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アリア 2-4 ネイアの家族


(アリア視点)


なるほど、この話をするためにネイアちゃんに部屋から出て行ってもらったのですね。


「いくつかお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「ああ、もちろん。アルス君にはその権利がある。」


「ではまず・・・。バトロさんたちは、オルティアの族長がどうしてネイアちゃんを魔の一族のところに嫁がせようとしているのか、その目的をご存知なのでしょうか?」


「私たちの族長、ドウマ様が言うには魔の一族から更なるチカラを手に入れようとなされている。ここからは私の予想だが、オルティアの民と魔の一族の者との間に生まれてくる子どもが魔法の才能を手に入れることを期待しているのだと思う。だが、婚姻して生まれてくる子にその才能が受け継がれるかは分からない。そこで最初の(こころ)みとして、実の親のいないネイアに白羽の矢が立ったんじゃないかと考えている。」


ここまではほとんどネイアちゃんの予想と同じですね。

ですが、とても気分の悪い話です。



「族長のドウマさんはどうしてそこまで力を得ようとするのでしょうか?」


「ドウマ様は若き頃、我が一族の風習に(のっと)り各地を旅をしながら、傭兵をされていたという。そんな折にグランデル王国のとある騎士と戦う機会があったらしい。だが結果は惨敗。手も足も出ず、命からがら逃げだしたとおっしゃられていた。」


「グランデル王国の騎士、ですか?」


「ああ。ドウマ様によると、その騎士は漆黒の鎧に同じ黒の兜を身に着けていたらしい。」


私の脳裏に、パレードで目が合った黒い騎士の姿が(よぎ)ります。結構昔の話のようですが、あの人と同一人物なのでしょうか?


「それからドウマ様は里に戻られ、力を示して若くして族長になられた。しかし、そんなドウマ様も10年ほど前から老いを感じられたようで、ドウマ様は自身の鍛錬よりも里の若い者の育成に(つと)め始めるようになられた。だが結果はドウマ様の望んだものにはほど遠かったようだ。最近のことだがドウマ様はおっしゃられていた。『私は老い衰えていく一方だ。だが、今の里の若い者はそんな私にも遠く及ばない。もしあの黒い騎士のような強者が里に攻めてきたら、オルティアは簡単に滅んでしまうだろう・・・』と。どこか(あせ)るようになったドウマ様は、魔法の力を手に入れるために長年争っていた魔の一族の集落に一人で向かわれてしまった。」


「一人でですか?」


「そうなんだ。ある時、ドウマ様は突然里から姿をお消しになって、数日後戻ってきたときにネイアの縁談話を持ってきた。私たちが反対しても、ドウマ様は里のためだと耳をお貸しにならなかった。」


バトロさんは拳を強く握りしめます。

娘のようなネイアちゃんを要求するドウマさんへの怒りや、それを止められなかったご自身に対する怒りがあるのでしょう。



「だいたいの経緯は分かりました。話は少し変わるのですが、バトロさんとチーナさんがメルト君のことをお聞きにならないのは、最近メルトさんと何らかの形で連絡を取られたのではないでしょうか?」


私の質問にバトロさんは驚いた表情になります。


「その通り。実はメルトは昨夜帰ってきたんだ。門を通らず忍び込む形でこの里に入ってきたらしい。とても怒った様子でここに帰ってきたよ。私たちに説教した後、どこかに出て行ってしまった。おそらく里の中にいると思うんだが。」


よかったです。メルト君もこちらに戻ってきてくれているのであれば心強いですね。


「そうですか。それでは最後に一つだけ。私たちが逃げたら、バトロさんとチーナさんはどうなりますか?」


「・・・私たちはネイアを逃がしたことで罰を受けるだろう。だが、それでも構わないさ。先に逝ったあいつらの、私たちの大切な娘を守れるのなら。」



「それはダメなの!」



いつの間にか戻ってきていたネイアちゃんが大きな声で言いました。

ネイアちゃんに続いてチーナさんも部屋に入ってきます。


「実の娘ですらない私がバトロお父さんとチーナお母さんに育ててもらった上に、さらに迷惑をかけることはできないなの。それにふたりに何かあったら、メルトが悲しむなの。」




「バカネイア。俺のことは気にすんな。」


いつ入ってきたのか、メルト君が部屋の入り口に立っていました。


「バカって言う方がバカなの。あの後すぐにいなくなって、すごく心細かったなの」


ネイアちゃんは泣きそうな表情で言いました。


「それは・・・、ごめん。あの後オルティアに向かいながら、途中の町や村にいるオルトリアの知り合いに声をかけて回ってたんだ。その甲斐もあって、ネイアの婚姻に反対するために10人くらい里に戻ってきてくれる。あとオルティアにいる友達にも声をかけてきた。」


少し気まずそうに言ったメルト君にネイアちゃんが抱き着きます。


「うう。メルト、ありがとうなの~。」



私はその様子を見て、バトロさんたちの方を向きます。


「バトロさん、チーナさん。ごめんなさい。バトロさんたちのご依頼をお受けすることはできません。何より逃げた先にネイアちゃんたちの幸せな未来は無いと思います。なので、みんなが納得できる解決方法を一緒に考えてください。」


ほほ笑んで、そう告げたのでした。


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