盗賊退治の報酬
「ご協力感謝します。恐れ入りますがあちらで少々お話を伺ってもよろしいでしょうか」
住んでた町のラパウル達門衛とは違ってしゃきっとした態度で対応してくれる。
さすがうちの町より数倍は大きな町だけのことはある。
僕たち一行は町の出入り口の門近くの兵士詰め所まで案内され、襲われたときの状況や盗賊のねぐらから回収してきたお宝?いや、盗品か。を提出したりした。
盗賊から奪い返した品物は半分は持ち主やその家族、もう半分は取り返した冒険者などに権利があるとされる。
兵士に案内されて商人らしき人が部屋に入ってきた。
「はじめまして、この町で雑貨商を営んでおります」
やっぱり商人だった。
床に広げられた品物をひとつひとつ確認しながら商人はメモをとっている。
そして伯父さんにメモをみせつつ物を指差し、全部で金貨53枚と銀貨2枚の査定になりますがいかがでしょうか。
と聞いてるのに対し伯父さんはいやいや、これはもっと高いでしょうなんて返したりするのが聞こえたが最終的には金貨62枚で落ち着いたようだ。
ちなみにこの世界では僕の感覚からして、銅貨=100円 銀貨=1000円 小金貨=1万円 金貨=10万円くらいと思っている。
ちなみに各10枚で上の貨幣となる。つまり10銅貨が1銀貨というふうにだ。
「義兄さん、馬なんかは譲ってもらってもいいんじゃないかな」
「そうですね、荷台の方はボロボロで必要ありませんがラパウルさんの言う通り馬は護衛の方々に使っていただくのも悪くないですね」
盗品は告知して半年間は保管しておくそうだ。その間に持ち主が現れ、返して欲しいと思うと査定した金額の半分を払い返してもらうんだそうだ。
その払った金額、つまり半額の代金は盗賊退治したこちらでもらえるのだが、旅の途中だったり半年待つのが面倒だったりするのでその町の商人が間に入り、権利を一括で買い上げてくれたりするらしい。
商人は面倒だけなんじゃないかと思ったが、一応売ればそれなりに利益が出る値付けにはなってるらしい。
あ、半額って言葉が何度か出てきたが、日本みたいに落とし主が現れなければ拾った人が全額もらえるってルールはない。
持ち主が現れなければ残り半額の権利はその土地の領主の物になる。
で、まぁ権利半分あるので残り半額を払ってこの馬のように買い取ることも可能だ。
その場合馬の持ち主には半分の代金が支払われる。
金なんかより馬返せと思っても、元々盗賊に奪われたものなので元の持ち主より奪い返した側に優先権があるので諦めるしかないのだ。
ちなみに盗賊は5人で金貨8枚で売れた。
褒賞金が貰えたりとかはなかった。
奴隷商がやってきて犯罪内容と予想される奴隷期間を聞いて8枚の値をつけて帰っていった。
ここを治めている領主などからの褒賞金はなかったが、護衛のおじさんが冒険者ギルドにひとっ走りし捕らえた盗賊の退治依頼が出てたのを確認し、その終了報告をおこないプラスで金貨8枚を貰ってきた。
今回の盗賊退治では金貨78枚、僕換算で780万円儲かったことになる。
美味しかったようにも思えるが、命がかかった戦闘もあったのでほんとに美味しかったかどうか今の僕にはどうも判断できなかった。
「今日、明日はこの町に泊まる予定です。プックルくん、差配をお願いしますね」
生まれた町を出て1週間。4歳の僕には早い気もしないが、前世年齢をプラスするとおこちゃまというわけでもないので、将来なるかは別として商人見習いの小僧さんの真似事をさせてもらっている。
「盗賊の件も終わったことだし、まずは宿かな。昼過ぎとはいえ、馬車を預けないとね。この町の宿の情報があったらお願い」
「この町には宿は4件あります。俗に言う安宿、初心者を抜けた冒険者がよく泊まっている宿、商人が多く泊まっている宿、ちょっとお高い宿の4件です。ちなみに安宿以外は厩があります」
僕の質問におじさんが回答してくれる。
「臨時収入が入ったので高級宿だね、伯父さん」
「そうねぇ、たまにはいいかもねぇ。義姉さん」
「あなた、プックルちゃんに差配は任せたのでしょ、今日だけでもどうかしら」
にやけながら返答すると母と伯母さんも乗っかって来て、ひくついた顔をしている伯父さんの肩を叩きながらラパウルが諦めろという風に首を振っている。
「はぁ、たまにはいいでしょう。ですがその前に臨時収入を分配だけ伝えておきますね。もちろん渡すのはこんな往来ではなく宿についてからですけどね。今回の旅の前に言っていた通り盗賊などの臨時収入は護衛の3人、私たち夫婦2人、ラパウルさん夫婦2人の7人で分けます。一人あたり金貨11枚、一番活躍したミュレが12枚ということでいかがでしょうか」
護衛のおじさんたちも異論は無いようでその分け方であっさり決まった。
今回は出番がなかったが伯母さんもそこそこ戦闘はこなせるそうだ。
それに魔物にしろ盗賊にしろ、運ぶのには馬車を使うため伯父さん達はこの分配にしているそうだ。
「プックルくん、今回は護衛のみんなとも長い付き合いだから揉めることなく終わったけど、分配はもめる原因にもなるから契約の時にきちんと決めておくように」
「はーい」
「プックルくん、返事ははいです。商人は言葉遣いも大切ですよ」
「はい」
「まぁ、正直なところ子供ですので元気な方がいいので旅の間は普通にしてもらっていいですよ」
まだ4歳ということもあるし、親戚の子供なので結構甘い。
その後高級宿では伯父さんが手続きを全部おこなった。
商人用の宿だったら僕がやる予定だったけど、さすがにお高い宿ではやらせてくれなかった。
宿は二人用の部屋を4つとった。僕はリーグにぃと一緒の部屋だ。
護衛のおじさん達は二人と一人になるわけだがコインを同時に弾いて表と裏で二人と一人の組になるよう調整していた。
ちなみに1泊1部屋金貨1枚、10万だ。聞いたところによるとこの町で商人がよく泊まるところは二人部屋で小金貨1枚、普通の冒険者が泊まるところは一人部屋銀貨3枚、安宿は大部屋のみで雑魚寝で銅貨5枚だそうだ。
あ、そうそう。この宿で馬車と馬3頭を預けるのに馬1頭につき、それと馬車、それぞれ銀貨3枚が必要だった。
お高いのには訳があり、厩舎にも馬車を置いておく場所にも常時警備の人間がいるのだそうだ。
一般の宿でもそうだが、馬車や馬も出すときは宿の人間が案内をして預かった馬や馬車で間違いないか確認してから引き渡すようになっている。
駐車場に車を停めていて、勝手に乗って出るのとは訳が違う。
馬には鍵がついてないので勝手にさせると他人の良い馬を持っていかれてしまうことになる。
そんなことだと宿の信用にも関わるので、馬や馬車の取り扱いも慎重になってくるわけだ。