〜黄金の論理〜【第二話】スタンド使いは引かれ合う
【第二話】スタンド使いは引かれ合う
「タクシーを探しているんですか?」
シュタインの警戒心とは裏腹に、拍子抜けした声は続ける。聞き慣れた日本語にその警戒心も少し解けた。
「それならやめた方がいいです。フィリピンのタクシーは観光客を倍以上の値段でぼったくりますから。僕が乗せていきましょうか?」
((何を言ってるんだッこいつ!つい先ほど酔っ払いをスタンドでぶっ飛ばしたばかりじゃあないかッ!ただこれはキョトツキョースターに何か繋がる手掛かりかもしれない。ついていってみても良さそうだ。))
「是非お願いするとするよ。マニラまで頼むね。」
乗り込んだタクシーの雰囲気は重い。それはそうだ。つい先ほど人が1人意識不明になったのだから。ただ、その澱んだ空気をバックミラーの当事者自身がかき消す。
「僕はこの街に住む17歳、みんなからキョキョって呼ばれているんだ。よろしくね日本人のお兄さん。」
「僕はシュタイン。先程の彼は知り合いか何かかい?急に倒れたように見えたけど。」
((ここは様子を見よう。こんな車内じゃ僕の能力は利にならない))
警戒心を漂わせるシュタインと、フレンドリーな青年キョキョとの会話は続く。
「彼はよく酔っ払って倒れるんです。この街ではハトに餌をやると警察にぶん殴られちゃうくらい常識ですよ。」
狂った街の常識よりも、スタンド能力によって人を1人ぶっ飛ばしておいて、平然としていられるその冷静さに、シュタインは恐怖に近い何かを感じた。
その瞬間、シュタインは凍りつく。
((ま、まさかッ!!))
その落ち着き切った狂気をシュタインは知っている。そう、2年前のあの悪夢''石川典行''そのものであった。
「君はもしかして''キョトツキョースター''なのかッ!?」
先程までの警戒心は最大値まで駆け上がり、駆け引きを通り越した言葉が、シュタインの意識より先に飛び出した。
車を止め金髪の青年は後部座席を振り返る。
「ええ、そうですが。僕を知っているんですか?」
張り詰めた空気の中、最初に空を切り裂いたのはシュタインの方だった。
「降りて下さい。いくつか質問したいことがあります。」
「いえ、まず僕の質問に答えてください。僕を知っているんですか?そして降りなければいけない理由でもあるのですか?」
考えるよりも先にシュタインは車から飛び出した。1年間にも及ぶ石川典行との激闘で、彼は本能的にこれが開戦の合図だと理解していた。
しかし、事実それは違った。キョキョは車から降りる素振りどころか、彼を乗せた車は急発進した。
束の間の困惑を振り払いシュタインは白のバンを追う。車はどんどんスピードを上げていたが、シュタインの叫びによりまたスピードを落とし終いには止まった。
「------------------ショート・パンツッ!!」
20m先程で車から降りたキョキョの股下はなんと20cmほどしかなくなっていた。足が短くなっているのである。もうもはや短いという形容には留まらない。
「なるほど、それがシュタインさんの能力ですか。これなら走って逃げることも、車のアクセルにも届かない。僕だけが特殊な能力を持っているなんて事はないとは思っていましたが、まさかこんな酷い姿に変えられるとは。笑止。」
キョキョの冷静さは冷え切ることを知らない。股下20cmの姿に変えられても、未来の猫型ロボットのような姿になっても彼はキョキョなのである。
「君は一体、何者なんだッ!!」
パャンパャンッ
シュタインの発言を無に返すような擬音の正体は''ウシガエル''だった。そのウシガエルは''本来シュタインが肩にかけていたはずだったバッグ''の位置で跳ねている。
「な、何だこれはッ!!」
その黒い塊を必死にシュタインは振り払おうとする。しかし、その手がそれに触れ払った時、シュタイン自身が前へと突き飛ばされた。
((何が起きたんだッ、ただ、僕がこのカエルに触れた途端、僕は前へと弾かれた。これじゃあまるで、僕が僕を振り払ったみたいじゃあないかッ!!))
試行し倒れ込むシュタインに短い足、いや''短くされた足''が一歩一歩近づく。
「あなたのように僕も質問に質問で返します。
''あなたは一体何者なんですか?''」
To Be Continued⇒