第四章(14)
今回もお立ち寄り頂きまして、ありがとうございます。
今回は、アレイシアさんとアレックスさんの事を少し掘り下げました。
アレイシアさんの家が完成した夜、やはり宴会が行われた。
アレイシアさんの家の完成記念ならびに、葛之葉さんの歓迎会という名目で、王城から、前王のマークさんと、宰相のケインさんがわざわざやって来たのだが、ケインさんは、もうすぐ宰相の職を退任するとあって、引き継ぎやらで忙しいはずなのに大丈夫なのだろうか?
心配になって尋ねてみると、
マークさんが、
「たまには息抜きさせなければ、こやつが倒れてしまいそうだから、無理矢理引っ張って来た。」
そう言われてケインさんは、頭を掻きながら、
「いや~、我ながら、早く肩の荷を降ろしたくて、根を詰めすぎまして、兄上に心配を掛けてしまいました。
でも粗方の仕事は済ませてしまいましたから、後は、任期一杯のんびりと出来るので、心配には及びません。」
ケインさんは、少し疲れた感じながら、表情は晴れやかだった。
「アレックス父さんに、面倒事を押し付けてませんよね?」
僕の問い掛けに、ケインさんは、笑いながら、
「アレックス様なら、大丈夫です。
ハッキリ言って、私や兄上よりも有能な方ですから、兄上の様な御調子者が、名君と讃えられているのも、全てアレックス様のお陰なのです。
彼の御仁は、兄上の先々代の国王が退位して壮年に成られてからの子供で、王位継承権こそ末席でしたが、あらゆる英才教育を受けて、政治・経済から剣術に至るまで、現王族で最も優れた方なのですぞ。」
「えっ?お父さんってそんな凄い人なの?」
「そうじゃ、アレックス殿は、マリウスの、剣と勉強の師なのじゃ。
武闘祭でマリウスが名乗った第八師団とは、アレックスが最初に武闘祭に出る時に勝手に作り上げた架空の部隊じゃ、もっとも第八師団として、武闘祭に出場したのは、アレックスとマリウスしかおらんが、2人共優勝経験があるのじゃぞ。」
「へぇ~お父さん、そんなに強かったんだ!」
「エドワード君、君の父上は、剣の腕も去る事ながら、頭の方は、更に凄いんだ、この国一どころか、大陸一と言っても過言ではない程なんだ。
元々、彼を宰相にしたかったのだが、没落寸前の侯爵家に婿養子になった事で家を立て直すために、力を尽くしたいと断られたのだが、宰相に成れば家も力を取り戻すと、お願いしても、それすら断られたんだ。
でも、エドワード君が産まれた直後に公爵位になり、この程、やっと宰相の任を受けてもらえる事になったんだよ。」
ケインさんは、どうやら前から僕の父さんを宰相にしたかったらしく、この度、宰相の任を受けてもらえたお陰で、この国はもっと良い国になると、安心しているようだった。
そうしているうちにも、宴会は盛り上がってゆき、ほろ酔い加減の葛之葉さんか、
「良い名を考えてくれたか?」
とやって来たので、まだ悩んでます。
と答えると、早く考えておくれ!とアレイシアさんの所に戻って行った。
ケインさん達との話しが一通り終わったので、話し相手を求め周りを見回すと、ハク姉ちゃんがお酒を飲まずに1人でもくもくと食事をしていたので話しをしに行く事にした。
「ハク姉ちゃんのお姉さんのアレイシアさんって神属じゃなくてエルフなの?」
「お姉さんですか?今はあまり力を持っていませんが、一応は神属ですよ、エルフではありません。」
「じゃあ何故エルフと一緒に居るのですか?」
「それは、昔、私の生まれた国で鬼神が暴れていた頃、私の姉を何人か鬼神の被害の及ばない所へ転移させたの、アレイシア姉さんは、この大陸に飛ばされたのだけど、誰も居ない深い森の中に飛ばされて、姫として育てられた姉さんは、1人で何も出来なかったから、持てる力を使って、異世界から、自分の従者となる人間を50人召喚したの、それが、この世界のエルフの祖先達なのよ。
そして、姉さんは、エルフがこの世界で暮らせる様に、精霊や妖精に力を借りる方法等を授け、彼等の長として、アルブフォレストを発展させていき、今に至るといった感じかしらね。」
「そうだったんですか、でも、ハク姉ちゃんの他のお姉さん達も、まだ何処かに居るんですか?」
「大半の姉達は、人として、生涯を終える道を選んで、人として、輪廻の輪を廻ぐる旅をしているのだけど、連絡が取れないままこの世に留まり続けている姉もいるし、他の大陸に、連絡の取れる姉が、あと2人居る位ね。」
「ハク姉ちゃんは、他のお姉さんに会えなくて寂しくないの?」
「えぇ、寂しいと思った事ないわよ。
ここには、エドワードや、兄様、そして、色んな仲間が居るし、天界にも、私を退屈させない仲間がいるからね、それに、連絡の取れる姉様達は、たまに転移して会う事もできるから、心配しなくても、私は、寂しくないわよ。」
「それなら良かった、僕の思い過ごしたったみたいだね。」
「エドワード、貴方のそんな優しさが、今は、心地良いのよ、多分、それは、マリーやリリー、グレイシアにジャニスもそう思ってるとおもうわ。」
そこまで言ってハク姉ちゃんは、食器を下げるとゴールディさんやマークさん達に交じり話しをしだしたのだが、様子を見ていると、何やらチラチラと僕の方をチラ見している。
嫌な予感がしてならない、前に実習の講師にされた時にも同じ様に、チラ見されていたのを思い出し次は何を言われるのか不安になった。
宴会の途中で、集会所の大浴場でお風呂に入り宴会場に戻ると、マークさんが、
「もうすぐ、他校との競技会があるので、エドワード達に期待しているので頑張って欲しい。」
と声を掛けられた。
話しを聞くと、年度末に、他校を招き、実習授業の錬度を競い会う大会らしいのだ。
参加する学校は、騎士養成校と、魔法士養成校、僕達の通う王立総合学園に、国立大学附属校の4校が参加し、毎回成績が振るわなかったらしい。
それもその筈、他の学校は、剣や魔法の専門校だし附属校に至っては、早いうちから適性を見極めそれを伸ばす為の専門教育をしている。
それに、引き換え、僕達の学校は、オールラウンダー養成を念頭に置いているが、実際のところ、僕が言うのも何だが、実習授業の講師の質があまり良くない、オールラウンダーどころか、広く浅くと言うかんじだ。
マークさんが僕に講師の仕事を押し付けたのも、その辺りに理由があるのだろう。
試合形式の競技もあるらしいのだが、そんな競技に僕が出てもいいのか少し疑問に思うが問題無いなら頑張ろうと思う。
まぁ、今から考えても仕方ないので、その時になったら考える事にした。
最後まで、お読み頂き、ありがとうございます。
さて次回の話しは、学校で競技会に向けての話しになります。
また、次回のお立ち寄りを、お待ちしております。