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アリア 2-13


「あと一人。」


アリアが治癒魔法を使い続け、2時間ほどが経過したころ、重傷者は最後の一人になっていた。

すでに患者の手当てはほとんど終了しており、先ほどまで治療のために動き回っていた者の多くが休憩に入っていた。



「アルス、大丈夫か?」


メルトが心配そうに声をかける。



「うん。あと一人くらいなら大丈夫だよ。」


アリアは笑顔で応じ、立ち上がろうとするのだがふらついてしまう。

それを隣で付き添っていたネイアが支えた。


「アルス君、掴まってなの。」

「ありがとう、ネイアちゃん。」


「俺の肩にも掴まれよ。」


メルトはネイアの反対側に立つとアリアの腕を肩にかける。


メルトとネイアに支えられながら、アリアは最後の患者のもとに向かった。






「この部屋に最後の患者さんがいらっしゃいます。」


治療に使われていた民家の家主の奥さんが、アリア達を奥の部屋に案内する。


アリアは最後の患者だけどうして別の部屋にいるのか不思議に思いながらも扉を開けて中に入った。


「失礼します。えっと、ドウマさん、バトロさん。それに・・・え、エビラさんっ!」


アリアが部屋の中を見渡すとバトロとドウマがベッドの横に立っていることに気付いた。

そして彼らの近くのベッドには、数日前に別れたばかりのエビラが横たわっており、アリアは驚く。


エビラは全身が傷だらけのようで、体に()てられた布が血に染まっていた。


「キ、ヒヒ。アルスちゃん。数日ぶりなのネ。こんなに早く再会できてうれしいネ。」

「エビラさん。無事だったんですね。良かったです。」

「キヒ。そう言ってもらえてワタシも嬉しいネ・・・つっ!」


笑顔のエビラであったが、体に痛みが走ったのか突如苦悶の表情を浮かべる。


「エビラさんっ!すぐ治療します。」


アリアはメルトとネイアに支えてもらいながらエビラの近くに移動した。


(『ヒールライト』)


数多くの治療をこなしたアリアは治癒魔法を無詠唱で使えるようになっていた。

さらにその回復効率も向上しており、少しずつだが傷が塞がっていく。


「アルスちゃん、スゴイネ。治癒魔法を無詠唱で使えるなんて、ネ。」

「今は喋らず体を休めてください。」

「キヒヒ。アルスちゃん、ありがとうネ。うちの里の者のために治癒魔法を使い続けてくれたんだってネ?」

「くっ、思ったより傷が深い。どうして早く僕を呼ばなかったんですか?!」


エビラの傷は(さいわ)いにも内臓に達しているものはなかったが、それでも緊急の治療を必要とするほど深いものが全身に渡って見られた。

焦るアリアに笑顔を向けるエビラ。


「ワタシも族長の息子だからネ。自分の里の人間より先に治療を受けるわけにはいかないネ。」


そう恰好をつけるエビラであったがその額には脂汗が浮かんでいた。



「アルス君のおかげでエビラ殿は助かりそうですね、ドウマ様。」

「ああ。先ほどまではほとんど口も利けないほど苦しんでおったからな。」


アリアが治療をしている後ろで小声で話すバトロとドウマ。

だが、その声はアリアの耳にしっかりと聞こえていた。


「やっぱり無茶をしていたんじゃないですか。」

「キ、ヒヒ。バレてしまったのネ。でもアルスちゃんのおかげでだいぶ楽になってきたネ。」

「そんなわけないじゃないですか。まだまだ治療を始めたばかりですよ。とにかく今は安静にして休んでいてください。」


元気そうに話しているが、エビラの体にある多くの傷口からはいまだに血液が(あふ)れ出ている。

アリアは必死に傷の深いところを探し治癒魔法をかけていく。



「アルスちゃん。悪いんだけどまだ休めないネ。」

「え?」


しかしエビラはアリアの忠告(ちゅうこく)に首を横に振ると、ドウマの方を向く。

その顔はこれまでと異なりとても真面目な表情をしていた。



「オルティアの族長、ドウマ殿に今伝えておかないといけないことがあるんだネ。」

「・・・そちらの里で起こったことについてだろうか?」


「そうネ。そしてその危機がこのオルティアにも迫っているかもしれないネ。」


その言葉に部屋にいたエビラ以外の全員が息を()むのであった。


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