第四章(19)
嫌な予感は、確実に当たるモノで、合宿2日目の朝、シェーラ姉ちゃんが、
「エドワード、早くしないと、朝御飯、間に合わないわよ。」
と、起こしに来てくれたので、朝食を食べようと思ったら、作る方だった。
よくよく辺りを見回せば、外は、まだ、夜が開けきっていない。
シャキッと目が覚めた筈なのに、辺りの景色が暗いと、もう一度、蒲団に戻りたくなる。
しかし朝は、リリアが、手伝いに来てくれた。
思わず、リリアの手を握り締め、御礼を言って、アリスは、来ないけどリリアが来てくれて嬉しい等と言うと、合宿の練習が、かなりハードなので、アリスと日替わりで手伝いするから、明日はアリスの番と言われ、彼女達にも、あまり負担をかけるのは、良くないと思った。
誰か手伝いは、いないのか?そう思った時、常に暇そうな者を思い出したので、この祭だから、猫の手を借りるつもりで、手伝って貰おうと、起こしに行く。
この森に来てからツリーハウスに引き込もっている、ソフィアさんだ、スカーレットさんが、あれ程、万能だから、妹のソフィアさんもスカーレットさん程ではないが、そこそこ役に立つのではと思い呼びに行くと、眠い目を擦りながら、来てはくれたのだが、ハッキリ言って役立たずだった。
普段なら、考えられないのだが、あまりの苛立ちと、眠気で、姉のスカーレットさんを叩き起こし、ソフィアさんの愚痴をぶちまけてしまった。
後々考えると、とんでもない事なのだが、その時、僕は、眠気と苛立ちで、どうかしていたのだろう。
スカーレットさんに、ソフィアさんのコーチを頼み家事を叩き込んで欲しいと頼んでしまった。
この事が原因でソフィアさんは、後々プロフェッショナルなハウスメイドに大変身するのだが、この時は、睡眠を邪魔された怒れるスカーレットさんが鬼に見えてしまい、スカーレットさんに対して少しのトラウマを覚えてしまった。
ソフィアさんを罵りながら、仕事を指示し時に鉄拳制裁も厭わない姿は正に鬼だったのだが、仕事をやり終えた後の、ソフィアさんを労う姿は、鬼ではなく、鬼コーチ若しくは、鬼教官か、鬼軍曹と言った感じで、本当にソフィアさんの今後を思いやっての、愛の鞭だったのだろう。
この日以来、ソフィアさんと、スカーレットさんの姉妹コンビ?いや師弟コンビが合宿メンバーの朝食を作る手伝いをしに来てくれる様になり、僕の負担が少し減ったのは喜ばしい事なのだが、スカーレットさんと、ソフィアさんの姉妹には、申し訳のない事をしたと、朝、顔を合わせる度に思ってしまう。
更にスカーレットさんは、合宿メンバーの炎属性の練習も見て、的確なアドバイスをしてくれるので、学生達からは、美人コーチと呼ばれ、少々困惑している姿を見かけて、森の大人達がニマニマと笑っているのには、少し笑えた。