アリア 1-10 明日からは・・・
本日2話目です。
(アリア視点)
私がクライブさんとの手合わせに参加するようになって1週間が経ちました。
今日もメルトさんとネイアさんと一緒にクライブさんに挑んでいます。
初めの何回かは私の魔法がおふたりの動きを邪魔をしてしまいましたが、今は違います。
戦闘開始直後に私はおふたりに身体強化の魔法をかけます。
次に私とクライブさんとの間にある地面を土魔法でデコボコにして、こちらに向かって走りにくくしました。
左右ではすでにメルトさんとネイアさんがクライブさんを挟み込む形で、大きく弧を描いて走っています。
私は動き出そうとするクライブさんの周囲の地面を胸の高さまで隆起させ動けなくしました。
クライブさんはすぐに身体を固定する土を弾き飛ばしますが、すでにメルトさんとネイアさんは距離を詰めています。
おふたりとクライブさんの距離が近いので威力のある魔法は使えませんが、動きを阻害することならできます。
私はクライブさんの顔に向かって、こぶし大くらいの水弾『ウォーターボール』を放ちました。
クライブさんはそれを手で弾いてしまいますが、水弾は割れてクライブさんの全身を濡らすことに成功します。
次に私は水と風の複合魔法である氷魔法で冷風を起こして・・・
狙い通り、全身が濡れたクライブにとってはかなり寒いのか、動きが鈍り始めました。
その隙をメルトさんとネイアさんが突き、クライブさんの腹部と顔面に強烈な一撃が入ります。
「うぐっ。それなら・・・」
クライブさんは殴り飛ばされながらも、その勢いを利用しておふたりと距離をとりました。
そして私を見て走りだします。
やはりこちらに来ましたね。
距離をとりつつ嫌がらせをしましょう。
土魔法と風魔法をあわせて砂の目つぶしです。
(『サンドブリーズ』)
クライブさんは目と口に砂が入って苦しんでいます。
それでも腕で顔を隠しつつこちらに向かってきてますが、前が見えなければこの一撃は避けれないでしょう。
まだ誰にも見せていないとっておきの雷魔法です。
私は腕を前に伸ばし無詠唱で雷魔法を使います。
(『ライトニング』)
私の手から雷の枝が伸びクライブさんを襲います。
「あばばばばば」
全身が濡れていたクライブさんは感電し完全に動きが止まります。
そこを背後から追いかけていたメルトさんとネイアさんが蹴り飛ばしました。
クライブさんは2メートルほど吹っ飛んで・・・
私たちはクライブさんの様子をしばらく伺いますが、クライブさんは倒れたまま動きません。
3人で顔を見合わせます。
私たちは勝利を確信しました。
「「「やったぁぁぁ(なの)」」」
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「まさかこんなに早く負けてしまうとは。メルトとネイアの動きはもちろん、アルスの魔法の使い方もよかった。しかもアルスが最後に使ったのは雷魔法だったか。雷魔法は雷に対する正確なイメージを持つことが難しく使える人は少ない。それをお前は無詠唱で使うとはすごいことだぞ。」
「そうなんでしょうか?たしかに昔から雷魔法は得意なんですが。」
「それも得意な魔法をこれまでの訓練では一度も見せずに隠しておくとは。恐ろしいやつだなお前は。」
アリアの隠れた才能に、クライブは大いに驚くのであった。
「これでお前たちにこの訓練場で教えることもなくなったな。ひとつ提案なんだがお前たち3人でパーティを組まないか?」
「それは俺も前から思ってたぜ。アルスがいると戦術の幅が広がって楽しいしな。」
「うんうん。私たち魔法がほとんど使えないから頼りになるの。」
クライブの提案にメルトとネイアが賛成してアリアを見る。
「うん。僕もふたりが一緒なら心強いしうれしいかな。メルトさん、ううんメルト君、ネイアちゃん。よろしくお願いします。」
アリアはふたりの言葉に心から喜ぶのであった。
「よし。ならお前たちは今日からパーティだ。明日からは実地訓練として依頼を受けてこい。初めてだからゴブリン退治や薬草採取くらいにしとけよ。あと俺に勝ったからって調子に乗ってるとすぐ死ぬから、明日からは気持ちを切り替えろよ。」
クライブはアドバイスと忠告を残すと、訓練場から去って行ってしまう。
「それじゃあ明日は太陽が顔を出すころにギルド前に集合な。依頼は朝早くになくなっちゃうから。」
「はい、分かりました。」
メルトの言葉にアリアはうなずく。
メルトは不思議そうに首をかしげると、
「アルス、俺たちはパーティなんだからタメ口でいいぜ。」
そう言ってほほ笑んだ。
「う、うん。分かった。」
「「よろしい(なの)」」
それから3人は翌日の予定を決めてギルド前で別れた。
アリアは帰宅すると、ハイドとイリヤとジーナに今日ギルドであったことやパーティを組んだこと、明日は依頼を受けるので朝早いことなどを楽しそうに話すのであった。
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