淫魔族最後の男の現状報告
一応、本日も二話投稿の予定です。
その報告を聞いた途端、テイルさんは顔を強張らせた。
「エイルさん、詳しくお聞かせ願えますか」
俺は、頷いてから詳しく状況を説明する。
「村の南東に、この魔力の含み方なら多分地脈ですからきっと洞窟がありますよね?」
「え、ええ、そうですね。たまに魔物討伐者の方が潜っていかれることがあります。」
「結構深くないですか? その洞窟」
「ええ、聞く限りでは、ただ歩くだけでも虱潰しに探索する為には半日ほどかかるらしいですね」
やはりか。これはなかなか不味いな。
「今現在、かなり弱めではあるものの魔物が相当な数洞窟で群れています。その中でも一番マシなこの反応は、ああ、ハイオーガですね」
「ハイオーガ!? 迷宮ならともかく、村にそんな物が出たらもう助かりませんよ!?」
さすがにこの情報には焦りだすテイルさん。まあ、亜人族ならこれはきついだろう。
「それにゴブリンとそのもどきみたいな物と、あと獣のような魔物も多いな。あとこれは……いや、数えるのが面倒臭いですね」
「か、数は!? それと、攻めて来るのですか!?」
「落ち着いてください。この数は確かに異様ですが、ここまで大きくなっていて攻めてこないなら向こうもそれなりに目的があるんでしょう。ただ……」
「ただ……なんです?」
最初の言葉で安堵したのにその後の接続詞で不安にさせてしまったテイルさんに申し訳なく思いながら、それでも伝えなければと口を開く。
「この魔物の数に対して、ここら一帯で捕れる獲物の数はそう多くない。そうなると、明らかにかなりの魔物が飢えることになる。それはつまり、動物以外の物で飢えを満たすことが前提という事です。そしてその対象は……おわかりでしょう?」
それを聞いたテイルさんは顔を蒼白にして膝から崩れ落ちかけた。
それをレミルがなんとか支える。
「ど、どうすれば……」
「現状で取れる手は三つですね。一つ、大きな街に連絡を入れて応援に来てもらう。一つ、この村から可及的速やかに避難する。どちらかはとれませんか?」
テイルさんは深く唸った後、首を振る。
「そこまでの敵だと、一番近い町の応援程度では太刀打ちはできないでしょう。ここから逃げるにしても、いざ逃げられたとしてもその後の暮らしのことを考えるとまともに暮らしていけると思えません……」
そう言ったきり反応がなくなったテイルさん。
……ん、あれ。俺、三つってちゃんと言ったよな?
ここまでスルーされると、だんだん不安になってくる。
そして、もう仕方ない、言い直そうと思ったその時、レミルが言ってくれた。
「あの、今あなたは三つと言いましたよね? あと一つは?」
覚えてくれていたか、いや良かった。正直自分で言い直すのは勘弁だった。
「まあ、他の人に言いふらさないで頂きたいとか、やり方に文句を挟まないで頂きたいとかありますが、現状一番何とかできる可能性が高い物ですね」
この言い方なら流石に気づくだろう。現に二人ともこちらに驚いた顔を向けている。
「それは、まさか……」
「はい。そうです」
そう。所詮集まっているのは俺にとっては有象無象でしかない。
であるならば、この方法が一番早い。
「俺が何とかします」