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魔法の練習をしてみよう

 おじさんが受け取った指輪をぼくに手渡す。


「風車も竹トンボもプックル君に教えてもらったものだから、これはプックル君にあげるね。それと今後これらを商売の種に使ってもいいかな」

「うん、いいよ! おじさんも商売うまいね~」

「ハハハ、冬は行商にでかけないから、その町にいる時にある程度裕福で子供がいる家に売り込んでみるよ」

「ぐへへ、越後屋、お主も悪よのう」

「なに?その変な笑いと越後屋って」

「これはね、悪代官と悪徳商人が悪だくみをするときの決まり文句なんだよ。返し文句として『いえいえ、お代官様ほどでは』と返してお互い黒い笑いをするの」


 指輪を持て遊びながらリーグにぃの質問に時代劇の定番の一幕を教えてあげた。


「それより、これってどう使うのかな」

「ちょっと貸してもらっていいかな。たしか魔力を込めるだけでよかったはず」


 リーグにぃはぼくから受け取った指輪はめ、もう片方の手で指輪を包み込むと水がじわっと染み出し、すぐに水道から水がチョロチョロ出るくらいの水量が流れ出してきた。


「おぉ、おぉぉー。すごい、すごいよ。ぼくもやるー」


 同じように手を重ねて魔力を流してみるがウンともスンともいわない。


「あれー?でないよ」

「おかしいねー」


 もう一度リーグにぃが試し、伯父さん、伯母さんも試したがぼくだけ水を出すことができなかった。


 あるぇ?



 その後指輪は使わずに呪文を唱えてリトルウォーターが発動するのは確認したが指輪から水は出せないままだった。

 魔力の扱いが下手なのかな。でも魔法は使えるしなぁ。


 などと苦労しながらもようやく使い方のコツをつかんで出せるようにはなった。





 この世界隣の町まで数日の距離とか普通にある。

 どうして点在しているのだろう。

 その理由として資源とモンスターが考えられる。

 鉄などの鉱山の近くに資源を求めて集落を作るのは当然である。

 人が多く集まる規模の大きな町などはどこにでも作られるわけではない。

 魔の森からある程度近くに作られることが多い。


 この世界で料理をするにも暖をとるにも薪を使うのが一般的だ。

 ひと家族が暖かく暖をとりながら暮らすには薪はどれくらい必要なのか知ってる人はいるだろうか。

 年間何トンという単位で必要となるのだ。

 映画で暖炉を見たことがある人も多いと思うが、めっちゃ薪がいるのだ。

 雨で濡れないように小屋を作ったり、屋根を作ったりして山のように薪を保管しておくのだ。


 江戸時代、人が多く集まっていた江戸なんかは周辺がはげ山ばかりだったという話もある。

 幸いというかこの世界では魔の森という魔物がいっぱいの森では1年もすれば木は大木にまで成長する。

 そのため大きな町などは魔の森から離れても数日の場所に作られる。

 それに反して農村などは広い土地が必要で、田畑すべてを頑丈な塀で囲むのはコスト面からも難しくモンスターの少なく肥沃な土地に作られることが多い。



 何が言いたいかというと、移動距離が長く時間のかかる馬車飽きた。

 電車でスマホをポチポチやってた生活が懐かしい。


「ひーまー。退屈ー」

「それじゃぁ、攻撃魔法でも覚えてみる?」


 伯母さんの提案にいちもにもなく頷いた。



「生活魔法ではさすらう神とか恵みの神にお願いする感じだったけど、攻撃魔法では直接神様の名前を呼んでお願いするのよ。風の場合はゼフィス神ね」

「攻撃魔法なのにどうして風魔法からなの?攻撃魔法と言えば火の魔法じゃないの?」

「火の魔法は森や草原にしても枯れ葉や枯れ草などに火がついて火事になることがあるからだよね、母さん」

「そうね、それに焦げた皮や毛皮なんかは斬った傷より使える場所が少なくなり価値が下がるから人気ないわね。もっとも人同士の戦争なんかだと火の魔法の方が人気みたいよ」


「ゼフィロス神よ、自由なる風よ、我が前を遮るものを絶ち切り裂く刃となれ、ウィンドリッパー!」


 前に突き出した両手の少し先からブンという風音と共に視認しにくい何かが飛び出し10メートル程先の木の枝を切り落とした。


 おぉ、すげぇ、感動だ。そういや正直生活魔法じゃなく攻撃魔法は初めてまともに見たかも。


「木の真ん中を狙うつもりだったのに少し逸れたわね。生活魔法では唱えるだけでよかったけど、戦闘に使う魔法は目標を視認して指定、狙ってどれだけの魔力を使うか決めて使う魔力を練り上げ属性を付与して呪文を唱えるのよ。使う魔力の量はそうねぇ、水を1リットル出すのと同じくらいで練習してみましょうか」

「魔力を練り上げて属性を付与ってのはどうやるの?」

「生活魔法で水をだしたり、火をだしたりしたじゃない。あれを思い出して頂戴。生活魔法は魔法の基本なのよ」


「むむむ、リーグにぃ、どう?」

「今までなにも考えずに水とか出してたからよくわからないや」




 リーグにぃは教わってから3日ほどで、僕はそれに遅れて半日ほどたったころようやく使えるようになった。

 ちなみに二人とも風魔法ではなく、水魔法からに変更した。

 生活魔法で風なんか使ってなかったからね。

 それよりもよく使ってイメージしやすかった水の魔法に方針転換したということなのさ。







 白パンと黒パン




「爺ちゃんのところで食べた白パン美味しかったのに、なんなのさこの固いパンは」


 日頃食べてるのよりもなお固いパンを手にごちる。


「昨日寄った村で売ってもらったこのパンは特に堅いね」


「貴族様の食べてる白パンってのは細かく挽いてきちんと(ふるい)にかけてる小麦を使ってるのに比べて、黒パンってのは主にライ麦を使ってるってのもあるが、わざとカチカチに堅く焼いてるんだよ」


「わざとってどうして?堅くない方が食べやすくていいんじゃない?」


「小麦と違ってライ麦でパンを焼くとどうしてもボソボソしたものになるんだけど、この前話をした薪とも関係してくるんだよ。堅く水分が少なく日持ちをするパンを作って毎日ではなく何日かおきにパンを焼くようしてるんだよ。薪代もバカにできないからね」


「へ~、堅くしないで頻繁に焼くようなところはまだましなんだね」


「そうだね、その分燃料代が上乗せされるかもしれないけどね。それと白パンと黒パン。小麦よりライ麦の方が格段に安いってのも白パンがお金持ちの食べ物だって理由だね。小麦より痩せた土地や寒冷な土地であってもライ麦は育つんだ。だから小麦より安いのさ。そのライ麦よりよくない環境でも育つのがジャガイモとかかな。裕福でない農家なんかはジャガイモでお腹を膨らませたりしてるんだよ」


「ふ~ん、ジャガイモ美味しいのに」


 叔父さんは商人なだけあってすごい物知りだ。




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