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ヴァルツォーク領へ

前話投稿の際に3行残したまま投稿してまして、少し変ですが冒頭に前話の投稿もれのラスト3行を書いておきます。


 王都を散策して宿に戻るとラパウルも帰ってきていた。

 装備を持っていってなかったから今日は依頼を受けなかったそうだ。

 いや、取りに帰ってから働けよと思わないでもない。




 ◇◇◇◇◇◇


義兄(にい)さん、お願いします」

「プックルちゃん、いかないで~」

「可愛い子には旅をさせよって言葉もあるんだよ。ぼくは旅をしていろんな苦労や経験を積むんだ!」


 急にどうしたかというと、リーグにぃの家族とヴァルツォーク家の領地まで行って帰ってくることになったのだ。

 というのも、爺ちゃんが貴族枠での学院への入学を勧めたのに対してボクは貴族じゃないから一般枠で入学したいって言ったら、領地の方で見所のある子供を集めて勉強を教えているから教師を王都に呼んでやるって話しになった。


 さすがにそこまでしてもらうのもなんだから教材を送ってもらおうかとも考えたけど、その教えてる人にもいろいろ聞きたいもあったのでヴァルツォーク家の領地まで行くことにしたのだ。

 爺ちゃんが馬車と護衛を用意してくれるといったけど断ってリーグ一家と商売を兼ねての旅となった。


 なんか伯父さんも通行料の免除や領地内での税の優遇処置をもらったとかでほくほく顔だ。



 旅程は片道10日向こうで10日、戻るのに10日の30日の予定を立てている。

 で、今は両親の見送りの場面だったというわけ。





 僕ら8人の旅は何事もなく進んでいく。

 えっ!? 7人じゃないのかって?

 伯父さん、伯母さん、リーグにぃ、いつもの護衛の3人、それに爺ちゃんから付けられた護衛の騎士一人の合計8人での旅。

 10人規模の護衛をつけられるところだったが、さすがにそれは勘弁してもらった。

 護衛は姫騎士でもなく、若い見習い騎士でもなく30代の熟練の騎士だそうだ。

 人選はよく考えられてるらしく、元々は平民の親しみやすい人だ。

 今も護衛の人たちと楽しそうに駄弁っている。




 ヒュン


「よっし、見習いども回収は任せた」

「「了解!周囲確認、危険なし!」」



 護衛のスカウトのおじさんが射った中型犬ほどもあるウサギの羽のような形状の耳をリーグにぃと一本ずつ持って引きずりながら駆ける。

 今日の僕らは冒険者見習いのマネゴトをしている。



「まるまる太って旨そうなフェザーラビットだな。この前教えたことは覚えてるな?」

「「はい!!!」」


「よしっ、プックル言ってみろ」

「まず血抜きをして、皮を剥ぎます」


「うむ、その通りだ!だが作業をどこでするかも大事だ。今はただ道の脇で馬車を停めてひと休みしているだけだが、他の人たちもよく休憩するような場所で血抜きをすると、その場所に血に誘われて肉食のモンスターや動物が来るかもしれん。野営地でも同じだ。夜休んでるときに近付いてこられるとおちおち休んでもいられない。そういった理由から少し離れた場所や川など血を流してしまえる場所で作業をしたほうがいい。また作業に集中しすぎて周囲の警戒が疎かになる場合もあるので人員に余裕があれば見張りもいたほうがいいということも覚えておくといい」


「「ラジャー!」」



 僕らは新品の解体用ナイフを手に大人の力を借りずに二人だけでやりきった。



「よ~し、見せてみろ。ふむふむ。おやっさん、ギルドの受付役やってもらえますか?」

「わかりました、それでは毛皮持ってきなさい」

「依頼品の納品手続きお願いします」


 リーグにぃが毛皮を伯父さんのところにもっていく。


「フェザーラビット1羽、銀貨一枚の依頼だね。おい新米、これは何だ、こんなんじゃぁ依頼の達成とは認められん。出直してきな!」

「確かにこれじゃぁ、価値低いよね。僕でもこんな商品扱いたくないよ」

「ぶー」


「プックルくん、ふくれない。ギルドで毛皮を取ってくるよう依頼をしてるってことはちゃんとした毛皮が欲しいってことなんだ。こんな毛皮を依頼主に渡したら信用を損なうことになってしまうよ。80点の出来で銀貨1枚とすると、この毛皮はよくて銅貨3枚ってことかな」


「おやっさんの言う通りだ。毛皮の品質が落ちないよう傷の少ない倒し方も大事だし、解体技術も大事だ。今回は解体についてだけ考えるとしてどうすればいいと思う?」

「技術を磨くしかないかな。もしくはうまい人にやってもらうとか」

「あっ、それだ! ギルドにそのまま持ち込んで解体してもらえばいいんだ。確かギルドでやってもらえましたよね」

「リーグ、よく気がついた。手数料はとられるがギルドで解体をやってもらうのも手だ。パーティに解体が得意なやつがいれば、そいつに任せるのも手だがな、あはは」


 護衛のおじさんは笑ってるが、正直解体舐めてた。

 こんな小さな兎でも子供とはいえふたりがかりで1時間以上かかってしまった。

 ちょっと休憩のはずが予定を大幅にオーバーしてしまったのだ。


「慣れてないから時間かかったにしても、慣れた人だったらどのくらいでできるの?」


「このくらいのやつだったら俺なら血抜きの時間を抜いて15分位かな、ザクっと割いて皮をガッって引っ張っりながら切り剥いで、食用であれば内臓とったり肉の処理、それでたぶん15分。皮に脂肪がたくさんついてると加工に手間がかかることになるけど、慣れないうちは皮が破れたり損なうよりは皮下脂肪が残ったままでもしょうがないと思う。それと獲物がでかくなればなるだけ作業が大変になって時間がかかるからな。でも小物より皮は頑丈になり、剥いでるときに破けるといったことは少なくはなる」


「冒険者の勉強もいいのですが、そろそろ出発しましょうよ。話するだけなら移動中でもできますし」



 伯父さんの言葉に馬や馬車に乗り込んでいく。

 血や汚れはぼくの生活魔法の水で洗い流し、食べない部位などゴミは道から離れたところに放り投げ捨ててきた。

 穴掘って埋めないのかって?

 スコップ持ってないしどうやって穴掘るんだよ。


 冒険者はスコップ持って旅するのか?

 魔法で穴掘れって?


 できなくはないが、他の人の迷惑にならないよう道や休憩場所から離れた場所に捨てるというのが一般的らしい。

 まぁ、夜に離れた場所まで捨てにいくのも面倒ということで魔法で穴掘って埋めたりとかはすることあるみたいだけど。

 御者席横に乗ったあとも、護衛のおじさんは馬で並走しながら語りかけてくる。


「皮は剥いだだけで使えるのではなく、ついた脂肪を取り除きなめし液につけてなめす作業を経ないと腐敗していく。つまり処理しないで長期間持ち歩くのは腐った肉を持ち歩くのと一緒で難しい。旅の途中などで毛皮を手に入れた場合はそれも考えなくちゃいけない。途中の村で処理してもらうって?なめし処理はものによって違うが10日程度から数ヵ月かかる場合もある。旅の途中の村でなめしてもらうのは現実的ではない。だったら売るって? 安いのならなんとかなるかもしれないけど村では高いと買い取るお金を持ってるところなんてあまりないんじゃないかな。塩漬けで長期保存も可能と聞いたことはあるが、そんなに塩を使うのもどうかと思う。狩りをする場所、持ち込む場所も考える必要があるんだよ。肉の腐った臭いをさせながら旅はしたくないだろ」


「ぐへ~、いろいろと難しいんだね。さっきのフェザーラビットの毛皮持ってきたけどよかったの?」

「次の村で預けてなめしてもらい、帰りに受けとることにしようと思ってる。それでいいですよねおやっさん」

「あぁ、あそこは狩人の奥さんが獲物のなめしとか確かやってたはずだし、頼んでみるとしよう。ふたりの解体した毛皮がなめされてどうなるのかを知るのも勉強だ」


 ちなみに護衛のおじさんが言うおやっさんとはリーグにぃのお父さんのことだ。




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