〜黄金の論理〜【第一話】喧嘩凸シャーになる男
Prrr....Prrr....Prrr....
静かな部屋に黒電話の耳を刺すような音が響く。
「もしもし、シュタイン君か。君に頼みたいことがあるんだが。」
早朝の挨拶を置き去りに落ち着きのある声で彼は続ける。
「''キョトツキョースター''という男を調べてもらいたい。」
「ふわぁ、、、キョトツキョースター?新手のスタンド使いですか?ロビフさん。。。」
まだ重たい目を擦りながらとは思えない考察を見せるシュタインは、どこか不安を感じているようにも思える。
「いや、詳しいことは分かっていない。ただ、彼はあの''石川典行''が生前に残した最後の遺物なのだ。危険がないと判断できた時点で''帰国''して貰っても構わない。''飛行機''の手配などは追って連絡す....」
「ちょっと待ってください‼︎‼︎帰国?飛行機?僕は一体これからどこに向かうって言うんですか、ロビフさん⁉︎」
「フィリピンだ。」
【第一話】喧嘩凸シャーになる男
ここは日本から約3000kmの国、フィリピン。つい先ほどその地へ降り立った短足は3月に流れる量とは思えない程の汗を拭い、都市部へと向かう。
((キョトツキョースター、一体どんな男なんだろう))
心配を横目に突然怒号が鳴り響く。
「キョキョォオオ、てめえ一体何様のつもりなんだぁ!?!?」
「僕はただ、落ちてる硬貨を拾おうとしただけですよ。涙目のリキさん。」
「あのさ、あのさ、だからさ、そのカネは俺のだっつーーの!?俺が涙目なのはヒジョーーに非情な乾燥体質のせいだが、これ以上泣かせないでくれるかなぁぁぁあああ!?!?」
「その地についた時点で所有権は放棄され、誰のものでもないのですよ。ですから、拾った時点でこれはもう僕のものです。」
昼間からビール瓶片手に酔っ払っている青年と、その知り合いの青年がどうやら日本円にして50円を巡り揉めているようであった。
そんな小さい額で揉めている青年達よりもシュタインには気になる事があった。
アフリカマイマイだ。
アフリカマイマイがずっとキョキョと罵られる金髪の彼のおでこについているのだ。
((あれはフィリピンでのファッションなのかッ))
彼の疑問にはすぐに答えが出た。
「なぁなぁあのさ、あのさ、てめぇのそのデコに乗っけてる気持ちわりーモノはなんだぁ?」
「これはアフリカマイマイです。」
「んなこたわかってんだヨォ!!!俺が聞きてェのは''何でそれを付けてんのか''って事なんだよぉ!?わかるダルォ!?」
「いえ、解釈の妥当性について述べさせて頂くのであれば''デコについているモノはなんだ''との質問に、そのものの名称を答えるのは当然。よってわかるだろと罵られる筋合いはないのです。」
「ぐぬぬぬ、、てってめぇ!!ー!!!ーー!」
彼は持っていた空き瓶を振りかぶる。シュタインがとても止められる距離ではない。
「やめた方が身のためです。これは僕のことを守ります。あなたに僕を殴るということは''あなた自身であなたを殴ること''になりますよ。」
!?!?
「なにをいってんだぁ?じゃあさじゃあさ、その可愛いペットごと地獄に堕ちやがれェ!!!」
グニョワォン
どういう仕組みなのかシュタインはさっぱり分からなかったが、それがスタンド能力であることだけは分かった。彼の瓶が金髪の青年のデコに、いや正確には''デコについているアフリカマイマイ''に触れた瞬間、彼の後頭部が、掬い上げた蒟蒻のように揺れ動きながら窪んだのだ。
驚きのあまり声の出ないシュタインと崩れ落ちる青年に日光が眩しく刺す昼下がり、シュタインは金髪の青年と目を合わす。
To Be Continued⇒