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閑話 キャス ① 男爵令嬢の正体は・・・

キャスの話です。

*ボルスを誘惑してた子です。


キャスは男爵邸の一室で、彼女に付き従う全身を覆うローブ姿の男たちと共にいた。


彼女たちの傍らには、この男爵邸の主だった者やその使用人、さらにはキャスを捕えに来た王国の騎士たちの死体が転がっていた。


返り血で真っ赤に染まった自らの身体をタオルで拭きながら、これまでの人生を思い返していた。




キャスこと『キャリアス・テ・ラ・ファルマール』は、現王フリーデンの兄だった者の娘であった。

キャスの本当の父親は現王フリーデンの調略により、ファルマール王国民に吊るし上げられ処刑された。キャスの母親と父の腹心の部下たちも捕らえられたが、国王からの恩赦という形で異世界への流刑に処された。

最も屈辱的な形で転移させられた彼らだったが、世界を超えて復讐する術はなく耐えることしかできなかった。


しばらくして母親のお腹の中にいたキャスが生まれ、その愛らしさからキャスの母親や父の元部下たちは復讐を徐々にあきらめていった。

父親のいないキャスを彼らはかわいがって育てていた。

愛情を一心に受けて育ったキャスは聖女のような白い心を持っていた。


しかしある時、キャスは庭で拾った石を送還の石に作り変えてしまう。

それはキャスが王族であり、胎児のときに送還の光を浴びた故にできたことであった。

そしてその石をよく見知っている彼らの復讐心は再燃する。



いつも優しかったキャスの母親は、繰り返し父親の最期を聞かせ、キャスの心に復讐の種を植え付けた。

近所の優しいおじさんたちだった父の元部下たちは、復讐は正しいことなのだと繰り返しキャスに語り聞かせ、復讐の種子を育てていった。


幼く優しかったキャスは周囲の人間に同情し、私がみんなの願いを叶えて助けてあげようと考えるようになっていく。


キャスが7歳になったころ、元部下たちによる地獄と呼べるほどの訓練が始まった。


教養訓練では、一般常識・マナー・演技・魔法知識・用兵といった一般的なものから知略・詐術・禁忌の魔法など相手を陥れるための技術を教え込まれていった。

キャスは特に癒しの魔法と精神干渉系の魔法に適性を示し、今では禁忌とされる『魅了』の魔法を無詠唱で行使できるようになった。

戦闘訓練では、柔術・魔法戦闘の訓練・暗殺術などをゴブリンなどの人型の魔物を的として行った。


本来、子供に耐えられる内容や密度ではない訓練を、生まれ持った才能と強靭な精神力を持っていたキャスは乗り越えてしまう。

だがその代償としてキャスの聖女のごとき心はすり減り、周囲の悪意が染み込んでいった。



キャスが10歳になったころ訓練は完了し、父親の元部下の者たちはキャスに忠誠を捧げることを誓った。

そしてキャスとその部下たちは、愚かな王国民を利用したファルマール王国壊滅作戦を開始した。


こちらの世界に転移し、伴侶もいない幼女趣味の男爵に近づき『洗脳』の魔法を使った。

その際、舌なめずりをしながら迫ってくる男爵が恐ろしくて、つい魔法の力加減を間違えてしまい、男爵の心は壊れ人形のようになってしまったが、男爵の使用人たちはそういう“遊び(プレイ)”に目覚めただけと思い気にしなかった。


それから4年ほど内乱の準備に暗躍し、ボルス王太子がファルマール王国王立学園に入学するころ、男爵家の養女として自身も入学し、ボルス王太子に近づいた。

『魅了』の魔法を使うと、ボルスは簡単にキャスの言いなりになった。


それからキャスはアリアに目を付けた。

アリアがボルスの婚約者であり、幼いころから公爵家の令嬢として何の苦労もなく生きてきたのだろうと思い、アリアを標的にしてボルスを嵌めてやろうと考えた。


キャスの目論見通りアリアはもう一つの世界に飛ばされた。


(これでもうすぐみんなの心は救われる。)


キャスはそう考え、自らの行いを正しいものだと思い込もうとしていた。



「キャリアス様?」


キャスが回想していると、ローブの男、父の元部下の一人からこちらを気遣うように声がかけられた。


「大丈夫よ。あちらの首尾はどうかしら」

「すでに内乱の火種はまき終わりました。もう止まることはないでしょう。」

ローブの男は笑みを浮かべる。

「そう。でも元王太子のボルスがあちらの世界に飛ばされるのは予想外だったわね。早く見つけて処分しないと。」



キャスはこれからの予定を練り直し決断する。


「目的もある程度達したし、とりあえずあっちの世界に戻ろうかな。ボルスも探さないといけないしね。」


そう言ってキャスは男爵邸に火を放った後、送還の石を使用して部下たちとともに転移したのであった。



ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。

この作品をお気に召していただけておりましたら、ブックマークや評価を付けていただけると嬉しいです。


それでは、これからもよろしくお願いします。


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