表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/59

アリア 1-22 支配者と被支配者


「我らは新王国を真に愛する者である。この場に集まっている国民皆に聞いていてもらいたいことがあり、このパレードの場を借りることにした。」


壮年の兵士が国王ティランのパレードの進行を遮る形で口上を述べる。

その傍らには十数人の兵士の姿があった。

その中にはつい先日、アリア達と王都に入るときに対応した門の責任者である兵士がいることにディーは気付いた。


国王の進行を妨げたことにより、ティラン達王族の周辺を警護していた騎士たちが前に出る。

それに対し、王都の警備をしていた兵士たちの一部が持ち場を離れて、壮年の兵士のもとに集まり始めた。

結果、兵士と騎士がにらみ合う状態となる。


パレードを見に来た国民たちは異様な雰囲気に、大通りから離れようとする者も現れる。

しかし、大通りにつながる道を封じるように、先ほど壮年の兵士のもとに行かなかった兵士が立ちふさがった。


「もう一度言う。ここに集まった国民の皆にも聞いてもらいたい。我らのティラン陛下が秘密裏に行っている所業を。」


壮年の兵士が周囲に通る声で言い放った。

民衆にざわつきが起こる。

民衆の中からは、「陛下は何を隠しているんだ」という声や、「教えてくれ」という声が聞こえ始める。

その場にいた民衆たちの視線が、壮年の兵士とティランのもとに集中する。

渦中のティランは無表情で壮年の兵士の顔を見つめていた。


「まずは順序だてて説明しようと思う。国民の多くが知っていると思うが、我ら兵士はほとんどが平民出身者なのに対し、騎士は貴族しかいない。しかしそんなことはどうでもいいと、我らは誇りを持って国を、そして国民を守ってきた。そんなある日のことだ。政治の中枢を担っている、とある方々が我ら兵士に助けを求めてきた。国王陛下と高位の騎士たちが魔道具を使って、国民から強制的に生命力を奪い魔力として利用しようとしていると。そしてその悪魔のような兵器が王都に先日持ち込まれたことも確認している。そこで我らは後に裁かれることを覚悟して、この場を利用して新王国民に伝え、守るために立ち上がったのである。」


その言葉を聞いた民衆たちからはざわめきが生まれる。

いまだ無言を貫く国王側をにらみつけるものまでいた。


周囲の反応を確認した壮年の兵士は満足げな表情で続ける。


「ティラン陛下。どうして反論しないのでしょう。真実だから反論できないのでしょうか。」


壮年の兵士の言葉に、民衆の中からは同調する声や暴言を吐く者まで現れ始めた。



「アハハハハ。プフー。やめてぇ、おかしくて腹がよじれちゃうぅ。」


しかし、そんな時大きな声で笑い始めるものがいた。

ティランの隣にいた、第2王女のウリアであった


「何がおかしいのでしょうか。ウリア王女殿下。」


壮年の騎士は眉根を寄せて、不機嫌そうな様子を隠さず声を発する。


「だってぇー。ずっと見当違いな事ばかり言ってるんだもんー。まずお父様が何も言わないのは、あなたに呆れ果てているからぁ。かける言葉も見つからないってやつぅ。」

「なん、だと。」


壮年の兵士は自身が馬鹿にされてると思い、怒りで顔を真っ赤にする。


「2つ目はねぇ。騎士や貴族ばかり優遇しているってやつだけどぉ。平民の方でも騎士はいるのよぉ。ただ差別意識のある貴族の方もいるからぁ、出身を隠しているだけでぇ。あなたが今の地位に不満を持っているのは分かるけどぉ、それはあなたにそれだけの能力と努力が足りないだけなのぉ。」

「だ、だまれぇ。」


「そして最後にぃ。あなたたちはぁ、同志とかいう貴族に騙されてるだけだよぉー。だってお父様がエリアスの街から取り寄せたものってぇ、お母様へのただのプレゼントだものぉ。」

「へ、へっ?ぷれぜんと?」


壮年の兵士は顎が外れたかのように口をあんぐりと開けたまま固まる。


「そうなのぉ。サプライズプレゼントなのぉ。ただの少し貴重な宝石のついたアクセサリーなのぉ。みんなは知らないでしょうけどぉ、お父様の誕生日とお父様がお母様と初めて会った日が同じ日なのぉ。だからその記念日なのぉ。まあ、お父様の5歳の誕生パーティーにお母様が参加してただけだけどねぇ。」

「そ、そんな。」


壮年の兵士は倒れそうになる。

しかし隣に部下がいて倒れることはできなかった。



「ウリアよ、喋りすぎだ。それではサプライズプレゼントにならないだろ。」


そこでティランは口を開く。


「我が国の兵士たちよ。お主らの国を思う気持ちは分かった。大方、平民に差別意識のある一部の貴族が、国を思う兵士ごと邪魔な王族を排そうとしたのだろうな。」


そこまで言って言葉を切った。

ティランは周囲を見渡し、悲しそうな表情をする。


「しかし簡単に騙されクーデターを起こす者たちが多いと、余は不安になってしまうな。そして我が民たちも先ほどの暴言、他の国なら大変なことになっているのだぞ。」


その場にいた民衆はほとんどが顔を真っ青にしている。

その場に崩れ落ちる者も大勢いた。


「王である余が、自らの国や民を疲弊させるわけがなかろう。この国の全ては余すところなくこの余のものだ。そして貴様らの罪もな。我が民たちよ、このようなめでたい日にそんな顔をするでない。存分に我が誕生日を祝ってもらおうではないか。」


ティランがそう言ってほほ笑む。


その言葉と表情から、兵士と民衆に血の気が戻り始めた。


民衆の中からは大きな拍手や、「陛下ぁー、ありがとうございます!」という声が上がり始める。

すると、その声は徐々に広がり「陛下、万歳」という声や感謝の声で満たされていく。


クーデターに参加した兵士たちは民衆の様子を見て、すでに自分たちに勝ち目はないと手に持つ武器を落とし、ただ立ち尽くすのであった。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「狙い通り上手くいきましたね。」

「相手の手のひらで動いてやったんだ。こちらにも利益がないとな。」


パレードが終了したあと、ダーナとティランは王城のとある一室で話をしていた。


クーデターの最初に民衆の中から聞こえてくる王族や騎士を批判する声を挙げた者たちは、ほとんどが兵士側が用意したサクラであった。


しかし、ティランの最後の言葉のあと初めに感謝の声を挙げた者たちもまた、ティラン達国王が我が用意したサクラであったのだ。


ティラン達は白影騎士を使って、相手の出方をパレードの前から知っており、あえて同じ方法で相手を叩き潰し、王家の支持を高めるために利用することを選んだのだった。


「兵士側の代表たちは捕らえ情報を吐かせましたが、彼らの処遇はどうなさいますか?」

「あの場でああ言ったのだ。兵士から人死にを出せるわけにはいくまい。特赦ということにする。」

「そうですわね。こちらが手を出せば、向こうの狙い通りになってしまいますわ。」

「ああ、今はまだ(・・・・)な。代わりに裏の首謀者たちには今責任を取ってもらうことにしよう。いつも通りにな。」

「御意に。」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・




後日、3人の貴族が別々の場所で死体となって発見された。

彼らはそれぞれ財務大臣、外務大臣、そして元老の一人で全員が国の中枢を担っていた。


財務大臣は毒によって死亡し、外務大臣は何者かに殺され、元老は首を吊って亡くなっていたのだ。


当然、彼らの死の原因についての捜査が行われた。

しかし捜査が始まるとすぐ、彼らの死体の近くにそれぞれの筆跡による文書が見つかった。



財務大臣の文書には今回のクーデターについての詳細な計画書が挟まれていた。

文書の内容には、計画が失敗に終わり死刑に処されるのが恐ろしく服毒自殺をするという(むね)が書かれていた。



外務大臣の文書では他国と繋がっていたことがほのめかされており、クーデターが失敗したことにより口封じのために暗殺されたのではないか、ということで捜査は打ち切られる。



元老の文書には、新王国を思いすぎるあまり大臣たちに(そそのか)され、クーデターに関わってしまったことが記されていた。

さらにその文書において、クーデターに関わってしまったことを深く悔いている様子が書かれており、元老の死因は自殺として処理されることになる。




死体になった者たちの家族や使用人の中には、彼らの死を不審に思う者が多かった。

王家に殺されたのだと触れ回る者も現れたが、クーデターを起こした者の関係者の言葉を聞く者はいなかった。



次第に彼らは王都で暮らすことが難しくなり、姿を消していくのであった。



この作品をお気に召していただけておりましたら、ブックマークや評価を付けていただけると嬉しいです。


よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ