ボルス 1-3 アリアを見つけることが・・・
今回はボルス側の話です。
アリアが冒険者ギルドの訓練場に入ったころ、ボルスはエリアスの街に到着していた。
ボルスは自身を案内してくれている女性騎士『ルイン』に、こちらに送られたいきさつをすべて話していた。
ルインはボルスが冤罪かもしれない理由でアリアという少女をこちらの世界に無理やり転移させたことを聞いて激怒した。
『自分の婚約者だった女性の話も聞かず、どんな世界かも分からないところに送り殺そうとするなんてお前は畜生以下だ。しかも今度は自分が元の世界に帰るためにアリアという少女を利用するつもりか』と。
罵声を受けながらもボルスは覚悟を決めた表情でルインに頼んだ。
アリアを見つけて謝りたい。
『今度はきちんと話を聞いてキャスのことが冤罪であったなら、この命を懸けてでも償うつもりだ』と。
ルインはその場でボルスを切り捨てようかと考えていたが、そのときに見せた表情とルインが姿を見せる前に見たボルスの号泣し懺悔するような姿を思い出し、しばらく様子を見ようと判断した。
もしアリアと会ったときに性格が変わっていないようであれば私が責任をもって処分しよう、と。
転移させられた者は基本的に大きな街に案内されるルールなので、アリアという名前の少女が他の白影騎士といるならどこかの街にいるだろうと考え、ルインはボルスをとりあえずエリアスの街に連れて行くことにした。
それから約1日をかけて2人はエリアスの街に到着する。
ルインはボルスと街に入る手続きをする際、門番にアリアのことを確認することにした。
「すまないが昨日か今日この街にアリアという少女が入った記録はないだろうか。」
「アリアという方ですね。入街記録を確認してみますね。」
そう言って門番は名簿を確認し始める。
しばらくすると、
「アリアという名前の女性がこの街に入ってきた記録はないですね。」
「そうか。迷惑をかけた。」
傍らで話を聞いていたボルスは、アリアがこの街にいないことにがっかりする。
ちなみにボルスはアリアのように偽名を使っていない。
ボルスという名前はどちらの世界にも多少はいるので、家名のファルマールを名乗らないことだけを決め、ただのボルスとして行動することにした。
「ルインさん、アリアは他の街に行ったのだろうか。」
エリアスの街に入った後、ボルスはエリアスに質問する。
「その可能性が高いだろうな。」
「この街から一番近い別の街はどこにあるだろうか?」
「ニールの街というニール運河の近くにある街だな。馬で行けば3日ぐらいだろう。」
「・・・私は、いや俺は必ずアリアを見つけ出すつもりだ。だからその街に向かおうと思う。」
ボルスは少し考え、ルインに自分の考えを話した。
「そうか。では連れて行ってやろう。」
ルインはためらいなくそう言った。
ボルスはそれに驚く。
「ルインさん!騎士の仕事はいいのか?」
「白影騎士は転移させられた者の案内や面倒を見ることが主な任務だ。その際にかなりの自由が認められている。他の街に連れていくことぐらい何の問題もない。」
「だったらあらためて頼む。俺がアリアを探すのを手伝ってほしい。」
ボルスは深々と頭を下げる。
「そう言っているだろう。だから往来で頭を下げるのはやめてくれ。」
騎士が民間人に頭を下げさせているように見えるから、とルインはあきれた表情でそう答えた。
その後、ルインとボルスは冒険者登録をするために冒険者ギルドに行くが、訓練場にいるアリアと遭遇することはなかった。
次話は閑話としてキャスの話を投稿します。よろしくお願いします。