「死んだら光になっててびっくりした件」 (別タイトル:光になった坊や)
幼くして死んでしまった子供。
生まれ変わったら、光になっていた。
パパとママ、弟に会いに行き、さらに傷ついた人に元気を与えていく、そんなお話
気が付いたらぼくは光になっていた
そう、ぼくは死んだんだ
あのひ、病院のベッドの上で
あの日、なぜか急にスーッと音が消えて、何もかもがまっ暗になって、それからきづくとぼくは光の中にいたんだ
あたたかくて、明るい光につつまれていた
パパ、ママの顔が見えた
眼はとじてるはずなのに・・・
2人とも泣いてた
パパの目からほっぺに涙が流れおちてる
ママは泣き叫んでた
とても 取り乱していた
弟の姿も見えた
まだちっちゃい弟
ああ、ぼく死んじゃうんだなって思った
幼稚園、もっと行きたかったな
またみんなでどこか行きたかったな
パパのお馬さん、楽しかったな
ママのお料理はいつもおいしかった
ごめんね、パパ、ママ
たっちゃんも、ごめんね。お兄ちゃんはこれで死んじゃうみたい
パパ、ママ、たっちゃん・・・・
そうか、ぼく死んじゃったんだ
なんかふわふわ浮いている
体が軽いんだ
そしてとても光っている
ぼくの体、光になってるみたい
雲みたいになってるよ
パパとママがいる
お仏壇の前、2人ともすごく泣いてる
ママは声をあげて泣いている
パパはママの背中を抱いて、涙をこらえてる
でもこらえきれなくて涙が出てる
たっちゃんは、まだよく分からないみたいだけど、寂しそうだ
ああ、ぼくが今しゃべることができたらな
ぼくはここにいるよ
ああ、大丈夫だからって言って甘えたいよ
ぼくは気が付いたら、光になったまま、ママの体に入ってた
ママ、大丈夫だよ、ぼく元気だよ。安心してって
そしてこの光でママを包み込んだんだ
そして、光りは胸の中でやさしくまたたいて、それを体全身に広げていった
ぼくの光がママに染み込むようにって
言葉は届かなくても、ぼくのこの光は届くようにって
ママは、「今ケンちゃんの声が聞こえたわ」ってパパに言った
「なんて言ったんだい?」
「分からないの、分らないけど、でもケンちゃんの声が聞こえたような気がするの」
そんな会話をしていた
ぼくは、光になっちゃったけど、誰かの体にはいって元気を出してあげることができるみたいだ
パパの体にも入ってみた
「パパ、いつもありがとう。お馬さんしてくれて、ありがとう。いつも遊んでくれてありがとう。砂場で作ったお城、本当に楽しかったな」
パパは驚いた顔をしていた
「今、オレもケンを感じた」
ぼくは、たっちゃんと、ママ、パパをずっと温かい光で包み込んだんであげた
それからも毎日、ずっとぼくはパパとママが元気になるように、やさしい光でつつんであげたんだ
「たっちゃん、いつでもお兄ちゃん見守ってあげるからね」
ママもパパもたっちゃんも、少しずつ元気を取り戻してるみたいで、うれしかった
なんだかぼくは、いろんな人の心が、「感じ」としてとらえることができるみたいだ
喜んでる人、悲しんでる人、怒ってる人、楽しんでる人
みんな、何かそういう空気をだしている
悲しくよどんだ空気をしょってる人に、ぼくは元気づけてあげるんだ
その人の体に入っていって、優しい光で包んであげる
大丈夫だよ、元気出して、そうだよ。元気になってくれたらぼくもうれしいよって。
言葉や気持ちは届かなくても、でもみんな、ちょっと元気が出るみたい
ただ、どうしようもなく怒ってる人や、自分なんかダメだって人にはなかなか近寄ることができない。
その人のしょってる空気に跳ね返されて、体に入って行けないんだ
一言でも明るい言葉を言ってくれれば、きっとぼくはその人の体に入っていっていやしてあげられるのに
本当なら、そういう人こそ元気にしてあげたいのに。
あまりに違い過ぎる「空気」がぼくが、その人に入るのを跳ね返してしまうんだ
きょうは飼っているワンちゃんが亡くなって、泣いてる女の子の所に行ってきたよ
ぼくの光で包んであげて、声をかけたんだ
辛いよね。哀しいよね。でも、こんなに泣いてくれる人に飼ってもらって、ワンちゃんもきっと幸せだと思ってるよ。いっしょに遊んでもらったことや、散歩に連れてってもらったこと、きっとワンちゃんは幸せに思っているから
女の子の悲しい想いはそれでも強かったけど、ぼくはいっしょに泣いて、体の中から励ましてあげたんだ
そのとき、空を覆っている鉛色の雲の一部がサーっと晴れた
雲のわれめから差し込む光がぼくらを包んだんだ
ピーピーピーピー
お空のあちらこちらから、そんな音が聞こえて、地面が波のように、ゆれ動いてる
あれ?家もゆれてるし、ぐにゃぐにゃしてる
いつしか女の子も犬もいないし、ぐにゃぐにゃに曲がった家や木、庭、まわりの景色が、曲がりながら上に伸びて行ってお空を覆っちゃったよ
あれ、また何も聞こえなくなった
あの時みたいに
ああ、なんか暗くなっていく
「ケンちゃん!」
「ケン!」
気が付くとぼくは病院のベッドにいた
パパもママも泣いていた
「よかった、よかった。ケン」
「ケンちゃん・・・」
どうしてだろう
ぼく死んじゃったはずじゃなかったっけ
お医者さんがぼくを見てパパとママに言った
「もう大丈夫です」
ママは泣き崩れた
「よかった、ケンちゃん・・・」
夢だったのかな
でも今でも思い出すんだ
ぼくが光だったこと
ぼくは光になって、いろんな人の心をなぐさめてあげたこと
ただ、辛い時にずっと自分なんかダメだと言ってる人や、憎しみでいっぱいの人には入っていくことができなかった。
その人の「空気」がぼくをはねかえしちゃうんだ
そんなときは、一言でもいいから明るいことばを言ってみて
きっとぼくみたいに光になった誰かが、癒しに行ってくれるはずだから
最近、「言霊」とか「波動」とかそういう話をよく聞きます。
そうしたものをベースに置いてショートストーリーを書いてみました。
「落ち込んだ時に、ネガティブな言葉を言うと、さらにネガティブな現象を引き寄せてしまうけれど、そうした時に、よい言葉を唱えると、悪い縁を断ち切ることができる」
そんなことを、ちょっと入れてみました
今、落ち込んで、弱音しか言えない人に「ちょっとだけ頑張っていい言葉を唱えてみようね」と、メッセージを込めて書いたつもりです
よろしくどうぞ<(_ _)>