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ボルス 1-7

怒りの叫び声をあげながら突進してくるバークボアーを、ボルスは回転するように横に(かわ)しつつ、バークボアーの皮膚を撫でるように剣を当てる。

しかし、ボルスの剣はバークボアーの樹皮の皮膚に弾かれてしまう。


「くっ、硬いな。」

先ほどのように刃が通ると考えていたボルスは、予想以上の皮膚の硬さに驚き、バークボアーから距離をとる。


「ボルスさんっ。」

ボルスの近くにヴィアが少し息を切らしながらやってくる。


「ボルスさん、あのバークボアーの個体をよく見てください。先ほど倒したバークボアーの個体より赤く光って見えませんか?」

「ああ、確かに薄っすらと赤くなっている。それが?」

「あの個体から強い魔力が感じられます。おそらく何らかの強化魔法のようなものを使っているのではないかと思います。」

「それは普通のことなのか?」

「一部の知能ある魔物が魔法を使うことは珍しくありません。でも、私が調べた冒険者ギルドの資料には、バークボアーが魔法を使うという情報はありませんでした。おそらくですが特殊個体の可能性があります。」

「特殊個体?」

「はい。見た目や能力に何らかの違いが見られ、ほとんどの場合通常の個体よりもはるかに強くなると言われます。討伐する場合の適正冒険者ランクも2段階以上あがることが珍しくありません。通常のバークボアーはFランク冒険者でも十分狩れますが、あのバークボアーはDランク冒険者レベルの実力が必要になると思われます。」

「Dランクか。」


現在、ボルスとヴィアの冒険者ランクは一番下のFランクであった


「ヴィアはあのバークボアーを倒すことができるか?」

「はい。簡単に倒せると思います。ですが無理です。」

ボルスの質問にヴィアは真面目な表情で強く返した。


「・・・なぜだ?」

ボルスはヴィアの矛盾する返事に、その理由を尋ねる。

するとヴィアは真面目な表情から一変して、もじもじとテレたような動きをし始める。


「・・・実は私、魔法の加減が苦手、というか(いや)でして。こうドカーンと魔法を使うのが好きなのですが、ここで攻撃魔法を使うと周囲の畑にまで甚大な被害を与えてしまうかと。てへっ。」

あざと可愛らしく舌を出すヴィアを見たボルスは一瞬イラっとするが、深呼吸してこらえる。


だがそのとき、これまで怒りながらも、2人になったボルスたちを警戒して動きを止めていたバークボアーの特殊個体は、ヴィアのふざけた様子を見てさらに怒り狂った様子で攻撃を再開する。


ヴィアに向かって。


「グガアアァァァ!!」

「きゃあ。」


突進してくるバークボアーを、ヴィアは必死になりながら横に転がって躱す。


「ボルスさん、助けてください。」

「簡単に倒せるんだろう。」

「詠唱する時間が必要なんです!それにこんな状況じゃ魔力を練り上げることに集中できません。」

ヴィアは必死に助けを求めて訴える。


ボルスはそれを見て、ため息をつきつつ剣の刀身に手を添えて魔法を唱える。

すると剣が電気を帯びて白く明滅を始める。

そしてボルスはバークボアーを目掛(めが)けて駆けだした。


そこで(またた)く光に気が付いたのか、バークボアーは狙いをボルスに変えて突進してくる。

ボルスはバークボアーと衝突する直前で、先ほどと同様にバークボアーの横に躱し、側面を切りつけた。


バチィッ


剣は先ほどよりも強く弾かれボルスは体勢を崩す。

しかし、バークボアーのほうも電撃の影響を受けているのか、その身体は痙攣していた。

バークボアーは初めて受ける電撃の衝撃と体の異常から、その場から逃げ出そうとする。

だがその足はもつれ、うまく歩くことすらできていなかった。


ボルスはゆっくりと立ち上がると、バークボアーの背後に移動する。

そして自身の身体強化を最大にして、バークボアーの首筋に剣を突き立てたのであった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ボルスさん、助けてくださってありがとうございます。でも、もうちょっと早く助けてくださいよ。」

「あれはヴィアの自業自得だろ。」

「もう、照れ屋さんなんだからぁ。それにしてもさっきの魔法は雷の属性付与ですか?」

「ああ。俺の一族は雷魔法の適性が高いらしくてな。まあ俺の実力じゃ、ヒトや獣を気絶させるくらいの威力しか出せないんだけどな。」

「それでもすごいですよ。雷属性の適性のある人は珍しいんですよ。」

魔法が好きなのか、ヴィアはとても興奮した様子でボルスに顔を寄せる


「まあ、魔法のことは置いといて、バークボアーの死体はどうする?」

ボルスは後ろに下がって距離をとると、話題を変えるようにヴィアに尋ねる。


「討伐証明部位と素材を切り取りましょう。討伐証明部位は尻尾(しっぽ)なので、朝になったら村長さんに見せて、依頼達成のサインをもらいましょう。」

「分かった。じゃあヴィアは最初に倒したほうの剥ぎ取りを頼む。俺はこいつをやるから。」

「かしこまりました。」

ヴィアはビシッと敬礼のポーズをすると、初めに倒したバークボアーのほうに走っていくのであった。



それから尻尾や肉などの剥ぎ取りを終えた2人は、宿に戻って休憩した後、ワンダー村の村長の家に行き依頼達成のサインをもらうのであった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


ボルスとヴィアの2人は現在、ワンダー村からニールの街に向かって歩いていた。


「いやー、予想外の強敵と出会ってしまいましたけど、初めての共同作業は大成功ですね。」

「変な言い方をするな。」

「これで私たちはEランクに、いえ、特殊個体を倒したのでDランクまで昇格できるかも。そしたら、みんなにチヤホヤされてぇ・・・。くふふ。」

ボルスの抗議の声を無視して、ヴィアは何とかの皮算用を始める。


「倒したのは俺だけどな。」

ボルスはボソッとつぶやく。

それは聞こえたのか、

「あー、言ってはいけないことを言ってしまいましたね。そんなことを言う人には・・・、えいっ。」

ヴィアはニヤニヤとボルスに近づくと、勢いよくボルスの腕に抱き着く。


「や、やめろ。離れてくれ。」

「いやでーす。」


そんなヴィアの楽しそうな笑い声とボルスの悲鳴が、早朝の街道に響きわたるのであった





結果としてボルスとヴィアは昇格したものの、Eランク()まりであった。



第1章の冒険の始まり編(仮題)も無事書き終わりました。

アリアとボルスがこれからどうなっていくのか、私自身とても楽しみです。


それでは次章からもよろしくお願いいたします。


あとできたらでよいのですが、評価ポイントを付けていただければ嬉しいです(心の声:なにとぞ良い評価を)。



(以下、今回のネタバレを含みます)


~~インターネットで調べた知識~~

バークボアーをボルス君は雷魔法を利用して倒しました。

作者ネムタイがインターネットで調べたところ、乾燥した木材はほとんど全く電気を通さないらしいです。

ですが、生きた木や水分を含んだ木材なら電気を通すらしいです。

バークボアーは皮膚は樹皮に近いですが中身は肉と血と骨です。

なので、きっと電気を通してくれるでしょう。


以上、~~インターネットで調べた知識~~でした。


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