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アリア 2-17 


「それで、その後はどうなったのだ。」


話がそこで止まってしまっていたので、ドウマが続きを促した。

エビラはゆっくりと頷くと、口を開く。


「・・・魔人化の呪法を使った父上は・・・体が魔物のように変化し始めたネ。」


(((((っ!!!)))))


衝撃の事実に部屋にいた全員が驚愕した。

そしてエビラは言葉を詰まらせながらも続ける。


「それから・・・、暴れ始めたネ。フォルテや使用人だった男に対してだけでなく、ワタシにも・・・そして里にいた者たちにも見境なく襲い掛かってきたんだネ。」


「それじゃあここに来た皆さんの怪我(ケガ)は・・・?」


アリアが治療した患者の傷跡には、鋭利な爪のようなもので引っかかれた傷も少なくなかった。

話を聞いていたアリアは、ある可能性に気付きポツリと呟いてしまった。

近くにいたエビラには、当然聞こえてしまう。


「そう・・・ダネ。ワタシを含めてウチの里の怪我人のほとんどは・・・父上に襲われて。」

「あっ!ご、ごめんなさい。」

(私はなんて無神経なことをっ。)


エビラの悲しそうな様子を見て、後悔するアリア。


「アルスちゃん、気にしなくていいネ。でも父上は苦しんでいたネ。理性はないはずなのにひたすらワタシの名前を叫びながら・・・その変わり果てた肉体を崩れさせながら暴れていたネ。」


「そんなっ! 魔人化の呪法とはそのような不完全なものだったのか!?」


数日前まで自身に(ほどこ)そうとしていた『魔人化の呪法』が思考だけでなく肉体まで崩壊させるものだと知ったドウマは驚く。


だが、エビラはそれを一部否定する。


「使用人だった男、たしか名前は『ヘリオス』という名前でワタシたちのところで働いていたネ。おそらくは偽名だけどネ。ヤツは体を崩壊させる父上を見て、『やはり素体となる肉体が脆弱だと魔人化の力に耐えられませんね。本当は強い肉体を持つという力の一族の里長に魔人になってもらいたかったのですが。』と言っていたのネ。だからドウマ殿なら体は崩壊しなかったかもしれないのネ。」


「だが知性が無くなっていては意味がない!」

「ワタシもそう思うネ。結局ワタシたちはフォルテとヘリオスに(もてあそ)ばれていたのネ。」

「くっ、フォルテめ。」


(いきどお)るドウマに、同意するエビラ。

2人はどんどんヒートアップしていく。



「あの。」


そんな中、これまで黙って話を聞いていたメルトが手を挙げた。

全員の視線がメルトに集中する。


「えーと、そのフォルテとヘリオスは今どこに?」

「そうなの。それにお前(エビラ)のお父さんはどうなったなの?」


ためらいがちに尋ねるメルトに追随し、ネイアも質問した。


それにより熱くなっていたドウマは少し落ち着いたようで、部屋に置かれていた椅子にドスンと腰かけた。

エビラもゆっくりと息を吐くと、


「フォルテとヘリオスは魔人化した父上を見た後、すぐに去って行ったネ。ヘリオスがその時に言い残したことを信じるなら・・・父上はあと一週間しか生きられない、らしいネ。」


そう答えた。


「えっ?!」

「体が崩れていく父上は、魔人化の力で再生もしているようだけど、その再生力もいつかは尽きてしまうらしいネ。ヘリオスが言うにはそれが一週間後ということみたいだネ。」


驚きの声を上げたアリアにエビラは悲しそうに説明する。


「も、元に戻すことはできないのですか?」


アリアは自分のことのように必死になって尋ねる。

しかしエビラは首を横に振ると、


「父上の身体は完全に変質していたネ。おそらくだけど父上の記憶や肉体が元に戻ることはもう無いなのネ。」

「でも、エビラさんの名前を呼んでいたんですよね? 感情は残っているのでは?」


「うん、そうだネ。でもワタシや里の者たちにも襲い掛かってきたネ。」

「っ、すみません。」


「父上はネ。ワタシと違って愛の深い人物なんだよネ。ワタシのことだけでなく里の者たちも大事にしていたネ。これまで絶対に無意味に傷つけることはしなかったネ。だから暴走していたとはいえ、もしワタシや里の者たちを傷つけてしまった事実を知ってしまったら、父上はおそらく自分を許せなくなってしまうネ。それにあの苦しそうな姿を見たら・・・もう感情を取り戻すことなく眠らせてあげたいのネ。」


「エビラさん。」


アリアはもうそれ以上何も言えなくなってしまった。

エビラがすでに覚悟を決めて入ることに気付いたからだ。






「しかしエビラ殿。フォルテやヘリオスが去りゲルド殿も長くないとなれば、この里に迫っている危機とは何でしょうか?」


しばらく沈黙が続いていたが、ドウマは場の空気を換えようと声を発した。

だがエビラはこの質問に申し訳なさそうな表情を浮かべた。


「父上は長くない、それは間違いないネ。でもまだ6日間はあるということネ。」

「・・・まさか!?」


オルティアに迫っている危機にアリアは気付いた。

その直後アリアの想像した通りのことがエビラの口から語られる。



「父上はこのオルティアに向かって移動していたのネ。ゆっくりと崩れ落ちる体を引きずりながらネ。」



いつもお読みいただきありがとうございます。

次回は魔の一族の里を去った後のフォルテとヘリオスの話にする予定です。

それではまた。


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