閑話 フォルテ と ヘリオス
魔の一族の里を去った後のふたりの話です。
それではどうぞ。
フォルテとヘリオスは魔の一族の里から去る際に連れてきた馬に乗り、森の中を駆けていた。
「やれやれ、今回の計画は失敗も失敗。聖女様に何とお詫びすればよいのやら。」
ヘリオスは独り言つ。
フォルテやヘリオスの言うあの御方、つまり聖女様とは、かつてボルスを魅了しアリアがこの世界に転移する原因を作ったキャス(キャリアス)のことであった。
ヘリオスの独り言を聞いたフォルテは馬に揺られながら、
「優しい聖女様なら許してくれるさ。」
と笑って言った。
その様子にヘリオスは不機嫌な表情になる。
「元はと言えば貴様が力の一族の族長と顔見知りだったせいだろうが。」
「いやぁ。まさか昔戦った小僧が立派に一族の族長をやっているとは。月日が経つのは早いなあ。」
ヘリオスの怒りを、のらりくらりと躱して見せるフォルテ。
ヘリオスは舌打ちをすると、フォルテから離れようとする。
「しかし先輩は面白いぐらいに表情と喋り方が変わるなぁ。何か理由があるのかい?」
そんなヘリオスに笑いながらフォルテが声をかけた。
「ああん?なんでテメェにそんなこと説明しなきゃならねぇんだ?」
フォルテの疑問を一蹴するヘリオス。
「まあまあ。我らが聖女様の御座す待ち合わせの場所まで1週間も一緒に移動しなけりゃならないんだ。ちょっとした話ぐらいしようや。」
だがフォルテはなおも食い下がろうとする。
ヘリオスはそれに苛ついた様子であったが、面倒くさくなりため息をつくと語り始めた。
「・・・チッ。まあいいだろう。かつて俺には弟がいた。馬鹿で乱暴者の俺とは違って弟は物腰柔らかな性格で頭のいい奴だったが、俺たちの仲は悪くなかった。俺たちの両親はファルマール王国現王フリーデンの王兄殿下、つまり聖女様の御父君に仕えていた。だが、フリーデンの下劣な策略により王兄殿下が殺された後、王兄殿下に仕えていた俺の両親とともに弟はファルマール王国民に暴行を受け殺された。俺だけは掴まり、聖女様の御母堂とともにこちらの世界に飛ばされてきたのだ。俺は弟の名前である『ヘリオス』の名を名乗り、弟の真似をして、弟のことを片時も忘れないようにしている。」
「へぇ、それはお気の毒に。えーと、それじゃあ先輩の本当の名前は何と言うのかな?」
「フン。俺の真の名は聖女様だけが知っていれば良いことだ。誰にも教えるつもりはない。」
「ふむふむ。聖女様だけが先輩の本当の名前を知ってんのか。なるほど。それなら諦めよう。」
フォルテはヘリオスから色々な話が聞けたので、満足げな様子で会話を終えようとした。
しかし、今度はヘリオスが呼び止める。
「ちょっと待て。次はテメェの話を聞かせろ。どうやって聖女様に取り入った?俺たちのファルマール王国への復讐という血よりも濃いつながりの中にどうやって入り込んだ?」
ヘリオスはどこか嫉妬の混じった瞳でフォルテを睨みつける。
フォルテはそれを見て笑う。
「ああ、聞いてばかりじゃ悪いし構わないよ。まあ、聖女様にちょっとしたお土産を渡して、俺自身の目的を聞いてもらっただけなんだけどね。」
「お土産と目的?なんだそれは?」
「お土産はグランデル新王国の三種の神技、と言えば分かるかい?」
「三種の神技? ・・・っ!! それははもしかしてグランデルの3色の上級騎士が使うという極秘の技術のことか?」
ヘリオスはフォルテがキャリアスにグランデル新王国に伝わる“神技”を献上したと聞いて驚きを見せる。
「正解。赤陽の“盾”、黄光の“縛鎖”、白影の“隠密”。その3つの技術を聖女様に献上したのさ。」
「だがどうやって3つ全てを知った? それぞれの色の上級騎士が使う技術は、同じ上級騎士であっても他の騎士団には秘匿されていると聞いたことがある。」
「おっ! よく知ってるね。でもその答えは簡単だよ。黄光と白影のそれぞれの騎士から無理やり聞き出したんだ。色々な方法でね。」
爽やかな笑みを湛えて答えるフォルテを見て、ヘリオスは初めてこの男に対しゾッとする。
「でも、さすがに黒陰騎士が持つという4つ目の神技までは手に入れられなかったよ。今の黒陰騎士をやってる子は強すぎて勝てなかったし、前の黒騎士から聞き出そうにも今の黒騎士に殺されちゃってたからね。」
フォルテはそう言って楽しそうに笑う。
「そこまでする貴様の目的はなんだ? なぜ仕えていた国を裏切った?」
ヘリオスは笑っているフォルテを気味悪げに見つめながらも聞かずにはいられなかった。
「今のグランデル新王国の国王ティラン様はつまらない人でね。前の王様はしょっちゅう近隣の国を侵略してたんだけど、今の王様は別の目的にご執心みたいで戦争を一切しないんだ。」
「つまり?」
「俺はただね、ただただ死ぬまで戦っていたい、それだけなんだよ。」
久しぶりのキャスちゃんの登場です(名前だけ)。
キャスちゃん(キャリアスさん)のことが思い出せない方は、第1章の『閑話 キャス①・・・』を見てみてください。
次回はアリアのところに戻ります。
それではまたいつも通りのお願いをさせていただきます。
いつもこの作品をお読みいただきありがとうございます。
もしこの作品をお気に召していただけておりましたら、星やブックマーク、いいねを付けていただけると嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。




