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王都に帰還

 数日屋敷に滞在した後ぼくたちは騎士団の人たちと一緒に王都へと戻った。

 途中で雪がちらつくこともあったが、へちまを受け取り、煮た後馬車に吊るして乾燥させてへちまタワシを作ってみたり、リーグにぃが剣の稽古を続けていたり、ぼくも一緒に稽古つけてもらうようになったりちょっとしたことはあったけど、危険なことや事件などもなく無事王都へと戻ってくることができた。



 貴族用の門―専用というわけではなく任務中の軍属もこちら―から王都に入り早速両親の待つ宿へというわけにもいかず王都の騎士団詰所に行き誘拐犯の引き渡しと当事者である僕らの聴取、その後爺ちゃんと婆ちゃんに挨拶。

 先に両親に会いたいと思わないでもないけど、今回の旅の目的は伯父さんの商売とぼくの学院への入学の勉強のための本や家庭教師に会って話を聞くのが目的であり、爺ちゃんの家のヴァルツォーク家には随分便宜を図ってもらったのだ。

 伯父さんが王都についてすぐ挨拶にと言ったので否はない。

 普通お偉い貴族様に会うにはあらかじめアポイントをとってとか必要だけど、街に入ってすぐ護衛の騎士が連絡をつけ、詰め所で聴取を終えたときにはすぐ会いに来るようにとの返事が返ってきていた。





「爺ちゃ~ん」


 屋敷で出迎えてくれた爺ちゃんに飛び付く。

 前世も合わせるといい歳をしているというのに、自然とそういう行動に出てしまった。

 精神は体の年齢に引っ張られるという話だが、別に嫌ではない。


「お~、よしよし。速馬で手紙を受け取って無事だというのは知っておったが、心配でたまらんかったぞ」

「心配かけてごめんなさい。ハルファス伯父さん達に助けてもらいました。挨拶が遅れたけどお婆ちゃん、ただいま」


 おみやげにへちま水とか渡せればよかったけど、そのままだと日持ちしないんだよな。

 エタノールとかあれば少し保存が利くようになるんだけど。

 高濃度のアルコール(お酒)ででも試してみるか。



 あとの話などは伯父さん達に任せて僕はひとり、いやここまで一緒に旅をしてきた騎士さんがひとり護衛について両親の泊まっている宿まで戻ってきた。

 馬車でという話が出たが丁寧にお断りして歩きでだ。

 ぼくは庶民なのだ。

 庶民の泊まるような宿に馬車―イメージとしてはビジネスホテルにリムジンで―なんてことは恥ずかしすぎるし迷惑だろう。




 *****




「ご苦労であった。我が領都にて誘拐を企むものがおったようじゃが皆無事に帰ってきてなによりじゃ」

「はっ、護衛として私がついておりながら申し訳ございません」

「してどうであった?」

「ハルファス様の統治もよく領民も生き生きしておりました」

「その話もじゃが、ほれ、プックルのことじゃ。旅の間どうであった?」

「はっ、武に関しましては同じ年齢であった頃のラパウル様には劣りますが、危機に際しての咄嗟の判断力、豊かな発想、想像力、さすがガイネル様のお孫様。これからが楽しみな逸材にございます」

「世辞はよせ、わしは頑固者ゆえ、発想、想像といったものには疎いわ。じゃが、わしにもあやつには非凡な才を感じるものがある」



 にやけつつ、どうみても爺馬鹿にしか見えない顔で、皆が帰った後護衛につけた騎士からの報告を受ける爺がいた。








「父さん、母さん、ただいま!無事戻ってきました」

「ぷっくる、やっと帰ってきたかー」

「お帰りなさい」


 宿の食堂兼酒場でくつろいでいた両親をみかけ帰還の挨拶をしたら、ラパウルがにやついている。


「プックルに大事な話がある」


 大事な話と言いつつにやけ顔はそのままだ。



「ぷっくるちゃんはお兄ちゃんになるのよ~」


「!!?」


「も~、先に言われちゃったか。お母さんのお腹の中にはプックルの弟か妹がいるんだよ。産まれてくるのは来年の夏頃かな」



 ぼくが他の街に行っている間に両親は仲良くやっていたようだ。よきかな、よきかな。

 それにしても兄弟か~、前世では姉がひとりいたけど元気にやってるかな。

 死ぬ前にはっちゃけたせいで相当な額のお金を残してきたし、まぁいい暮らしはできてるんじゃないかな。気にしてもどうしようもない。

 ぼくがお兄ちゃんか、弟かな、妹かな。

 妹を可愛がるのもいいな、溺愛しちゃうかも。でも、結婚とか他所の男にやるなんて耐えられそうもない。

 ということは弟かな。弟と一緒に遊ぶのも楽しそうだな。



「うん、ぼく強くなる!そしてお金持ちにもなる!」

「急にどうしたんだ?」

「どうしたって? 弟にしろ妹にしろ守れるくらい強くなるんだ! そして不自由ない生活を送るためにお金を一杯稼ぐんだ!ラパウルも子供が産まれるというのにこんな宿屋暮らしなんて駄目だよ。ちゃんとした家を借りるか買うかしなきゃ」

「……」

「ぷっくるちゃん、メッよ。前から気になってたんだけど、ちょくちょくお父さんのことを名前で呼んでるわよね。お兄ちゃんになるんだからそんなことではダメよ。産まれてくる子供が真似しちゃったらどうするの?」

「は~い。善処します」


 恥ずかしいというのもあるし、前世で死ぬ前の自分と同じ歳くらいだからお父さんと呼ぶのにちょっと抵抗があるんだよな。


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