカセットテープで音楽を流してたよな……
ポク、ポク、ポク、チーン
やっぱオルゴールを作ろう!
箱の中を見たことがあって原理さえ知ってればオルゴールを作るのは不可能じゃないよね。
作った試作品はテーブルサイズ。
串状の鉄の板とそれを弾くための突起の付いた板という組み合わせがメインになる。
出っ張りが串の歯を弾いて音を出す。
その出っ張りを組み合わせて音楽にするのだ。
問題は……ゼンマイ。
ゼンマイはすぐには用意できない。
確か昔は鯨のひげをつかってたとかどうとかあるので、魔物とかの素材で何かあるかもしれない。
鍛冶屋に依頼したり庭師に手伝ってもらったりして、とりあえず電子レンジサイズでゼンマイのないハンドル式の手動オルゴールは完成した。
財布が軽くなったが後悔はしていない。
毎日交代でメイドさんに回してもらうことでラジオ体操の音楽を得ることができたのだ。




