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父さんの兄さん

「ラパウルの息子ってのはどいつぐふぅぉあ」

「マーカス、なんて口のききかたしてるんですか。部下や目下のものに対してならまだしも、同格の人に対する言葉遣いがなってませんね」


 同い年くらいの少年が平手で吹っ飛ばされて壁に激突してしまっている。

 優男風の青年なのにこえー。

 屋敷に入って周りをキョロキョロしてたときだった。

 奥からダダダって走ってきてこちらに声をかけてきたかと思ったら、ぼくらを歓迎してくれてた青年に吹っ飛ばされる。ヴァルツォーク家こえー。


「失礼。取り次いできた門番の報告を聞いたんでしょう。申し遅れましたが、父に代わってこの街を治めているハルファスといいます。こちらは私の4番目の末の息子のマーカスです。先ほどの失礼な態度お詫びいたします。私はラパウルの兄でプックルくんの叔父にあたり、この子はプックルくんの従兄弟にあたります。よろしくお願い致します」

「はじめまして、ぼくぷっくる。4しゃい」


 この挨拶なにげに好き。


 この優男ってラパウルの兄さんかよ。

 ラパウルは庶民だけど隠れた気品が???みたいだけど若干おっさん入ってるよねって感じだけど、こちらさんは細身で上品なお貴族様の若君って感じでラパウルよりも若く見える。

 つーか、容赦ねぇ。まじこえー。びびって変な挨拶してしまった。

 ぼくの従兄弟さんは首根っこ掴まれ無理矢理立たされとる。



「ハルファス様にはご機嫌麗しく存じます。わたしはラパウル殿の嫁のミュレの兄でドワイトと申します。こちらは私の嫁と息子にございます。それと護衛の冒険者3人で王都より御当主様からの(ふみ)と荷物を預かって参りました。こちらが文になります」


「父からですか、ありがとうございます。確認しますのでしばらく客室でお待ちください。誰か案内してさしあげろ」


 普通客室で待たせてから部屋へ呼ばれるなり客室で挨拶とか話するのかと思ったけど、入り口で館の主が出迎えて挨拶するとはフットワーク軽いな。



「中々腕のたちそうな次期領主様だな。叩いて吹っ飛ばしたように見えるが、ダメージはほとんど与えてないんじゃないかな。平手はわざと音だけ派手になるように当てて押すように壁まで吹っ飛ばしたが小僧も受け身をちゃんととってたしな」

「おれら護衛もここに泊めてもらえるのかな。お貴族様の屋敷なんかおれらにゃ縁がない場所でちょっと落ち着かん」

「そういえばぼくこんな話を聞いたことがあるんだけど」

「どんなだ?」

「貴族は客を客室で待たせ、客達が会話するのを覗き穴から見たり聞いたりしてるんだってさ。そこで悪口言ったり内緒話したりするとその話が筒抜けになり酷い目にあうんだってさ」

「「「ひー」」」

「じょ、冗談ですよね」

「大店の商人なんかでそういうことをする人もいるって聞いたことはありますね」



 会話の最中、バンという音と共にドアが乱暴に開いた。


「お前、俺の従兄弟なんだって? 俺は認めねー」


 先ほど平手で叩かれてた子だ。

 なんなんだこいつはって思ってたら、ハルファスさんが走り寄って拳骨を加えると体ごと地面に叩きつけられバウンドしてる。

 いや、これまじダメージあるだろ、それも結構なの。


「愚息が申し訳ない。私が弟のラパウルのことを天才だと褒め称えたのに反感をもったようで重ね重ね申し訳ない」

「うぐぐ、だって侯爵家の次期当主の父上より凄いなんて納得いかない!」


「ラパウルは私の可愛い弟だ、貶める言動は許さん! 私が10歳で剣の稽古をつけてもらったってた時、わずか4歳のラパウルが興味をもったことがあって私と打ち合ったのだが、本気で斬りかかったのにも関わらず私の体力が尽きるまでかすることさえできなかった、恐ろしいものを感じたよ。それに学院へのトップの成績で入学を果たしてもいる。これを天才と言わずどう言えと。但し卒業の頃は平均的な結果に収まっていたがな。しかし手を抜いているとしか思えなかったんだ彼は」

「へ~、ラパウル、いや、父さんは凄かったんだね。でもぼくの知ってる父さんは怠け者ってイメージかな」


「あいつは三男の自分の評価が上がりすぎるのを嫌ったんだ、優しい子だよ。わたしもあの子にそんな思いをさせまいと武に学に死に物狂いで取り組み周囲からは優秀と認められるようになったがね。それはそうと君たち一家を今まで放置していたようで申し訳なかったね。可愛い弟とはいえ我が家の当主の意向に反することはできなかったんだ。母と私で時々人を遣って影ながら君たちの状況だけは把握するようにはしていたんだ。もっと早く父上の考えを改めさせることができればよかったのだが。にしてもプックル君が学園に入るために王都に来てくれたのは都合がよかった。手紙にも書いてあったが父上は君を気に入ったようだし、君の母君のミュレさんも会って話をして認めたそうだ。よかったよかった」

「そいつも学園に行くのか?」


 おっ、復帰したのか。


 頭をさすりながらやんちゃ坊主が会話に加わる。



「この子はまだ4歳だから、順当にいけば3年後。学園では君のふたつ下になるかな。今回は入学試験の勉強について聞きに来たのもあるみたいだね」


 いや~、今まで勉強というものをほとんどやってなかったんだよな。

 両親とも適当にやったら入学できたとかいってるし、そんなんじゃなくちゃんと聞きたい。

 そして問題集なり、参考書か教科書みたいな勉強するための本が欲しい。


「農家などで収穫が終わってちょうど先日から次の春の入学試験に向けて領内の有望なものを集めて、この館の離れに住まわせて勉強させているから、うちの家庭教師にいって勉強に必要な本を貰って来るといい。あ、本は貴重なものだから入学後には返却するように。私はドワイトさんと話がありますのでマーカス、案内してさしあげなさい」

「は~い」

「返事は正しく!気が抜けた返事をしては侮られますよ」

「はい!父上!!」

「リーグにぃも行こっ! マーカスくんよろしくね」




 ぼくらが離れに行くと大人たちは客室に案内され、残った伯父さんとハルファス様との二人の話がすすんでいく。


「さて、今回は父上に頼まれて王都から本などを運んでいただいたということですが、詳細は手紙にも書かれていませんでしたが何をお持ちいただいたのでしょうか」

「まずこちらをご覧ください」


 あらかじめ馬車より降ろしていたひとつの木箱から四角い板とジャラジャラ音がする袋を取り出す。


「これは黒白ゲームという遊戯板と木片です。ルールは簡単ですので少しやってみましょう」





「さすがでございます。最初は私が勝ちましたが次から2戦は見事にやられてしまいました。しかし我は最弱、後ろには強者がひしめいておりまする」

「なんだ、そうなのか」

「いや、プックルくんが負けたときはこういうようにと指示を残していったので……お恥ずかしい」

「それはそうと、これはすこぶる楽しいものだな。ルールは簡単で誰でも楽しめそうだ」

「ご当主様よりゲーム後にと文を預かっております。こちらをどうぞ」



「ふむふむ、我が家の庭園にも置いてある黒岩と白岩からこの木片の代わりのものが作れないかの打診か。確かにあの石は他の土地ではあまり見かけない珍しいものだが、今のところ使い道のないものだし使えればいうことあるまい」

「それとこれをお納めください。奥方様や女性に喜ばれると思われます。美人水といい、顔や手などにつけることで肌に潤いを与え、より美しくなることうけあいです。残念ですが夏から秋にかけてしか入手できず、作られてから10日程度しか日保ちがしません。こちらは昨日作ったばかりですがお早めにお使いくださいますように」



「ふむ、これも父からか?それにしては似合わぬな」

「いえ、こちらは来る途中の村で手に入れた植物より作ったもので、プックル君が作り方を知っていたんです」

「ほう、あの子がか。さすがラパウルの子だ、まだ幼いのに将来有望だな」


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