アリア 2-5 計画は・・・
アリアとネイアがオルティアに到着した日の夕方、アリア、メルト、ネイア、そしてバトロ夫妻を合わせた5人は族長ドウマの家の前にいた。
メルトが声をかけた人たちは集まるまでにまだ数日かかりそうなので、とりあえずネイアの帰還の報告とアリアの滞在の許可を求めるため、ドウマに面会することにしたのだ。
もちろん今日アリア達は何か行動を起こすつもりはなかった。
挨拶をこちらからするのは、アリア達に逃亡などの反抗の意思がないように印象付けるためである。
「ドウマ様、バトロです。報告とお願いしたきことがございます。」
「入ってくるといい。」
バトロがドウマ宅のドアの前で大きな声で声をかけると、すぐに中から返事が返ってくる。
その声は老人のしわがれたものではなく、力強く重みのある声であった。
「失礼します。」
バトロは一声かけると、ドウマの家に入って行く。
アリア達はバトロの後ろに続くのであった。
ドウマの家は玄関の目の前が客間になっていた。
「お前は!なぜここにいる?」
初めに中に入ったバトロが、突如驚いたような声をあげる。
客間にはドウマと思しき逞しい体つきをした壮年の男性のほかに、もう一人若い男がいた。
その男はオルティアに住む人とは違った服装をしており、1枚の布でできたいわゆる貫頭衣を肥満気味の身体にまとっていた。
「キヒヒ。これだからオルトリアは脳筋のバカばかりで困るネ。このワタシ、魔の一族次期族長であるエビラ様に対する口の利き方を知らないようだネ。ここにいるのはおたくの族長さんにお呼ばれしたからだよ。」
「うちの者が申し訳ない、エビラ殿。」
魔の一族の次期族長だという『エビラ』はバカにするようにアリア達を見る。
そんなエビラに対し、ドウマは深く頭を下げた。
そのことにアリアを除くバトロ達4人は驚く。
「ドウマ様!どうして魔の一族の、それも族長ですらないものにそのように頭を下げるのですか?!」
バトロはドウマに対し大きな声で苦言を呈する。
それに対しドウマは目じりをつり上げて、
「黙れ!バトロ、貴様は我らオルティアの未来を潰すつもりか!」
「くっ」
そう言い放ったドウマの威圧に、アリア達は身をすくませる。
「キヒヒ。さすがに族長さんは分をわきまえてるようだネ。君たちも族長を見習うといいネ。」
エビラは上機嫌そうに笑い、ドウマの前に座りなおす。
そして思い出したように、
「キヒヒ。それでワタシに嫁ぎに来るという娘、名前は何と言ったかネ?」
「エビラ殿、実はそこにいる娘が約束していたネイアです。」
「キヒ?」
ドウマが嫁がせる予定のネイアがすでにこの場にいることを伝えると、エビラはギュインと音のしそうな速度で首を回しアリア達の方を向いた。
先頭に立つバトロから順に、チーナ、メルト、ネイアを見て、最後にアリアの顔を見る。
すると突然、エビラは立ち上がる。
「キヒヒヒヒ。ネイアちゃん、だったネ。最初はオルトリアの女に興味がなかったから気付かなかったけど、とーっても気に入っちゃったネ。」
上機嫌になったエビラはアリア達の方に近づく。
バトロの横を通り過ぎ、チーナやメルトの横を通って、身構えるネイアの前、ではなくアリアの前に立った。
「キヒヒ。ネイアちゃーん。とーってもワタシ好みね。この子は今日連れて帰るネ。」
「キャッ。」
エビラは鼻息を荒くして、アリアとキスをしそうな勢いで顔を近づける。
アリアは短く悲鳴を上げて大きくのけぞるが、エビラの顔がアリアの顔を追いかける。
「いや、エビラ殿。ネイアはそっちの・・・。」
ドウマは慌てた様子で声をかけた。
しかしエビラにはドウマの声は耳に入っていない。
「ネイアちゃんは男の子みたいな恰好をしているネ。でもそこがとーってもキュンキュンするネ。」
「た、たすけて。」
アリアの後ろは壁で、もう逃げるスペースは残されてなかった。
徐々に顔を近づけてくるエビラに、涙目になって助けを呼ぶ。
すると、
「ネイアは私なの!!」
ネイアはアリアをかばうように、エビラを押しのけてアリアとエビラの間に立った。
「キヒ?こっちがネイア??」
エビラはネイアとアリアを交互に見て首をかしげる。
数秒してエビラの瞳に理解の色が宿る。
そしてネイアに向かって、
「ワタシ、こんなちんちくりんはとーってもいらないネ。」
「「んなっ!!」」
心底興味がなさそうに言い放つエビラの言葉に、ドウマとネイアは驚愕の声を上げるのであった。
こうして図らずも、アリア達の『ネイアの望まない婚姻を防ぐ』という当初の目的は果たされようとしていた。
現実は計画や想像通りにはいかないものですね。
次回も1週間以内に、可能なら早めに投稿します。
それでは。




