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吉川英治 宮本武蔵第二巻 考察

 吉川英治代表作の二巻目についての考察です。


 第一巻で数年自分を見つめ直し、学問と精神修養に励んだ武蔵は、いよいよ武者修行の旅を本格化させます。その過程で自身を成長させるために悩みもがく様子も書かれていますが、第一巻のもがき方とはまた質が異なるように感じられます。


 第二巻では京での吉岡一門に関しての描写などもありますが、その部分はそれらの腐敗が書かれているだけで、武蔵の成長と関連したところはこの巻ではないように思います。この巻で武蔵に大きく影響を与えた大人物は、柳生の里にいる先人、柳生宗厳だと感じました。


 血気盛んな若い武蔵は以前から挑みたいと思っていた柳生宗厳に会うため、柳生の里で強引な手法を取ります。結局、会える一歩手前まではたどり着いたものの、彼は宗厳に会うために取った手法を恥じ、宗厳の庵から立ち去ります。


 武蔵は宗厳に会おうとする過程で、ほとんど間接的にですが、宗厳の人間としての度量及び深淵を極めた剣の力量を垣間見る贈り物を二つ手に入れることができています。一つは宗厳が切った芍薬の茎の切り口、もう一つは武蔵がそれを読むことで宗厳と会うことを諦め、自分の浅はかさを恥じることになった、庵の前に書いてある一つの詩でした。柳生宗厳と会うことは叶いませんでしたが、この二つの贈り物とも言えない贈り物だけで、武蔵は人間的な成長だけでなく、剣の力量においてもかなりの成長があったように感じ取れます。それは、彼の人間的な感覚が剣の道以外でも非常に鋭敏であったから、武者修行中にそれだけによっても、またとない成長の機会となったのでしょう。それと共に、宗厳が大先人として立つ非常に大きな何かとも感じることができます。


 この部分の描写は、吉川が非常に武蔵と自分を重ね合わせながら書けた部分ではないかと考えます。立ちはだかる大先人の存在というものは、若い時分には恐らくピンと来ないものでしょう。ましてや、自分の能力に過信があればなおさらです。それを、吉川も自分の若い頃と重ね合わせ、大先人の度量をどうしようもなく侮り見誤りすぎた武蔵の恥を書いたのではないかと思います。私の今までの経験からも大いに共感できる所がありました。


 ただ、鋭敏な感覚で自身の誤りを悟ることができる武蔵の伸びしろも素晴らしく、彼がこれからどのような人間になるか期待が持てる転換点を含む巻でした。

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