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魔法使いプックル爆誕

 神様と話したのは起きてるときのつもりだったが、睡眠中の夢の中でのことだったらしい。

 気付いたら朝になっており目を覚ましたところだった。


「みてみて!……リトルウォーター」


 昨夜のオネショ騒動もその後の神様との会話も夢ではなく、無事水を出すことができた。続いてリトルファイアもリトルウィンドも問題なく発動した。


「魔法使いプックル爆誕!」

 ドヤ顔で腰に両手を当て叫ぶ。


 やっぱ異世界に来たら魔法だよなー。使えてほんとよかった。

 両親が使えるから遺伝的にこの肉体も使えるのではと期待していなかったといえば嘘になる。

 もうテンションあがりまくり。



「モンスターがでても僕のゴッドインフィニティファイアでいちころだよ。それにしてもモンスターでないね」


 普通なら口に出さないようなことを口に出すくらいテンションおかしいことになってた。


「そんなことないぞ坊主、弱い魔物とはいえ昨夜もジャンクラットが近寄ってきたから退治しておいたぞ」

「えっ、そうなの!?この前村に行ったときも今回の旅もモンスターに一度も遭遇してないと思ってたけど勘違い?」

「夜営地にまでよってきたのはさっきも言ったジャンクラットとヒュージバットくらいかな。ジャンクラットはそう、俺の靴くらいの大きさでなんでも食べる。ほっとくと俺たちの食料を食われちまう。ヒュージバットは羽を拡げるとジャンクラットの倍くらいの大きさかな。こいつは小動物を襲ったりするが追い払えば近寄ってこないので大概追い払って終わりだ」

「ねぇねぇ、倒したネズミはどうしたの?もしかして朝御飯にするとか?」

「いやいや、ジャンクラットは食うと腹壊すから埋めて消臭の魔法かけたぞ。ほれあそこだ」


 護衛のおじさんが少しこんもりとして周囲と少し色が違う地面を指差した。


「消臭の魔法って?」

「生活魔法だな。俺は使えんから仲間がかけた。血や死体の臭いで獣や魔獣が寄ってきても困るから死骸の処分にかけることも多い。確か清らかなる神よ、我がマナをもちて清浄なる息吹を与えたまえ、デオドライズだったかな」

「清らかなる神よ、我がマナをもちて清浄なる息吹を与えたまえ、デオドライズ」


 自分にかけてみたがよくわからん、次いでおっちゃんにかけてみると嫌な顔をされた。


「プックルくんだめだよ」

「まあ教えてないからしょうがないが、リーグのいうとおりだぞ。勝手に他人に消臭の魔法をかけるってのはお前臭いぞっていうのと同じ意味だから気をつけろよ」

「ごめんなさい。自分にかけてもよくわからなかったから……」

「いや、まぁ、今度から注意すればいい」


 確かにそうだわな、失敗、失敗。


「話しは戻るけど、ネズミは倒したあと埋めただけなの?尻尾切ったり皮を剥いだりとかは?」

「ジャンクラットの皮なんか剥いでもほとんど需要がないから金にならねーんだわ。尻尾はって尻尾に価値なんてあんのか?」


「いや、討伐部位とかはどこ?」

「討伐部位ってなんだ?」


「モンスターを退治したら退治した確認のために体の一部を冒険者ギルドに持っていくとかじゃないの?」

「どこでそんな妙な話を聞いたんだ?ギルドで討伐依頼とかももちろんある。例えばある村の畑でジャンクラットがたくさんいて困っているとする。そこで退治依頼をだす。その畑とは全然違うとこでジャンクラットを倒したから依頼完了にしてくれといってもいいわけないだろ。今言った畑とかだと退治したのを依頼主に確認してもらってその確認証をギルドに渡して報酬をもらい終了となる。依頼主の確認が困難なような場所だとギルドから監視員が同行して確認することになるという具合になってる」


「えー、そうすると監視員がすごいたくさん必要にならない?」

「そうでもないぞ、遠くの特定の場所にいるモンスターを退治してほしいなんて依頼はそもそもそれほど多くはない。例えば狼の毛皮がほしいから出した依頼といえばどこの狼を退治して毛皮をもってきてもいいしわけだしな」


 確かに。被害があって困ってるのに全然違う場所で倒したモンスターでこれが倒した証拠だとか言われても困るわな。

 僕が前世の知識で常識だと思ってることもこの世界で知ったかぶりすると恥かくから注意しなきゃ。


「そうだ!やる気があるならジャンクラットで解体を教えてやるぞ。まだ出発まで時間はあるしな」

「やる、やる、やるー!リーグにぃもやろう!」

「僕はいいよ、一応以前教わって簡単な解体はできるようになってるから。それに1体だけじゃなく続けて何体か練習した方が覚えやすいよ」

「あー、ラパウルさん。息子さんに解体させてもいいですかね」


 一応護衛のおじさんが父さんに確認をとってくれている。


「ねぇねぇ、いいでしょー」

「すみませんねぇ、面倒でなければお願いします」


 ラパウルの了解を得たので早速始めることに。

 まずは地面を掘り返しネズミを取り出す。4匹いた。倒して数時間だが腐敗はまだ始まっていない。

 食べることができる獲物の場合も併せて教えてくれた。

 まずは頸動脈、つまり喉のとことかの血管など動脈を斬り血を流させる。いわゆる血抜き。

 これはできれば死んですぐとかまだ息があるうちにやれるといい。心臓が止まると血が流れにくくなるからな。

 そして腐敗の防止というか遅れさせるために内臓をとる。これはその場でやってもいいし解体する場所までそれほど時間がかからなければ解体時でもいいし、内臓を取ってから運んでもいい。

 次に鳥なら羽をとる毛抜き、獣なら皮剥ぎをおこない肉を切り分ける。

 今回はネズミで小柄な獲物だが、大きな獲物の解体は容易なものではない。


 冒険者は森の中で狩りをおこない、中型以上の獲物を手に入れた場合は森の外で待機している仲間に獲物を渡し、解体してもらっている間に次の獲物を狙うといった方法をとったりしているらしい。

 狩りをする狩人と狩った獲物を解体、そして他の動物や人から獲物を守り荷運びする人との役割分担しているのだそうだ。

 これらはひとつのパーティとしてやってる場合もあるが多くは別々にグループを作りその時どきで契約してやっているらしい。

 荷物(獲物)を運ぶのは大変なんだ。そして荷物番は重要だ。


 馬で、もしくは馬車で狩り場まで行った。

 人間が狩りに出てる間馬はどうする?

 木に繋いでおく?

 モンスターが来たら?

 盗賊が来たら? 

 いや一般人でも魔が差すことってあるよ。

 価値として似たようなものの例として、鍵が刺さったままの車があり、周りには誰もいない。

 もう、持っていけっていってるようなもんでしょ。いや持っていかないけど。


 では目的地まで数時間かけて歩いていった。

 背負ってきた荷物、持ってきた荷物を全部持ったまま森に入り狩りをする?

 最初から最低限の荷物で来たのならいいけど、いろいろ荷持つ持ったままの狩りは大変だよ。

 隠しておけって?

 ありかもしれないけど、他の人に見つかったら持っていかれるよね。

 よく生水は危険だ煮沸して飲もうとかネット小説で見るけど、アイテムボックス持ちじゃなけりゃ鍋持ち歩いてるんだよね。

 いろんなもの持ち歩いてて大変だね。

 そこで必要なのが荷物番だ。

 荷物番も弱かったり少数だったりすると襲われることがある。

 というか一時期盗賊に鴨にされまくってたこともあるらしい。

 その対策として複数のチームが近くに集まって荷物番をしたりするようになったそうだ。


 などなど雑談をおこないながらも3体解体し、残りは面倒になったので処分した。

 ジャンクラットからは2枚で銅貨1枚ほどの皮、そして小指の爪よりも小さな魔石を取ることができた。

 魔石もひとつ銅貨一枚程度の価値にしかならない。

 今回得たものはくず魔石3個だ。

 皮はって?

 はじめて解体をやったんだよ。売り物になるわけないに決まってる。破れまくりだよ。

 ちなみに結構力が必要でリーグにぃにも手伝ってもらった。


 僕たちが解体の練習してる間に出発の準備は整っていたので、解体後ナイフや手などを洗ってからの出発だ。



 おっ、うぉぉぉーー!


 準備を終え馬車に乗ろうとしたら幌の横側に張り付いてる黒光りするあいつ、いやゴキじゃないよ。

 ペットショップでみかけたやつよりはるかにでかく、黒くつやつやしており胴体部分だけで僕の拳こぶし二つ分くらいはある。

 そして僕の拳ひとつ分くらいの角。その頭角は二股には別れておらず、まっすぐとがっている。

 その上には短い二本の胸角。胸角って言っても人間とは形状が違うので、メインの長い角の上、左右に二本突起がある。

 それはさておき、みんな大好きカブトムシだー。めっちゃでかいけど。海外のカブトよりもまだまだでかい。

 片手で掴むことができず、両手で持って引っ張ったが幌をガッシリと掴んで放そうとしないため諦めて放置しようとしたら護衛のおじさんがナイフ片手に近づいてきた。


「ちょ、ちょっ。なにする気」

「危険な生き物ってわけじゃないけど、馬車に引っ付いていられるのもなんだから首のとこをスパッとな」

「スパッてなんだよ」


 なんて言ってる間にカブトムシは飛んでいった。


 現代日本と違ってペットとしてカブトムシに価値はないんだろうな。




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