アリア 1-16 シルルデレる
護衛依頼5日目の昼下がり、王都まで残り2日というところになっていた。
アリアは同じ魔法使いということで、シルルに索敵魔法を教えてもらっていた。
「索敵魔法のコツは自身を中心とした球体をイメージして魔力を放つこと。生き物はすべて魔力を持っていて、魔力同士の性質が完全に一致する可能性は限りなく低い。自分が放った魔力が自分以外の魔力にぶつかると、魔力同士は反発してわずかに跳ね返ってくる。跳ね返ってきた魔力の方向と跳ね返ってくるまでの時間から、敵のおおまかな位置や方向を掴むことができる。あとは経験を積むことでより正確な情報を得ることができるようになる。」
「なるほど。少しやってみますね。」
アリアはシルルの教え通りに球体をイメージして魔力を放つ。
しかし、跳ね返ってくる魔力を感じることができなかった。
「アルス君の放つ魔力の量が多すぎる。魔力の量が多いと魔力は跳ね返らずにそのまま押し流れてしまう。今度は一瞬魔力を放つような感覚でやってみて。」
「はい。」
アリアはうなずき、シルルのアドバイス通りに魔力を放つ。
するとアリアには目の前のシルルだけでなく、メルト、ネイア、ライナ、あとはポーツ商会の人たちのいる位置がなんとなくだが感じられる。
「できたみたいだね。2度目で成功させるのはすごく優秀。アルス君はイメージする能力が高いのかも。」
「ありがとうございます。昔から本を読んでいろいろな場所を想像するのが好きだったからかもしれません。」
「そうかもしれない。あとは魔力の消費を抑えつつ、できるだけ広範囲に素早く魔力を飛ばせるようになること。この移動の間に何度も練習するといい。」
「分かりました。」
アリアは返事をすると、魔力の量や距離を意識して索敵魔法の練習に集中し始めた。
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アリアが索敵魔法の練習を始めて2時間ほど経った頃、アリアの索敵魔法に反応するものが複数あることが感じられた。
そちらのほうに目を向けるが何も見えない。
しかし、そのナニカがこちらに向かってきているのが跳ね返ってくる魔力から分かった。
「シルルさん。僕の索敵魔法に反応がありました。あちらの方向からこちらに向かってきていて、数は20ほどだと思います。」
「私の索敵魔法には反応はない。魔力を放ってから何秒くらいで知覚してる?」
「5分ほどですね。」
「それは確か?そんなに長距離の索敵は私にはできない。それが合っているなら1里さきを索敵していることになる。」
シルルは信じられないといった表情でアリアを見つめる。
2人の話が聞こえたのかライナが近づいてきた。
「うーん、多分アルス君の言ってることは本当かも。私の恩恵もあっちのほうから危険なものが来るって告げているから。」
「恩恵?」
アリアは聞きなれない言葉に首を傾げた。
「知らない?恩恵は生まれながらに与えられる能力みたいなもので、色々なものがあるけど、私のは『虫の知らせ』っていう危機察知能力だね。」
ライナの説明を聞くが、アリアにとって恩恵という言葉は初めて聞くものであった。
少なくともあちらの世界では一度も聞いたことのないものであった。
「それでアルス君。あっちから何かがこちらに向かってきてるんだよね?」
「はい。数は20以上で、馬か何かに乗っているのかかなりの速さでこちらに向かってきています。おそらくこちらとぶつかるまで10分もかからないと思います。」
「そっか。避けられそうにないんだよね。それなら迎撃する準備をしようか。」
そう言ってライナは残りのメンバーのところに向かって行った。
「アルス君、ごめん。」
アリアの背後にいたシルルが謝罪の言葉を口にする。
「シルルさん?どうして謝っているんですか?」
「私はアルス君の言っていることを全く信じていなかった。でもライナの恩恵が外れたことはないから、アルス君の言ってることは正しかった。どこかで私は索敵魔法を覚えて間もないアルス君が、私より優れていると思いたくなかったんだと思う。」
「僕は優れてなんかないですよ。色々な人に教えてもらったことを自分なりにモノにしようとしているだけですから。それにもし逆の立場なら僕も信じなかったかもしれないですから、シルル先生も気にしないでくださいね。」
アリアはそう言ってシルルに微笑みかけた。
シルルはわずかに頬を染める。
「じゃあみんなのところに行って準備を手伝いましょう。」
「うん、分かった。でもあとで私にコツを教えてね。」
「はい、喜んで。」
アリアとシルルは笑い合ったあと、並んでみんなのところに向かった。
「悪役令嬢は異世界に飛ばされて」に出てくる時間や距離の単位は、日本のものと同じです。
ちなみに1里は約4kmですので、索敵魔法の魔力が飛ぶ速度はかなり速いと思ってください。
(往復8kmを5分なので時速96kmほど)
読んでくださっている皆様はあまり深く考えないでください。よろしくお願いします。




