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ボルス 1-4 成長とトラウマ

久々のボルス回です。


これからもよろしくお願いします。



アリアが盗賊団(?)と戦っていたころ、ボルスはニールという街にいた。


ニールはニール運河の近くに作られた町で、運河を挟む両岸に作られた特殊な街である。

ニールは運河を経由する貿易の要衝(ようしょう)で、街の中は非常に賑わっていた。


2か月近く前にボルスはアリアを探すためにニールの街に来た。

当然、アリアの足跡(そくせき)がニールで見つかるはずもなく、ボルスは次の街にすぐ出発するつもりだった。

しかし、ルインからこのままあてもなく周辺の街を探すよりも、人の行き来の多いこの街を拠点にして、冒険者ギルドや商人から情報を集めたほうが良いかもしれないと言われて、ボルスは(いま)だにニールに滞在していた。


現在、ボルスは冒険者の仕事を、ルインは街の衛兵の手伝いをしながらアリアの情報を探している。



ボルスは1か月前までニールの冒険者ギルドで冒険者養成訓練を受けていた。

ボルスは元の世界では接待のような戦闘訓練しか受けてきておらず、ほとんど手加減のない冒険者による訓練は地獄のように感じられた。


冒険者たちからは何度も見込みがないと言われ、ボルスは何度もくじけそうになる。

その度にルインに叱咤激励を受け、ボルスは耐え続けた。


ある時、ボルスの様子を見かねたルインは、冒険者養成訓練とは別にルインとの特別訓練を課す。

文字通りボルスは何度も死にかけることになったが、そのおかげでボルスは強くなり、今では新人冒険者の中で一目置かれる存在となっていた。


周囲から褒められるようになったボルスは調子に乗り始める。

だが、すぐにルインによってボコボコにされ、伸びかけたボルスの鼻は粉々にへし折られたのだった。



ボルスは今、街の清掃活動をしていた。


街の清掃活動は冒険者の仕事ではあるものの、報酬の少ない人気のない仕事である。

なぜボルスがそんな仕事を受けているのかというと、ルインからの命令であった。


ルイン(いわ)く、

『お前のようなお調子者は魔物を狩りに行ったらすぐへまをして死んでしまうだろう。せめて信頼できる仲間が1人以上できてからにしろ。あとお前には普通の民の暮らしを知ってもらう。いつまでも王族気分でいられては迷惑だからな。』

そう言われてしまったボルスは渋々ながらも街の中で働いていた。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・




昼下がり、ボルスは箒を持って街の中を歩いていた。

すると、薄暗い路地裏の方から誰かが揉めているような声が聞こえてきた。

ボルスは無視して通り過ぎようかと思ったが、どうにも無視してはいけない気がして少し覗いてみることにする。


路地裏の少し奥に入ったところでは、魔法使いの恰好をした美少女が4人の男に押さえつけられていた。


「だ、誰か。たすけ・・・。」

「黙らねえとぶっ殺すぞ。」


魔法使いの少女は助けを求めようとするが、口を手で覆われてしまう。

ボルスは自分が助けるべきか、周囲に助けを求めるべきかを考えた。

しかし男たちの手が少女の服に迫っているのを見て、ボルスの身体は自然と動いてしまう。


「お前たち、何をしている。」


内心はビビっているボルスであったが、努めて冷静に声を出す。


「ちっ、邪魔が入りやがった。お前ら、そいつを黙らせろ。」


一人の男の指示で、周りにいた暴漢の仲間がボルスに近づいてくる。

その手にはナイフが握られていた。

対するボルスの手元には箒しかなく、自分に向けられる複数の殺意に足がすくみそうになる。

しかし、決して動かなくなるわけではなかった。


暴漢の1人がナイフを腰だめに構えてこちらに突っ込んできた。

ボルスは手に持った箒で、突っ込んでくる男の胸を思いっきり突く。

男の胸からは骨が折れるような音が鳴り響き、男は泡を吹いて倒れこんだ。


その様子を見た2人の暴漢たちは後退(あとずさ)り始める。


「てめえら、何ビビってやがる。挟みこんで袋叩きにしろや。」


先ほど命令した暴漢のリーダーらしき男が再度指示を出す。

その声に怯えた暴漢2人が、ボルスを囲むように動こうとする。

しかし、その前にボルスは前に出た。

近いほうの男の腹に箒を突き入れ、膝をついたところで脳天から箒を振り下ろす。

もう一人の男に対しては、ナイフを持っているほうの肩に箒を叩き入れた。

鈍い骨の折れる音が響き渡る。

鎖骨を折られた男は叫び声をあげながら、ヨロヨロと逃げて行ってしまった。


「ちっ、雑魚どもはクソの役にも立たねえな。」


少女を押さえていた男が立ち上がる。

その体躯は縦も横もボルスの2倍以上あった。


「ガキが、ただで済むと思うなよ。」


暴漢のリーダーがボルスに対して凄む。

しかし、ボルスはもうその男に対して恐れを抱くことはなかった。

なぜならボルスにとって、この男よりもキレたルインのほうが恐ろしい、ということが分かったからであった。


ボルスは男のスネを箒で叩く。

(たい)して効いた様子もない男は、ボルスを掴もうと腕を伸ばす。

すぐさまボルスは男の伸びた手にある指に箒を叩きこんだ。


「うぎゃあっ」


指を潰された男は、その痛みに手を引っ込める。

その隙を見逃さず、先ほど叩いた男のスネに、先ほどよりも強い力で箒を叩きこむ。

先ほどとは違い、スネからは『ボギャ』っという音が鳴った。


「いっ、いでぇ。いでぇよぉ。」


男はスネを抱え倒れこみ、うめき声をあげる。


ボルスは倒した男たちを警戒しながら、少女に()け寄って声をかける。


「立てるか?ケガはないか?」

「うん。」


ボルスの質問に少女は目を赤く腫らしながらうなずきながら立ち上がる。


「よし。それならさっさと逃げよう。」


そう言ってボルスは少女の手を掴み、人通りの多い場所まで少女を届ける。

ボルスはその後、街の衛兵に暴漢のことを報告する。


結局、暴漢たちは衛兵が駆け付けるまで転がっており、逃げた男も含め無事に全員捕まったのであった。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・




後日、冒険者ギルドでボルスの目の前には助けた少女がいた。


「ボルスさん、あの時はありがとうございました。」

「ああ、あの時の。気にしなくてもいいよ。同じ冒険者だったみたいだし、助け合うのは当然のことだ。」


そう言ってボルスは箒を持って、少女の横を通り過ぎようとする。

しかし少女はもう一度ボルスの前に立つ。少女の顔は赤くなっている。


「えーと、まだ何か?」

「あのぉ、一緒にパーティを組みませんか?」

「えっ?」

「ですから、パーティを」

「す、すまない。少し考える時間をくれ。」


ボルスはそう言い残し、その場から走り去って行った。





その場から逃げたボルスは建物の陰で脂汗を流していた。


「パーティを組むなら男同士がいい・・・。」


すでにキャスの魅了から解放されていたボルスは、かつて自身が魅了されていた可能性に気付いていた。

だからこそ自分に近づいてくる女性、特に可愛い系の少女に対して、ボルスの身体は強い拒否反応を示すようになっていた。


ちなみにルインのような暴力系の女性にも、ボルスは同様の反応を示すのであった。


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