アリア 1-1 異世界で出会ったのは・・・
「・・・いつまでもこんな何もない草原にいても仕方ないですね。ハァ、あの二人のせいで大変なことになりました。」
しばらく呆然としていたが歩き出し始めるアリア。
ボルスやキャスのことを考えると腹も立つが、もう二度と会うことはないと思い徐々に気を静めていく。
もうボルスのことを殿下と呼ぶ必要もなければその気もなかった。
元々婚約者ではあったが、アリアにとってボルスはただの殿下で、いてもいなくても同じ存在であった。
とりあえず飲み水を確保するため水源を求めて歩いていると、遠くに人の姿らしきものが映った。
アリアは『なぜこんなところに人が?』という考えや、悪人の可能性を考える。
だが、ひとりでこの世界を生きていくことはできないし、間違いなく近いうちに餓死するだろうと考え、まずは遠くから観察しようとゆっくりと近づくことにする。
ある程度近づくと、それは人に似た姿ではあるものの皮膚が緑色をした『ゴブリン』であることが分かり、アリアは歩みを止めた。
ゴブリン、それは元の世界にもいた魔物で、決して強い魔物ではないが繁殖力が高く、世界中のどこにでもいると言われていた。
アリアはこの場をどうするかを考え始める。
(一応簡単な魔法なら使えますが、私は戦闘訓練はおろか喧嘩もしたことがありません。ここは気付かれる前に距離をとりましょう。)
そう思いゴブリンから目を離すことなく少しずつ後ずさり始めるが、偶然にもゴブリンがアリアのいる方に顔を向けた。
「gu gya gya gya gya」
醜悪な笑みを浮かべゴブリンはアリアの方へ走ってくる。
アリアはそれを見て一瞬おびえるが、すぐに冷静になって状況を判断する。
(これは背を向けて逃げても、ただの令嬢の私の足ではすぐに追いつかれてしまうでしょう。ここは魔法を使って倒すしかありません。)
覚悟を決めたアリアは体内の魔力を活性化し、火魔法の構築を始める。
アリアは自身が使える魔法で最も殺傷力が高いであろう『フレイムアロー』を放った。
しかし、ゴブリンは俊敏な動きでそれをかわし、アリアを押し倒し上から押さえつける。
「うぐっ」
アリアは背中から倒れた衝撃のせいかうまく呼吸ができなくなってしまう。
魔力を練り上げることに集中できず、ゴブリンの醜悪な笑みを見つめることしかできなかった。
(ここまで、ですか。)
そうアリアがあきらめかけた時、一瞬影が差したかと思うと、目の前からゴブリンが姿を消していた。
「送還の光を見てここに来た。」
アリアの目の前には白い鎧を身にまとった騎士?が立っていたのだった。