第四章(26)
今回も、お立ち寄り頂きまして、ありがとうございます。
今回は剣術競技団体戦の話になります。
よろしければ、今回も最後までお付き合い願います。
作戦と言うか、僕らの戦い方の方向性が決まったところで、リリーが、2戦目の魔法士養成校は、多分、星取戦を挑んで来ると思いますので、その場合エドワード以外の選手は、確実に圧倒的な強さを見せ付けて勝利した上で、エドワードは、しっかりと時間を掛けて切り結んでの勝利が宜しいと思います!
リリーの案に納得だけど、女性陣でも、強いと判ると挑んで来るかも知れないが、それならそれで、マリーとリリーが何とかしてくれるだろうから、少し気が楽になった。
中央ステージでの、騎士養成校と、魔法士養成校の試合は、星取戦で騎士養成校が、5―0で勝利し僕達の出番になった。
試合会場の中央ステージに上がると、既に対戦相手の付属校は、集まっており、その出で立ちを見ると中々鍛え上げられているのが感じられた。
逞しい体躯に精悍な顔付き、それに比べると、うちは、可憐で美しい少女達と僕。
何も知らなければ、付属校が圧倒的に有利に思うだろう、しかし、うちの選手は、ハク姉ちゃんの教えを受けたマリーとリリーにクリスティーナがいるし、シャルロットは、合宿中に最も実力の伸びた1人でもある。
でも、この試合、戦うの僕1人だけどね。
試合開始線に両校の選手が並び挨拶をするのだが、一度整列をしたところで、審判に僕以外の選手は棄権して僕1人で試合を行うと告げて相手校と礼を交わしコートの外に出た。
相手校を見ると、明らかにナメられたと言う感じに全員が、僕を睨み付けている。
試合が始まると、まず、先鋒同士開始線に並び、一礼をして、審判が不戦勝で付属校の勝ちをコールする。
その後、付属校の先鋒は、開始線に残り総合学園の次鋒が開始線へと向かい、再び一礼。
そして総合学園の副将迄が不戦敗のコールを受けて、いよいよ僕の出番となったのだが、そのころには、最初に試合を済ませた、騎士養成校と魔法士養成校の代表選手が、中央ステージ横に集まり、僕達の試合を観戦していた。
付属校との試合は、刃を落としたブロードソードを持ち盾は持たずに臨んだ
付属校の先鋒と一礼すると、待ちくたびれたぜ!
といわれたので、審判に、
「私語は、慎みなさい!」
と注意されていた、そして試合が始まり、果敢に攻めて来る付属校の先鋒の攻撃をのらりくらりと交わしながら、たまには攻めなくちゃと思い、相手の剣を払い軽く打ち込むと、何故かいきなり決まってしまった。
考えてみれば、全然太刀打ち出来ないと言いながらも、ハク姉ちゃんと練習したり、世界樹の森で、近衛騎士達と剣を交えていたのだから、同じ学生が相手なら、遅れを取る事などまずない、相手の力量をもう少し下方修正した方が良さそうだ。
そして、次鋒戦、先鋒よりも少し長引かす事を考えながら、ぼちぼちと相手するも、どうも先鋒の選手よりも弱いので、痺れを切らせて、先鋒の選手と同じ位の時間で、終わらせた。
中堅の選手は、先鋒の選手よりも強かったので、少し時間を稼ぐ事が出来た。
そして副将戦、足を使って撹乱して相手の隙を突くタイプの選手だったので、ゆっくり時間を掛ける事が出来た。
ここいらで、少し疲れた振りをしながら大将戦に臨むのだが、この大将が付属校のポイントゲッターだった。
確かに新人の近衛騎士程の強さを持っているし、先に戦った4人と比べると実力にかなりの開きがあるのだが、練習で剣を交えたアナスタシアさんよりも実力的に劣る位だ、あれっ?アナスタシアさんって、かなり強いんじゃないか?そう言えば、クリスティーナも校内では、トップクラスだ、世界樹の森のメイド達の中では、リリア、アンナ、クリスティーナの3人が一番弱いと聞いていたのだか、うちのメイドって凄く強い?
そんな事を考えながら、付属校の大将の剣を捌いていたが、そろそろいいだろうと、胴を抜いて試合を終わらせた。
次は、そのまま魔法士養成校との試合なので、そのまま残り、相手校を待っていた、リリーの読み通り、星取戦を指定してきたので、今回は、女性陣に頑張って貰う。
結果見事に全員、秒殺で試合を終わらせ、大将戦は、次が勝ち抜き戦なら、また僕が1人で戦うのでと、騎士養成校にも聞こえる様に、審判に告げて棄権させて貰った。
ステージの下で観ていた騎士養成校の選手達が、僕を睨んでいたので、多分、餌に食い付いたのだと、確信した。
続く騎士養成校と、付属校の試合は、勝ち抜き戦で行われたが、僕達は、試合を観戦せずに、控室に戻った。
控室では、スカーレットちゃんが、ご苦労様と、皆を労ってくれたけど、僕の試合が、ドロ臭かったと愚痴をこぼしたが、リリーが騎士養成校が勝ち抜き戦を選ぶ様に、演技した事を説明してくれた。
「じゃあ、騎士養成校相手で、エドワードお兄ちゃんの本気が観られるのね!」
そう言って瞳を輝かせるスカーレットちゃんに、
学生相手に本気は、出せないけど、実力差を見せ付ける事は出来るから、楽しみにしてね!と言っておいた。
騎士養成校と、付属校の試合を見に行っていたヴァネッサが、結果を教えてくれたのだが、先鋒が引き分けた後、騎士養成校の次鋒が2人勝ち抜き副将と引き分け、付属校の大将が騎士養成校の中堅に勝った後に騎士養成校の副将と引き分けて、大将1人残して、騎士養成校が勝利を修めた。
果たして、騎士養成校は、勝ち抜き戦を指定してくれるのだろうか?
付属はとの試合の話を聞いただけなら、付属校より、ほんの少し強い位かなと思ったのだけど、実際に観ていないので、何とも言えないが、勝ち抜き戦か星取戦か、どちらを選ばれても勝てるはず!
そう信じて僕達は、中央ステージに浸かった。
開始線に整列すると、騎士養成校の大将が、
「君達は、勝ち抜き戦か星取戦か、どちらの方がいいのかな?」
「うちは、どちらでも構わないですよ、お客様は、どちらが観たいのかな?女の子に負ける姿か、僕1人に全滅する姿か?」
「よし、いいだろう、勝ち抜き戦で、君1人を倒して我々が勝利を手にする事にしよう!」
「僕は、君達の進言で、選手から降ろされた、スカーレットちゃんの鬱憤を晴らす事にさせてもらうよ。」
そう言って、今回は、刃を落とした刀を腰に帯刀して試合に臨み、僕以外ステージから、降りてもらい、最初から大将の僕が相手をすると、審判に告げて試合を開始してもらう。
先鋒戦は、開始直後に踏み込んでの居合い抜きで、先鋒の選手の胴を横一閃に薙ぎ払い、ものの1秒で試合を決した。
続く次鋒戦も、全く同じ様に決まったので、
「君達、全く同じヤられ方とは、芸が無いなぁ!」
と残りの選手を挑発した。
僕自身、同じ事を後3回繰り返し全員倒す事等容易に出来ると思っているが、それでは単調過ぎて、観てる観客もそうだが、僕も面白く無い。
何より、全員同じ倒され方では、騎士養成校も立つ瀬が無いだろう。
挑発した事で、頭に血を昇らさずに、純粋に闘志を掻き立ててくれれば、もう少しぼくも楽しめると思う。
そして中堅戦は、開始と同時に相手選手が素早い連続攻撃を仕掛けてくれたのだが、単に頭に血が登り冷静さを欠いただけだったので、攻撃と攻撃の繋ぎのところで、素早く距離を詰め、拳で頭を殴り気絶させた。
続く副将の選手は、中性的なイケメンのミシェル・リンドバーグと言う選手が、
「君は、剣以外の格闘術もいけるみたいだね。」
と、尋ねてきたのだが、声を聞いてミシェル選手が女性であると気付いた。
「一応、何種類かの格闘技を修めているけど、それがどうしましたか?」
「なぁ!良かったら、僕との試合、剣を使わなくてもいいかい?君は、剣を使ってもいいからさぁ!」
「じゃあ、僕も徒手空拳で相手をしよう!」
「嬉しいねぇ!やっぱり男同士の決闘と言えば、素手の殴り合いが一番だよね!」
「男同士って君、女の子じゃないの?」
「僕は、誰かに負ける迄は、男の子でいられるんた!(笑)」
ん?どう言う事?
「何を言ってるのか、意味が全くもって解らない。」
すると、審判さんが、
「そろそろ、お喋りを終わらせて貰ってもいいかな?」
「分かりました、後少し待って下さい。」
そう言って、試合用ステージの場外に刀を置いてきた。
試合開始の後、お互いに出方を伺っていたのだが、自然体で構えを取らない僕に対して、
「君な、何故構えを取らないんだ?」
「済まない!後の先狙いだったから!」
と素直に自分の手の内をバラしてしまった、そして、
「そうか!それなら納得だ、こちらから攻めてやろう!」
ん?相手の手の内を聞いて、お構い無しに突っ込んで来るとは余程自信が有るのかバカなのか?
踏み込んで来るミシェル選手に何故かヘレンさんを感じ距離を詰めて打撃を封じた。
「よく分かったねぇ、今の攻撃、防ぐには、前に出るしかないんだよ。」
「なんとなくだけどね、知り合いの夫婦喧嘩を思い出したんだ。」
「夫婦喧嘩?」
「そうなんだ、そこの奥さんの打撃が半端なくって、旦那さんは、殴られそうになると、今みたいに前に出て、打撃を封じて奥さんの唇を奪って喧嘩を収めるんだよ。」
「くっ、唇を奪おうとしたのか?君は!」
「いや、攻撃を封じただけで、キスなんかしようと思ってないからね!」
「君がもし、僕に勝てるなら、僕の唇ぐらい奪わせてやる!」
「いや、そんな事は、望んでない!」
「何?じゃあそれ以上の事か?」
ダメだミシェル選手、人の話を聞かない人だ。
早く試合を終わらせないと、もっと面倒な事になりそうだ!実際、今の状況も面倒なのだが………
こちらから一度距離を取ると、殴り掛かって来たので、その手首を掴み、後ろ手にひねり上げ、空いた腕をミシェル選手の首に回してチョークスリーパーで締め落として決着を付けた。
試合を決した後、カツを入れて目覚めさせると、
辺りを見回してから僕に、
「負けてしまった様だな、僕が気を失っている間に唇を奪ったり、口に出せない様な事も済ませたのだろう?」
「いいえ何もしていません!」
「分かった、君は……抵抗された方が燃える性癖なんだな!」
「そんな事有りません!」
「じゃあ、どうすれば君を喜ばす事が出来るんだ?」
「取り敢えずは、試合が終わったので、ステージから降りて、次の大将戦をさせて下さい。」
「何ステージの下でするのか?」
「いいから黙って下さい。」
埒があかないので、お姫様抱っこしてステージの下に降ろして大将戦に臨んだ。
「まさか素手でミシェルに勝てるとは、思わなかったぜ。」
「あの娘そんなに強いのか?」
「ああ、恥ずかしながら、うちでは一番強い。」
「あまり人の話を聞かなかったけど、いつもあんな風か?」
「いや、多分、お前の事を気に入って暴走したのだろう。」
「エッ?」
「お前、まだ本気になって無いだろう!俺は、お前の本気を見てみたい!」
「分かった、特別に見せてやろう。」
そして、試合開始の合図が掛かった瞬間、騎士養成校の大将の首に刀が触れていた。
「全然見えなかったぜ、強いなお前!」
「ああ、世界で一番強い女性に教えてもらっているからな。」
「俺も鍛えれば、お前の様になれるのか?」
「僕は、5つの頃から鍛えて貰っている、君も努力次第で、自分を誇れる強さを身に付ける事が出来ると思うよ。」
「そうか!お前の本気を見れて勉強になったせ、俺の名前は、ルドルフ、ルドルフ·ラングレンだ!良かったら覚えておいてくれ!」
「ああ、分かった、僕の名前は、エドワード·ブライトリング、実は僕も王族の端くれだ(笑)」
「エッ?君も王族だったのか。」
「ああ、そう言う事だ、この国の王族の剣の腕は、中々のもんだよ、もちろんスカーレットちゃんも、実力で代表に選ばれたのだからね。」
「それは、悪い事をした、俺達は、あまり関係無いけど学校の教師陣が、王女様に怪我をさせてはと、騒いだから、仕方なかったんだ。」
「彼女は、怪我なんかしないよ、強さは僕が保証する、何と言っても、僕の妹弟子たからね(笑)」
「そうか!今日は、君達に完敗だ!」
こうして、団体戦が終わり、騎士養成講習会の大将とは、少し解り合えたが、副将のミシェルさんの視線が僕から離れないのが気になって仕方ない。
これで3種目全てトップで競技を終え更にリードを広げる事が出来た。
今回も最後まで、お付き合い頂きまして、ありがとうございます。
団体戦の結果ですが、全然ひねりが無かったのですが、名前の明らかになった2人は、今後の話にちょくちょく登場します。
それでは次回も、お付き合い頂けると、幸いです。