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アリア 2-2 オルティアの事情


アリアがネイアから相談を受けてから2日目、ふたりは力の一族が住む集落『オルティア』に向かって、森の中を歩いていた。


オルティアへは直接向かう交通手段がなかったため、ふたりは最寄りの村まで乗合馬車で移動したあと、そこから徒歩で移動していた。


「あともう少しで到着するなの。」


ネイアは先導するように森の中を迷いなく進んでいく。

アリアはその少し斜め後ろをついて歩いていた。



「メルト君は、ネイアちゃんに届いた手紙を見た後すぐにどこかに出ていったって聞いたけど、まだ戻ってきてないんだよね。」

「そうなの。」

「メルト君にも色々話を聞きたかったんだけど。」

「メルトは仕方がないやつなの。だから、メルトの分も私が答えるなの。」


「ふふ。それじゃあ、まずは力の一族のオルティアの人と魔の一族について教えてくれる?」


「オルティアの民は身体能力が高いけど魔法がほとんど使えない一族なの。逆に魔の一族は魔力が強いけど、身体能力がとても低い一族なの。そのせいか私たちの里と魔の一族の里は隣同士の集落だけど、とても仲が悪いなの。今はほとんど交流がないけど、私が生まれる前は何度も抗争してたって聞いてるなの。」


「でもネイアちゃんのところの族長さんは、仲の悪いはずの魔の一族との関係を結ぶことを考えてるんだよね?」


「だから怖いなの。結婚したら私は魔の一族の里で暮らさないといけなくなると思うなの。そうなったらどんな扱いを受けるか分からないなの。」


ネイアは体を震わせる。


アリアにも独り嫁いだネイアがまともな扱いを受けるはずがないことを容易に想像できた。


(絶対にネイアちゃんをそんな目に合わせるわけにはいかない。)


そう決意を固めると、ネイアを救うために色々と聞いてみることにした。



「ネイアちゃんのご両親は、今回の結婚についてどう考えているか分かるかな?」

「・・・親はいないなの。私が小さいときに魔物に襲われたって聞いたなの。それで両親と仲が良かったメルトのお父さんとお母さんに育ててもらってたなの。」

「そうだったんだね。」


アリアはネイアを優しく抱きしめた。

ネイアは一瞬身体をこわばらせるが、すぐに力を抜いてアリアの肩におでこをくっつける。


(ネイアちゃんが人に優しくできる理由が少し分かった気がします。メルト君やメルト君のご両親がどれだけネイアちゃんに優しく接していても、ネイアちゃんはいつもどこか気を使って生きてきたと思います。ネイアちゃんが本当に気を許せるはずのご両親がいなかったのですから。)




しばらくネイアを抱きしめていたアリアは、ゆっくりとネイアから離れる。


「あっ・・・」


ネイアは名残惜しそうな声をあげる。

しかし、すぐにそんな声をだしてしまったことが恥ずかしくなったのか、


「あ、ありがとうなの。でもアルス君は女の子をいきなり抱きしめる変態さんなの。」


そう言ってネイアは真っ赤になった顔を隠すように、アリアから顔を背けるのであった。




・・・・・・・・・・・・・・・・・




「僕を連れていくだけで、結婚の話はなくなるかな?」


アリアはネイアの考えを尋ねてみる。


「可能性はとても低いと思うなの。でも他にどうしたら良いのか何も思いつかないなの。」

「そうだよね。だから僕も一緒に考えるよ。えーと、それじゃあ・・・それぞれの族長がどんな目的で婚姻関係を結ばせようとしているか分かるかな?」


ネイアはしばらく考えたあと、


「私は魔の一族の人と会ったことがないから、あっちの考えは分からないなの。だけど、うちの族長の目的は分かるかもしれないなの。」


「可能性が低くてもいいから教えてくれる?」


「うんなの。私たちの族長はすごく魔法を嫌っていたなの。でも時々、『私たちに魔法の才があれば』ってつぶやいていたなの。だから今回の婚姻を機に魔の一族の血を取り込んで、オルティアの民が魔法の才能を手に入れることを考えているのかもしれないなの。」


「たしかに2つの一族の長所が合わされば、身体能力と魔力の両方が優れた一族になれるかもだね。・・・そう簡単にはいかないと思うけど。でも族長さんはどうしてそこまで力を求めるんだろう?」


「うーん・・・。族長は力の一族を強くすることばかり考えている人だったけど、その理由は分からないなの。魔の一族と縁を結ぼうとすることも想像できなかったなの。」


「そっかぁ。力を求める理由と言えば、復讐か何かに備えるとかが定番だけど。・・・やっぱり集落に行って直接話を聞かないと分からないかな。一応聞くけど、今から僕とネイアちゃんとメルト君の3人で、遠くに逃げるのはダメなんだよね?」


「それはできないなの。もし私が逃げたら、メルトのお父さんとお母さんに迷惑がかかると思うなの。それになんだかとても嫌な予感がするなの。」


「うん、分かった。じゃあ当初の計画どおりやってみようか。僕がネイアちゃんの彼氏ということで。」

「よろしくお願いしますなの。もしアルス君が襲われそうになったら、私が絶対に守ってあげるなの。」

「あはは・・・。無理しないでね。」


アリアはそんな展開にならないことを切に願うのであった。


それから2人は『彼氏のフリ』計画について詰めながら、森の中を進む。





・・・そして、


「見えたなの。」


ネイアが指をさす先には、アリア達の身長よりも高い丸太の(へい)で囲われた、人の住む集落があった。


「アルス君、オルティアへようこそなの。」


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