第四章(10)
今回もお立ち寄り頂きまして、ありがとうございます。
第三章の誤字の修正と第四章(9)の加筆をしました。
宜しければ前回の加筆から、目を通して下さいね。
ハク姉ちゃんに、新たに魔法を習得したいと、話しに行くと、まず、時空魔法についてレクチャーされた。
本来、時空魔法とは、時間魔法と空間魔法の別々の魔法であって1つの魔法ではないのだが、収納魔法の様に、収納空間を作り内部の時間を制御する時間魔法を組み合わせる事が有るために、1つの魔法として混同されやすいのでその辺りを説明された上で、幾つかの空間魔法を教えてもらえた。
その中には、前々から覚えたかった転移魔法も有ったので、少し嬉しくなったのだが、ハク姉ちゃんが言うには、初歩の空間制御から、順番にステップアップしなければ、転移の制御が出来ないそうなので、マスターするのには、少し時間が掛かりそうだ。
ちなみに空間魔法の基本となる制御は、空間を作り出す、空間を分割する、空間を繋げる、の3つの制御方法をマスター出来れば、転移魔法が使える様になる。
時間魔法については、制御方法が空間魔法に似ているらしいのだが、更に制御が難しいらしく、完全に空間制御を覚える必要があるらしい。
先ずは、空間制御で異空間を作り出す事から始めることにした。
それと同時に、聖属性の魔法の治癒系の魔法と浄化系の魔法を教えてもらったのだが、これに関しては、元々の相性が良かったみたいで、すぐに覚える事が出来た。
聖属性の魔法をマスター出来れば、光属性の魔法を覚える事が出来るらしく、ハク姉ちゃんの眩しい光を放つ転移魔法は、空間魔法ではなく、上位の光魔法なのだそうだ、空間転移と光転移の違いは、発動に要する時間、空間転移では、術式を組み上げなければならないが、光転移では、術式を組む必要がなく、思っただけで転移が出来る優れた魔法らしいのだが、さらに、空間転移では、1度訪れた場所にしか転移出来ないのだが、光転移では、念話の相手の場所や、大まかなイメージで転移出来るらしいのだ。
それを聞いて、ハク姉ちゃんの神出鬼没ぶりに納得出来た。
その日のうちに、異空間を作り出す事が出来る様になったので、空間系の結界を組む練習を始めるのだが、これがなかなか上手くいかない。
普通の結界は、イメージとしては、透明の硬い箱の様な物で、結界の強度を越える衝撃に対して、破る事が出来るのだが、空間系の結界は、空間を切り離す事で、衝撃の伝達を止めてしまうので、破るためには、空間制御で術に介入するか、空間魔法による多次元からの攻撃、光魔法しか無いらしい。
なかなか上手く結界を制御出来ない僕を見て、ハク姉ちゃんが、この制御が自在に出来る様になれば、空中に結界を固定して、空中を歩く事が出来ると教えられたので、俄然やる気が出たのだが、やはり上手く結界を制御出来ないので、やけくそで、空中に足場をイメージすると、何故か空中を歩く事が出来た。
それを見ていたハク姉ちゃんが、普通そっちの方が難しいのに何で?と首を捻っていたけど、多分こちらの方が、しっかりとしたイメージを描き易かったからだろう。
ここで一つ解った事なのだが、結界の時は、術式を組む事ばかり考えていて、術の完成形のイメージが疎かになっていたのだ、だから、空中を歩くと言う分かりやすいイメージの方が先に成功したのだろう。
気を取り直して、改めて結界を組むと、すぐに成功した。
結界が安定して組める様になれば、空間を切り繋ぐ事の練習を始めた。
イメージとしては、結界の幅を一方向に伸ばしていき、トンネルを作り出し、その両端の空間を繋げる感じで行う。
ある程度目で見える距離で、これが成功すれば、今度は、トンネルの端に、行った事のある、場所に繋げる事が出来れば、空間転移の魔法が使える。
ここまで習得するのに、2週間掛かったのだが、その間に20回程、魔法の実習授業を受け持った。
この学校の魔法講師は、魔力量の増やし方を教えていなかったので、最初の授業で、生徒の魔力を使いきらせたので、魔力切れを起こして気分を悪くした生徒が続出したのには、マークさんをはじめ、多くの先生方に苦情を言われ、講師を兼任し始めてから初めての始末書を書く羽目になった。
しかし、その後、多くの生徒から、魔力量が増えたと感謝される事になる。
中でも、最初に魔力量の増やし方を教えたシャルロットさんに至っては、父親から感謝状まで届き、他の魔法講師達から、魔力量を増やす方法のカリキュラムの制作を頼まれたのだが、その全ての講師が苦情を言ってきた講師だったので、丁重にお断りさせてもらった。
そんなある日、世界樹の森に、呑みにきたマークさんが、魔法講師達から魔力量の増やし方を教えてもらえないと苦情が来てると言われたのだが、既に生徒に教えているので、どうしても知りたいなら、生徒に教えを乞えば良いとマークさんに伝言を頼んでおいた。
少し意地の悪い気もするが、最初に苦情を言われた時に、講師の資格が無いとか、辞めてしまえ!等散々酷い事を言われたので、その謝罪も無しに結果が出たから、メソッドをよこせと言うのは、虫が良すぎるのではないか?とマークさんに心情を話すと一応、納得はしてくれたのだが、その話しを横で聞いていたハク姉ちゃんが、エドワードに酷い事を言った講師達を殴りに行くと言い出した時のマークさんの顔が忘れられない。
ハク姉ちゃんに頼み更に魔法を教えてもらおうと、お願いすると、転移魔法の発動にどの位時間が掛かるか聞かれ20秒程掛かると教えると、5秒で発動出来る様に成ったら教えると言われ、練習の為にジャニスに乗せてもらい王国内の大きな街の幾つかに連れて行ってもらい転移を繰り返した結果10秒に短縮出来た。
だが、それ以上短縮出来ないでいた。
休日の度に、ジャニスに乗って転移魔法で帰って来るのを繰り返し行っているのを聞き付けたシェーラ姉ちゃんが、アルブフォレストに連れて行って欲しいと言ってきた。
アルブフォレスト、シェーラ姉ちゃんとシーナさんの故郷、そして神聖樹を祀るエルフの巨大集落。
シェーラ姉ちゃんの頼みを引き受け、2人でジャニスの背中に乗ると、リリーが私も行くと珍しく自分からやって来た。
「今日はマリーと一緒じゃないんだ。」
「最近エドワードが、転移魔法を覚えたから、マリーも魔法の特訓するって言ってた。」
「そっか!じゃあ一緒に行こう。
ジャニス、場所わかる?」
「エルフの集落は、行った事がない。」
「私が案内するから、先ずは西に向かって。」
2時間程飛んだだろうか?大きな樹が見えてきた。
「あの樹の周りが、アルブフォレストよ!」
シェーラ姉ちゃんが説明すると、ジャニスが、
「エドワード、手間を掛けて悪いが、結界を張ってくれないか?
エルフの集落の近くを飛ぶと、よく矢が飛んで来るんだ。」
分かった!と返事をした時には、既に一本の矢が放たれジャニスの頬をかすめていた。
僕達が乗っているので、急な動きを避けて、首を動かすだけで避けようとしたからだ。
僕は、結界を張りながら、
「ジャニス、あそこに降ろしてくれ!僕の大切なジャニスに弓を引くなんて!あの野郎ぶん殴ってやる!」
「エドワード、ハク御姉様に似てきたわね。」
シェーラ姉ちゃんに言われリリーが吹き出しジャニスが、
「私の事は、気にするな、こんなモノ傷のうちに入らない、唾付ければ治るから!」
ならば!と神聖樹が既に見えているので、すぐ近くに転移して、シェーラ姉ちゃんの指示する場所に着地すると、数人の狩人らしきエルフに囲まれたのだが、数人の女性エルフが、シェーラ姉ちゃんを見ると、頭を下げて、シェーラ様、久し振りにございます!と挨拶をするので、男性のエルフ達も、それに習い頭を下げ始めた。
「誰か、お婆ちゃんの所に案内して!」
シェーラ姉ちゃんの言葉に1人の女性エルフが進み出て、
「では、星読みの館へ。」
と先導する女性エルフに続いて進もうとすると、男性エルフが、
「シェーラ様だけだ!」
と僕達を遮ったので、
「シェーラ姉ちゃん、僕達ここで待ってるから、大丈夫だよ。」
そう言ってシェーラ姉ちゃんを送り出して、ジャニスを人化させると、周りのエルフ達が驚いていた。
人化したジャニスの頬に小さな擦り傷が出来ていたので、ジャニスを座らせて、頬を舐めると驚いていたので、
「唾付ければ治るんでしょ。」
笑いながら言うと、ジャニスが赤くなっていた。
日頃あまり表情を変えないジャニスが照れた様な顔をしているのが珍しく、じっと見ていると、バツが悪そうにしながら、更に赤くなった。
「ジャニスもそんな顔をするのですね。」
リリーが笑いながら言うと
「エドワードが、くすぐったい事をするからだ。」
「ジャニスが、唾付ければ治るっていうからだろ、でも、治らないから、治癒魔法掛けたけどね。」
「えっ?いつの間に?」
「ん?舐めた後。」
3人で話しをしていると、シェーラ姉ちゃんを案内した女性が戻って来て、僕達も案内すると言うと、周りに居たエルフ達が、よそ者をアレイシア様の所に行かせる訳にはいかん!と騒ぎ始めたので、
「行ってはいけないなら、僕はここに居るから、用事があるなら、こっちに来れば良いじゃないか。」
僕の提案を聞いたエルフ達は、にわかに殺気立ち弓を構える者も居たのだが、リリーが羽を出して、
「私達を守りなさい。」
声をかけると、イフリートが姿を現し、僕の顔を見ると、何を勘違いしたのか、火の玉を出してジャグリングを始め、僕にどや顔を見せるので、イフリートに向かって右手の親指を立てて見せると、イフリートが嬉しそうに笑った。
その瞬間、僕はイフリートと確かな友情を感じて握手を求めた。
イフリートが困った顔をして、後退りする、多分、ぼくを傷付ける事を恐れているのだろうと思い。
「僕は、フェニックスの加護を受けているから、炎は大丈夫だ!」
そう言って無理矢理握手すると、イフリートが驚いていたが、服の方がイフリートの熱に耐えられず握手した右手の肘の辺りまで燃えてしまったので、空間魔法で火を消した。
リリーが、ポンポンとイフリートの肩を叩き、
「人間の友達が出来て良かったね。」
微笑みながら、言うと僕に念話が届いた
(我は、イフリート、人間の少年よ友情の証しに、我に名前を付けるがよい、さすれば、そなたの生有る限り、何時でも力を貸そう!)
これは、精霊との契約なのかと思っていると、リリーが、
「何格好付けてるのよ!友達に成りたいから、呼び名なを考えて下さいって分かりやすく言いなさい!」
そう言ってイフリートの頭を殴っていました。
普段、世界樹の森では、最もお淑やかなリリーも精霊には容赦無かった。
そう言えば、このイフリート初めて見た時も、何か芸をしなさいとジャグリングさせられていた。
僕は、イフリートにアルバと名前を付けると、火の消えた服の肘に火が着き、その火が服を編むかの様に手首の方へと、服を紡ぎながら進み、燃えた服を再生し終わると消えてしまった。
「エドワード、イフリートと契約が完了したから、もう、イフリートの炎で服が、燃える事もないわよ。」
リリーが、笑いながら教えてくれた。
周りのエルフ達は、僕達のやり取りを見て言葉を失くしていた。
僕達が、なかなか来ないからと、様子を見に来たシェーラ姉ちゃんが、イフリートを見て驚いていたので、友達に成ったと教えると、更に驚いていた。
「貴方達、魔力量20万越えの大魔導師相手に勝てるの?しかもイフリートと契約したみたいだし、その辺燃やされたくなければ、私の未来の旦那様に手を出しちゃダメよ!」
更に固まるエルフ達に目も暮れずシェーラ姉ちゃんは、僕達を引っ張って行こうとするので、イフリートに、用事が有れば呼ぶから今日はここまでだね、と言うと、
(用があれば、何時でも、アルバと声を掛けてくれ!すぐに参上する。)
そう言ってイフリートは姿を消した。
今回も最後まで読んで頂きまして、ありがとうございます。
次回は、シェーラとシーナのお婆ちゃんが登場します。
それでは、次回のお立ち寄りを楽しみにしております。




