アリア 1-7 案内で・・・
「俺の仕事は君のような人たちを普通に生活できるように導くことも含まれる。だから今日は君に街を案内して、そのあと冒険者ギルドまでもう一度ついていこうと思ったんだ。昨日あんなことがあったし、訓練の様子も見ておきたいからね。」
ディーは通りにある屋台で買ってきたバケットサンドを食べながら答えた。
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アリアは朝食後、昨日と同じように男装をしてディーと一緒に家を出た。
ディーは昨日までの騎士鎧姿とは違い、街の人と同じようなシャツにズボンといった格好をしている。
「まずはこの街の出入り口である、東西南北にある門の場所を教えよう。冒険者として町の外に出ることも多いだろうからね。」
アリアは昨夜とは違う街の様子に、色々な物や場所についてディーに尋ね、ディーも笑いながら丁寧に答えていった。
「門の場所や色々なところも案内したし、生活に必要なものを買いに行こう。服やタオル、歯ブラシに・・・」
そんな話をしながら歩いていると、多くの商店が集中する場所にたどり着いた。
「ここは商業区でいろんな店や屋台が集中している。他にも商業ギルドや商人用の厩舎などもあるが、今回はいいだろう。」
そんな話をしていると、女性ものの服を売っている店が目に入る。
アリアは自分の着替えを買わなければと店に近づくが、
「そういえばアルスの恰好だと女性ものの服が買えないな。」
そう言われて初めて気づいたアリアは、その店の前で回れ右をして引き返すのだった。
結局、男性物の服しか買えなかったアリアは、後日イリヤと女性の恰好で服を買いに行くのだった。
その後いくつかの店を回り、必要なものの買い物を終えた2人は一度家に帰り荷物を置くと、冒険者ギルドに向かった。
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ディーとともに冒険者ギルドに入ると、昨日とは違いほとんど人はおらず閑散としていた。
「今日は冒険者の方たちが少ないのですね」
「すでに冒険者たちは依頼を受けて外に出ているのだろう。」
低ランクの冒険者たちはより稼ぎの良い依頼を受けるために陽が昇り始める前に活動を始める。
アリアが寝起きに見かけた冒険者たちもこれに当てはまった。
アリアとディーは昨日の受付嬢がいる受付に向かった。
「ディー様、アルス様。本日は養成訓練の件でしょうか。」
「そうだ。昨日の話の通りアルスに養成訓練を受けさせてやってほしい。」
「分かりました。では養成訓練について説明します。養成訓練は学科と実技に分かれており、学科訓練ではこの街周辺の地理、モンスターの分布や対処法、場合によっては文字の読み書きや算数、一般常識や礼儀作法などもお教えしております。文字の読み書きや算数は教育の機会を得られなかった方が冒険者になられる場合に、一般常識はアルス様のようにもう一つの世界から来られた方のために、礼儀作法は貴族様や上級商人の方から依頼を受ける際にお勧めしております。なのでベテランの冒険者の方でもお受けになる方は多いです。ここまではよろしいでしょうか。」
「はい。」
「次に実技訓練についてですが、こちらはギルドの奥にある訓練場にて行われております。実はうちのギルドではギルドマスターが実技の教官をしておりまして。」
「そうなんですか!」
アリアが驚くと、受付嬢はうなずく。
「はい。ギルマスは元高位の冒険者でして、様々な武器の取り扱いや魔法まで精通しているため教官をしております。本人は身体を動かせるのと、新人を自分の目で見極めたいから、と喜んでやっております。」
アリアが少し緊張し始めているのを見て、受付嬢は続ける。
「大丈夫ですよ。ギルマスは見た目はゴツいですが、基本的に優しくて、指導も丁寧で分かりやすいと評判ですから。では説明を続けますが、実技では戦闘訓練のほかに薬草の採取方法や魔物の素材の剥ぎ取り、ベテラン向けに迷宮の探索方法や罠の対処法などを教えております。とまあ養成訓練についての説明はこれくらいになりますが何か質問などありますでしょうか。」
「今のところ特にありません。」
「それでは早速ですが訓練場に行ってみますか?」
「はい。」「分かった。」
アルスとディーはうなずくと、3人は訓練場に移動したのだった。
次の次が久しぶりにボルス回です。よろしくお願いします。