アリア 1-15 アルスの秘め(姫)事
エリアスの街を出た日の夕刻、アリア達はポーツ商会が提携する宿のある村に到着していた。
エリアスという大きな街が近いためか、ここまでの道中では盗賊の類や強力な魔物に出くわすこともなく順調な滑り出しであったといえる。
この村にもポーツ商会の支店があるらしく、商会の人たちはその支店に顔を出してくると言って別行動になった。
同行を申し出たが、村の中なら大丈夫と言われ断られてしまったので、やむなくアリア達3人はこの日宿泊する宿の一室でくつろいでいた。
「ふぅー。道中ずっと周囲に気を張り巡らせるのは疲れるな。」
「そうだね。でもライナさんとシルルさんは慣れているからか、僕たちに色々話しかけながら歩いてたよね。」
「そうなの。それでも魔物が現れる時は私たちより早く気付いてたなの。」
「うん。シルルさんはすごく弱い魔力を数分おきに周囲に放って索敵してたみたいだけど・・・。ライナさんが何であんなに早く気付けるのかは分からないかな。」
「シルルさんはそんなことしてたのか?俺は全然気づかなかったぜ。やっぱりBランク冒険者ってすごいんだな。」
『ググゥ~』
3人でそんな話をしていると、部屋の中にぐうぅーと空腹を告げる音が鳴り響いた。
「ぼ、僕じゃないよ。」
「私も違うなの。」
「はいはい、俺でいいよ。そんなに強く否定する必要もないと思うんだが。」
「じゃあ時間もちょうどいいし、ここの1階でご飯食べようか。」
3人は手早く準備をすると、部屋を出て1階にある食堂に向かった。
食堂は宿泊客以外にも外から食事に来た人でにぎわっていた。
アリア達は空いているテーブルを探していると、ライナとシルルが座っているのを見つけた。
とりあえず挨拶をしようと2人のもとへと向かう。
「ライナさん、シルルさん、お疲れ様です。今日はありがとうございました。」
「あら、かわいい子たちが来たわね。アルス君、メルト君、ネイアちゃんもお疲れ様。」
「お疲れ様。」
ライナとシルルがこちらを向いてほほ笑む。
「3人はこれから食事なの?私たちはちょうど食べ終わったから、ここの席を使っていいわよ。」
ライナの言葉にアリアは周囲を見渡す。
他に空いている席は見つかりそうにはなかったので、
「ライナさんたちのご迷惑でなければ、この席を使わせてください。」
「いいわよ。護衛依頼中はお酒も飲めないし、部屋に戻ってダラダラするわ。」
そんなやり取りをすると、ライナとシルルは立ち上がり部屋に戻っていった。
3人は鶏肉のシチューとパン、サラダに飲み物を注文する。
注文したものが到着すると3人ともすぐに平らげてしまう。
特にアリアは空腹だったのか、優雅な作法で食事をしつつもメルトとネイアよりも先に食べ終わるという離れ業をやってみせたのだった。
食後はすぐ部屋に戻り、3人でしばらく談笑をしていたが、就寝する時間が近づいてきた。
「それじゃあ男女で交代で部屋を使って身体を拭くぞ。俺とアルスは男同士だから一緒に使うから、ネイアとどっちが先に部屋を使うか決めようぜ。」
「えっ?」
メルトの言葉にアリアは驚き固まってしまう。
「ここにはお風呂はないから、濡らしたタオルで身体くらい拭かないと不潔だろ。」
メルトはアリアの驚く様子を、タオルで身体を拭くだけで済ませることに抵抗があるのだろうと勘違いをしてそんなことを言う。
「う、うん。そうだね。」
アリアは適当に返事をする。
「先に私が身体を拭くなの。レディーファーストなの。男の子は部屋から出るなの。」
ネイアはそう言うと、アリアとメルトを部屋から追い出した。
追い出されたメルトはネイアが先なことに文句を言っているが、アリアにそんなことを考えている余裕はない。
(まずいです。この状況を全く考えていませんでした。何か手を考えないと。メルトさんの前で裸になる羽目になってしまいます。私もおふたりに頼んで、ひとりで部屋を使わせてもらいましょうか。いえ、それだと不審に思われますし、何よりご迷惑をおかけすることになります。他に何か手が・・・。)
アリアは必死に考えを巡らせるが、全く良い手が浮かばなかった。
「アルス君とメルトの番なの。」
無情にもネイアは手早く身体を拭き終えてしまう。
アリアは思いついた中から最もマシな方法を採るしかないと考え行動に移す。
「僕はちょっと外で魔法の練習をしてくるね。今日は魔力をそんなに使わなかったから。」
そう言ってアリアはタオルを持って部屋から出ていってしまった。
「アルスのやつ、何か隠してるな。」
「うんなの。とっても怪しいなの。」
メルトが身体を拭き終わってからアリアが戻ってくるまでの間、メルトとネイアの間で『アルスが何を隠しているのかを当てよう大会』が繰り広げられた。
しばらくしてメルトとネイアはアリアが戻ってきたのに気づくと、アリアのその姿を見て驚く。
「アルス!体が震えてるじゃないか。唇も少し青くなってるぞ。」
「どうしたのなの?!何かあったなの?」
「だ、大丈夫だよ。水魔法を少しミスしちゃって、全身ずぶ濡れになっただけだから。風魔法で服も乾かしたし何も問題はないかな。でも今日はもう身体を拭く必要はないかなぁ。」
アリアは目線を泳がせながら、震える身体を押さえつけようとする。
「アルス、そこまでして隠したいことなのか。もう何も詮索しないから安心しろ。」
「分かったなの。明日からアルス君ひとりで身体を拭く時間を作るなの。」
「な、何のことかなぁ。私に隠したいことなんてないヨ。」
結局、翌日からアリアひとりで部屋を使う時間が設けられ、二人にとても感謝したのであった。
隠し事をするのは大変ですね。
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