第三章(48)
今回も、お立ち寄り頂きまして、ありがとうございます。
第三章は、今回の話しで終了となります。
よろしければ、最後まで読んで下さいね。
何だかんだあったけど、無事に武闘祭が終了し、一度、王城へとやって来た。
ケインさんに指定された部屋に入ると、ハク姉ちゃんが、人型の焔を出して床に魔方陣を描かせた。
「これでよし!皆陣の中に入って。」
ハク姉ちゃんに言われるままに、魔方陣の中に入ると、
「じゃあスカーレットちゃん、軽く魔力を放出してごらん。」
スカーレットちゃんが、魔力を放出すると、魔方陣が発動して、一瞬で、世界樹の森のツリーハウスの中に転位した。
「これで、王城と、世界樹の森の行き来が楽に成ったわね。」
ハク姉ちゃんが、にこやかに言うのだが、エルフの姉妹は、神妙な顔で、
「ハクタイセイ様、いずれ、この地にエルフの集落が出来る予定なのですが、王城と繋げてしまって良いのでしょうか?」
「大丈夫ですよ、貴女方のお婆様の指図ですから、心配ありません。」
「「婆ちゃん、何考えてんだ?」」
「アレイシャの事ですから、きっと良い結果を生むでしょう。」
「師匠、うちの婆ちゃんの事知ってるの?
それに、いつ婆ちゃんと連絡取ったの?」
「ええ、昔から良く知ってますよ。
アレイシャとは、念話でよくお喋りしてますよ。」
「ゲッ!私らの行動筒抜けじゃん!」
「アレイシャは、貴女達の事誉めてましたよ。」
ハク姉ちゃんとエルフの姉妹が2人のお婆ちゃんの事を話してるうちに、集会場に到着したのだが、テーブルセットが整えられ、厨房では、全ての下拵えが終了して、宴の開始を待つばかりだった。
流石としか言い様のない手際の良さは宮廷の料理人である。
宴会開始の音頭をマークさんに頼むと、
「今回の武闘祭も無事に終了したのだが、優勝者は、統べてここに暮らす者と言う結果に驚いています。
ハクタイセイ様やゴールディ様スカーレット様が強いのは、勿論、儂達の知るところで在るけれど、まさか、ニッキーさんやマリーさんアリッサさん、アナスタシアさんグレイシアさんに、シェーラさんシーナさん出場者全員が表彰台に上がり、最年少出場者のエドワードに至っては、三冠王者に成るなど想像もつかなかった事で、この世界樹の森の者達と懇意にさせて貰っている儂等王族としても、この上無く喜ばしい事「父上、話が長い!」こら!マリウス話しの腰を折るでない!」
「いやいや父上、皆は、父上の話しを聞きに来たのではない!
話しは、乾杯の後にして、皆、グラスを持ったか?
それでは、乾杯!」
結局、マークさんの話が長引きそうと、マリウスさんが無理矢理、口を挟み、乾杯の音頭を取ってしまった。
今日ばかりは、うちのメイドさん達も、思い思いに着飾って、宴会に参加しているのだが、隅っこの方でルイさんが何故か暗いので、話しを聞くと、
「私も、一応、表彰台に上がったのに名前を呼ばれませんでした。
私は、そんなに影が薄いのでしょうか?」
と言われて思い当たる節があるのだが、言えばルイさんが可哀想なので、口には出さず、
「今回は、女性陣が頑張ったから、男性は、あまり目立たなかったのかもしれませんね。」
と、無難に答えておいた。
そう言えば、今日初めてアレックス父さんの男らしい振る舞いを見たので、学校の事もあるから、話しに行くと、
「すまん、エドワードつい、私の息子だとバラしてしまった。」
と謝ってきたので、
「気にしていませんが、父さんの格好いいところ初めて見ました。
いつもは、顔中から水分をたくさん流しているところしか見た事なかったけど、今日は凄く格好良かったです。」
「いやいや、あれ位言えなければ、学校の教師など、やっておれんからな!」
「そうそう、良く考えたら、僕は、学校に通ってなかったけど、冒険者のランクがS級になって降格の心配が無くなったから、学校に行ってみたいんだ!
マークさんに聞いたら、学籍は在るから、いつでも通えると言われたんだけど、僕は、学校の場所すら知らないんだ。」
「じゃあ、さっきの転位陣を使って王城から、学校に行くといい。
毎朝、セリーヌがスカーレットと一緒に学校へ通っているから、一緒に通うと良いだろう。
学校に着いたらセリーヌに、職員室に案内して貰いなさいマーク殿が学籍は、在ると言うのなら学校の方は大丈夫だろう。」
「ところで、父さん僕は、ギルドの登録は、カイゼルグランデがファミリーネームなんだけど、学校は、どっちで名乗れば良いのかな?」
「ああ、そうか、ケイン殿に聞いて見るか。」
そう言って父さんは、ケインさんを呼んできて、
「ケイン殿、エドワードが学校に通うらしいのだがファミリーネームの登録は、どうなっているのか判るかな?」
「両方で登録してありますよ。」
「エッ?どう言う事ですか?ケインさん。」
「兄上のゴリ押しで、どちらでも好きな方を名乗れる様になっていますので、先ずは、ファミリーネームを名乗らずにいて、折を見て好きな方を名乗られては如何ですか?
それはそうと、アレックス殿、私は、本年度一杯で宰相の職を辞任しますので、後任の件は宜しく御願い致します。」
「ケインさん宰相を辞めちゃうの?
何か寂しくなるね。」
「そんな事は、ありませんよ、暇になりますから、兄上と一緒にこの森に別宅を建て皆様と仲良く暮らしていこうかと思っております。」
「そうなんだ、マークさんもケインさんも大歓迎だよ!」
そんな話しをしていると、マリウスさんが、
「試合の時に、私の胴を綺麗に薙いだ技を教えてくれないか?
あれほど滑らかな太刀筋は、見た事が無い!
どうしても、あの技が頭から、離れないのだ!」
では、明日の朝一番に教えましょうとこたえておいたが、マリウスさん剣術が好きなんだと、良く分かった。
すると、マークさんまで、儂にも伝授してくれ!
と、頼まれてしまい、似た者親子だなと、心の中で微笑んでしまった。
辺りを見回すとグレイシアが、ブラウンボアのステーキを食べているので、共食いじゃないのかと心配になり、話しをすると、
「私は、このまま人間として暮らすのだから、共食いではない!
だから、エドワード私と番にならんか?
エドワードなら、良い群れの長になるぞ!」
ハハハ群れとか言ってる時点でまだ野生だし(笑)グレイシアの話に苦笑いで答えていると、マリーとリリーの仲良しコンビがやって来て
「妾は、また尻尾が増えそうな予感がするのじゃ、後何本か増えると、ハクの姉御といい勝負が出来るやも知れん。
これからも、毎朝、一緒に特訓しようではないか!」
「あっ、悪い!僕もうすぐ学校に通う事になったんだ、だから朝の特訓は、休みの日にしか出来なくなったよ。」
「お主が、学校に行くなら、妾とリリーも一緒に行くぞ。」
「マリーとリリーも学校に行きたいの?」
「学校は、どうでもよいのじゃ!お主と一緒に居たいのじゃ!
お主ぼど、心地よい空気を纏った人間は居らぬからな。」
「マリーとリリーも学校に通えるのかマークさんに聞いてみるよ。」
いきなりマリーが学校に行くと言い出したので、この2人が学校に通えるのかマークさんに尋ねに行くと、マリーとリリーも着いて来たので、まぁいいか!と思いマークさんに尋ねてみると。
既に上機嫌だったマークさんが、
「マリーとリリーの他にも学校に通いたい者は、全員、儂が、学校に通わせてやろう!」
と太っ腹発言をしたものだから、若いメイド達が一斉に沸き立った。
「流石、退いたとは言え一国の長だっただけの事はあるな。」
マリーの上から目線の台詞に、僕は、マークさんに、マリーは元、土地神だった事を教えた。
「ここには、ユニークな出自の者が、揃っておるな他には、変わった者は居ないのか?」
と、かなりご機嫌なので、精霊女王候補だった者と、人化したグレートボアとグリフォンがいます。
と教えると
「ここは、正にビックリ箱のようじゃ!」
ご満悦の様子に、そう言えば、白の魔王も居ますよ!
と、教えると少し引き釣った笑いになったので、彼女は、素敵な女性ですが、神様の手違いで、あのようになってしまったのです。
僕が何とかしなければならないのですが、もし彼女が目覚めたら、仲良くしてあげて下さいね。
そう言った瞬間、僕の目の前に、白い靄が現れ人の形になった。
「レジーナさん!」
突然現れたレジーナさんに、少し驚いて、大声を出してしまった。
「話し全部聞いてたよ、エドワード君は、やっぱりいい男だね、早く私に与えられた、神様の加護を、どうにかしてね!」
「エドワード、その者は?」
「彼女が、今話していた、白の魔王こと、レジーナさんです。
彼女に与えられたられた加護は、彼女に対して、不利益や、害意を持った者や、彼女が嫌う物を、寄せ付けない様にする力です。
その力が強過ぎて、ゴキブリとか嫌いな虫何かと一緒に建物とか何かも吹き飛ばしたお陰で、討伐されそうになって、討伐に現れた冒険者や騎士なんかと一緒に街まで、吹き飛ばし魔王と呼ばれる様になったらしいのです。
全ては、何処かのポンコツ女神のせいらしいのです。
話しを聞いて、彼女の力に成りたくて………」
「そんな馬鹿な事が本当にあったと言うのか?
そんな馬鹿な神様が存在するなどとは信じられん!」
「マーク様、貴方達は、そのポンコツ女神を一度見た事があるはずですよ。」
「ハクタイセイ様それは、エドワードが産まれた時の………」
「そうです、あのポンコツ運命の女神に、私と兄様にエドワードを遣わし丸投げされたのが、今の現状なのですよ。
ハッキリ言って、あのポンコツの尻拭いの為にエドワードは、産まれて来た様なものです。」
「なんと、では、白の魔王とは、魔王ではなく、神災だったのですか?」
「そうです、それも、飛びっ切り間抜けな女神のミスです。」
「それは、知らぬ事とは言え、我々はずっと白の魔王を恐れておった、これからは、認識を改めてなければなるまいな。」
「マークさん、実はレジーナさんは、ずっと前から、こうやって意識を思念体に乗せて、ここに遊びに来ているのですが、外からの、お客様が来た時は、怖がらせてはいけないと、ずっと隠れていたのです。
実際の彼女は、気配りの出来る普通の女の子だから、怖がっちゃダメですよ。
彼女を恐れたりするのも、彼女の力の発動条件なんです。」
「なんと難儀な加護を貰ったモノじゃ!
白の魔王殿、いやレジーナ嬢よ、エドワードが見事、そなたを助けた暁には、是非に我等の友として、仲良くして欲しいのだが、宜しいだろうか?」
「勿論ですとも!私は沢山、友達を作りたいです。
ここで眠りに就く前は、私は恐怖の対象でしたから、でも、今は、ゴールディさんをはじめ、エドワード君やマリー&リリーにエルフさん達なんかと仲良くなれて、凄い嬉しいのです。
たがら、エドワード君が20歳に成るまでは、世界樹の中で眠りに就いたまま、たまにこうやって遊びに来ますので、見掛けたら仲良くして下さいね。」
「分かった、約束しよう、今ここに居る者総ては、そなたの友じゃ!」
そんな訳で、今夜、世界樹の森に集まった王族の人達は、レジーナさんに対する認識を改めてくれたと思う。
実際のところは、僕が20歳に成るまでに、レジーナさんを助ける事が出来る様な力を身に付けなければならないのだが、よく考えると、僕は、今まで闘う力と技ばかりを磨きあげてきた。
神様の加護を、無効化する術を、これからは、模索していくしかないのだと思うと、気が重くなる。
こんな時は、ハク姉ちゃんに相談するのが、良いだろうと、アドバイスを貰いに行くと、
「簡単な方法なら、いくらでもありますよ。」
「じゃあ、直ぐにでも、レジーナさんを助ける事が出来るんだね。
どうすれば助けられるの?」
「方法は、自分で考えなさい。
私にばかり頼っていては、貴方の成長の為になりませんからね。
レジーナが折角、貴方が20歳に成るまで考える時間をくれたのだから、考える時間は、たっぷりあるわ、それにヒントは、意外に貴方が知っているかもしれないわよ!」
「え~!知恵熱が出そうだよ。」
「エドワードよ、300年前に、儂がレジーナを封印する前にその方法で無力化しようとしたら、ハクに止められたのじゃ!
その当時、レジーナを無力化すれば、即座に魔王として、討伐されるのは、目に見えておったからな。
そこで、ハクが、彼女が破壊した街が、元通りになり、彼女の事を知る者が居なくなり、白の魔王の恐怖が忘れられる頃に目覚めさせてはどうか?と儂に進言したので、儂はハクの意見に従ったのだが、
神界の方が先に痺れを切らしたみたいでなぁ。
しかも、あのポンコツ女神に任せると録な事が起こらんから、儂達と人間に丸投げしたのじゃ!
と言っても、儂とハクは、エドワードを育て導くだけなのじゃ、だから、レジーナを助ける事に関しては全てお前の裁量にかかっている事を忘れるでないぞ!」
「分かりました。レジーナさんの事は、僕が責任を持って考えます。
と言う事で、難しい話はこれ迄にして、皆さん盛り上がって下さい!」
「ちょっと待った!」
ティナが待ったコールを掛けた。
「そこの上機嫌の元国王様に話があります。
ここに居るメイドでセルリア以外のメイド達全員、学校に行きたいのですが、アナスタシアや、ローザとノーナ、シンディ辺りは、大学位の年齢ですが、大丈夫なのでしょうか?」
「その辺りは、私に考えがある。」
珍しく、アレックス父さんが、皆の舞絵で発言をした。
「取り敢えず、後日、ここで試験の受けてもらい、その成績を基準に、学年等を決めさせてもらいます。
その上で、年齢よりも下の学年にいても、学校での成績いかんによって、スキップして上の学年に編入出来る様にしますので、年相応の学年ではないからと、嘆くより、上の学年に上がれる学力を身に付けてもらえれば、スキップで上の学年に進級させますので、皆さん頑張って下さい!」
「難しい話はこれで、終わりかな?」
マークさんが、皆に聞くと、もう有りません!
メイド達の元気な声が響いたのだが、
「新築の食堂がオープンするんだけど、大丈夫なの?」
「そっちの方は、大人達に任せなさい!」
ヘレンさんが、胸を張って言い切った。
「私とハクタイセイ様と、エルフ姉妹に、スカーレットとソフィアそれに、セルリアや、大工の嫁とか使える人材は、ちゃんといるから、大丈夫!」
流石ヘレンさん、僕の料理の師匠だけのことありますね。
でも、グレイシァとジャニスの名前が呼ばれなかったのには、納得出来た(笑)
そんな感じのグダクダな流れで宴会は、ダラダラ続き気が付けば、お開きになっていた。
翌朝、マリウスさんが、剣ではなく刀を持って
「さぁ、教えてもらおうか!」
と、やって来たのには驚いたが、集会場でマークさんとゴールディさんが、まだ飲んでいたのには、更に驚かされた。
マリウスさんに手本を見せる為に連れてきたマリーが何やらマークさんに、術を施していたので何をしたのか聞いてみると、肝臓辺りに重大な疾患が、有ったので治しておいたとの事だ、意外にもマリーは土地神だった頃から、治療術が得意だったらしいのだが、
「尻尾が増えた!」
と、いきなり、はしゃぎ出した。
と言う事は、土地神だった頃の力を既に凌駕したと言う事になる。
「早速で悪いが、妾と軽く一手交えよう!」
「いやいや、先ずはマークさんに、抜き胴を教えなければならないから、その後ならいいよ。」
僕がそう言って刀を構え、一度、普通に手本を見せ、その後ゆっくりと、各動作ごとの注意点やコツを詳しく教えると、簡単にマスターしてしまった。
物覚えの良さは、流石の一言だ、後は、折を見てマークさんにも教えて下さいね、とお願いすると、快く引き受けてくれた。
その後、僕は、マリーの気が済むまで、相手を努めて集会場に戻ると、マークさんが、マリーの手を握り何度も御礼を繰り返していた。
マークさんの肝臓は、医師や、医療魔術師にも治療の見込みが無いと見放されていたらしいのだが、マリーが簡単に治してしまったのだ。
どれだけ凄いんだよマリーの治療術!マリーに話しを聞いてみると、土地神の力の一つらしいのだが、既に土地との繋がりの無いマリーに何故使えたのかは、本人にも解らないらしい。
ただ何となく、マークさんの疾患が見えたので、もしかして、と思い治療を施したら、出来たと言うのだ。
感謝しまくるマークさんに照れたマリーは、エドワードと共に学校に通わせてもらう御礼じゃ!あまり恩義に感じる必要はない!
そんな感じで照れを隠しているつもりみたいだった。
今回、宴会に参加した王族の人達は、全員、世界樹の森に一泊しているので、アレックス父さん達に挨拶をしにいくと、
「明日から学校に通うなら、私がもう一泊して、学校へ案内しよう。」
と言ってくれたので、明日から学校に通う事にした。
お父さんに、学校に必要な物を教えてもらい、マリーとリリーを連れて王都へ買い出しに行くと、武闘祭を見た人達に囲まれてお祝いの言葉を頂いた。
筆記具とノートを求めた雑貨屋では、お祝いだ、とお金を受け取ってくれなかったのには、頭が下がる思いだった。
更には、お土産用のスイーツを買いに行った店や街の至るところで声を掛けられた。
そんな状況に今更ながら、有名に成りすぎた気がする、学校では、目立たなくしようと、心に誓った。
買い物から、戻ると、殆どの王族の人達は、ハク姉ちゃんの作った魔方陣から、王都に戻っていたが、アレックス父さんとマークさんは、まだ残っていた。
アレックス父さんは、学校に通いたいと言ったメイド達の学力を調べていたらしいのだが、皆さん総じて年齢以上の学年に入れる程優秀だったらしい。
これで、皆と一緒に学校に行けると思うと何か不思議な気分になる、明日になれば、新しい出会いや、楽しい事が沢山在ると思うと、ワクワクしてなかなか、寝就けなかった。
最後まで読んで頂きまして、まことに、ありがとうございます。
第三章は、かなり長く続きましたが、次の章は、主人公のエドワードが、15歳で成人するまでの、繋ぎとして、少し短めになる予定です。
また、次回も、お立ち寄り頂く事を心よりお待ちしております。




