淫魔族最後の男の初遭遇
今日ももう一話投稿する予定です。
さて、人間界の村へと渡り、そこから人目に付かないよう、バレるリスクを減らすべく境界から遠ざかるように移動して半日。
そこそこ人が多く住んでいて、尚且つ魔法で自分の姿を偽っていると思われる動きをする者がいなくなってからいくらか経った場所。
それほど規模の大きくない村に着いてから、まず井戸端会議しているおばさん達に話しかける。
まずは情報収集と自分がこの村に滞在する理由が欲しい。
「すみません、旅をしている者なのですが、この村に宿はありますかね?」
おばさんAが答えてくれる。
「んん? 旅人かい。珍しいね。この村は大きな街などは近くにないからね。宿はここらにはないよ」
「そうですか……。それでは、私はそこそこ腕が立ったり魔法が使えたりするんですが、それを使っていくらかこの村にいられませんかね?」
「おや、可愛い顔して腕が立つのかい。そうさね、村長に相談してみるといいよ。そこの一番大きい家に行くといい」とおばさんB。
「そうですか、ならそうさせてもらいます。情報有難う御座いました」
おばさん達に感謝を告げ、一番大きな建物、即ち村長の家へと向かう。
そこまで離れている訳でもなくすぐにドアの前に立ち、少し大きめにノックする。
「すいません、旅の者です。少々腕が立ったりしますので、それを活かしてこの村に滞在できませんか?」
そう言ってしばらくしてからドアが開いた。
さて村長とご対面……と思ったら、目の前に立っていたのは、長い金髪と青い目の女の子だった。年は十五、六だろうか。
ん? と思っていると、その子が話しかけてきた。
「あ、の……、祖父はいまザトルさんの所にいます。もう少しで帰ってくるので、お待ちしてもらえますか」
おや、村長は家を出てるか。じゃあ、少し待たせてもらおう。
「じゃあ少し待たせてもらおうか。あ、君の名前を聞いてもいいかい?」
人間界で初めての子を成すのに適齢な女性である。ある程度の印象の楔を打ち込んでおくに越した事はない。
「人に聞くときはまず自分から名乗るものではないですか?」
む。確かにそうだ。いや、気が急いたな。
「ごめんごめん。俺はエイルだよ。サミラド村の村長の下で育ったから、エイル・サミラドかな? じゃあ、君の名前は?」
言い直してから問い直したら、その子は首を傾けた。
「『人に聞くときはまず自分から』とは言いましたが、『名乗ってくれたら私も答える』とは言っていませんよ?」
まさかの返答である。これは困った、と顔を固めてしまった俺を見て、彼女は「クスリ」と可愛らしく笑って言った。
「……冗談ですよ。ごめんなさい、からかってしまって。レミルです。デューネ村の村長の下で育ってるので、レミル・デューネですかね?」
おや、からかっただけか。かなり落ち着いた様子だったが、お茶目な部分もある子らしい。けどもこの冗談のおかげで随分と場の緊張が緩んだ。
「そうか、この村にいくらかいられるようになったらよろしくね」
「はい、その時はよろしくお願いします」
茶目っ気はあるが、第一印象に違わず落ち着いた子である。その子にお茶を入れてもらって、少しほっとしながら村長を待った。
今日ももう一話投稿する予定です。
お腹痛い……。