第三章(8)
今回も、読みに来て下さった方に感謝します。
気が付けば30話を過ぎていました。
これからも、頑張りますので宜しくお願いします。
エドワードが、芋虫のリリーを従魔にした翌日、ハクタイセイは、ヘレンの所に、謝罪に来ていた。
エドワードの魔法修行の初日だったので、出鼻を挫かれたくなかったと説明すると、ヘレンは、そんな理由があったのなら、と快く謝罪を受け入れてくれた。
「冒険者ギルドで冒険者登録をした後、魔法について少し講習をしたら、妙にエドワードがやる気を出したので、最初から、躓く訳にはいかなかった。」
ハクタイセイの言葉に、
「どんな講習をして、エドワードがやる気を出したのか教えては、貰えないか?
儂も、孫に何かを教える事が有るやも知れぬから、少し参考にさせて欲しいのじゃ。」
とマークが頼むと、それならばと、ハクタイセイは、エドワード達に話したのと同じ事を喋った。
すると、やはり魔法の擬人化に、マーク、ヘレンとゴールディまでが喰い付いてきた。
ハクタイセイは、まるで、あの子達と同じですね、と苦笑いをしながら、同じ様に、炎で人の形を作った。
人の形をした炎は、先ず、両手を拡げた後に右手を胸の前に当てて深々とお辞儀をして、炎で出来た胸の中から、三つの火の玉を取り出し、ジャグリングを始めた。
そのうちに火の玉は、五つに増え、皆が言葉を忘れているうちに、最初と同じ様にお辞儀をして消えていった。
3人が言葉を失い呆然としている中、マークが我に返り、拍手を始めると、ヘレンとゴールディまでが拍手を始め、ハクタイセイの炎のショーは、大盛況のうちに終わり、
「流石に、全ての魔法を自在に操る事にかけては、天上界でも指折りの実力者だけの事はあるな。
儂も、細やかな魔法の操作を覚えたくなったわ、ハクよ、儂にも、コツを教えてくれんか?」
ゴールディの頼みに、ハクタイセイは、
「兄様は、いつも無尽蔵の魔力にモノを言わせて、ぶっぱなすだけなので、緻密な魔力のコントロールを覚えるには、後、300年位は掛かりそうな気がしますが、覚えますか?」
と言われて、頭を抱える。
その隙にハクタイセイが、エドワードが従魔をテイムしたと、話題を変える。
テイムの仕方を儂は、教えていない、とゴールディが言えば、ハクタイセイも教えていないが、リリー・カサブランカと言う巨大で真っ白な芋虫を従魔にして、レベルが、2つ上がったと教えた。
ゴールディは、名付けをしてもレベルが2つ上がる程の魔獣は居ないはずと言う。
ゴールディによると、多分、名持ちの魔獣をテイムしたのではないか?との事。
なるぼど、それなら納得がいくと、ハクタイセイは思った。
その日、エドワードは、朝から1人で、念入りに柔軟体操をしていると、すぐ側で、狐のマリーが、火の玉(狐火)を三つ出して、尻尾や鼻先を使い、お手玉の様に遊んでいた。
マリーもハクタイセイの見せた魔法に、心を奪われていたのだ。
エドワードは、マリーのお手玉を見て、修行の手伝いを頼んだ。
マリーは、快くOKしてくれたので、自分目掛けて火の玉を高速で打ち出してもらい、その火の玉を刀で切りつけ、反射神経を高めながら、どんな攻撃に対しても、柔軟に対応出来る様に刀を振り続けた。
エドワードは、このシューティングゲームの様な練習が気に入り、昼食の時間まで、ずっと火の玉を切り続けた。
やがて、お腹が減ったので昼食を摂る事にして。
多尾狐のマリーを伴い、食堂テントに行き、シェーラに、剣術修行でマリーに沢山魔力を使わせたので、MPポーションをもらいマリーを労った。
食後に、ハクタイセイを待つも、なかなか来ないので、先程、快くMPポーションをくれたシェーラに、
「シェーラお姉ちゃん、時間があるなら、魔法を教えて欲しい。」
と頼むと、エドワードの顔を胸の谷間に挟み込む様に抱き締めて、
「エドワードは、練習熱心でいい子ねぇ、お姉さんが、精霊魔法を教えてあげるね!」
と嬉しそうにエドワードを抱き締めたまま左右に振り回すと、シーナが、
「教えるのは、魔法でしょうね!
エドワードに変な事、教えちゃ駄目だからね!」
と厨房から、茶化す様に叫んだ。
「変な事は、出来る様になってからよ!」
と笑いながら出ていく2人の後ろ姿を見ながら、
「ありゃヤバイわ、マリー付いてって姉さんが変な事したら噛みついて!」
とマリーに指示を出すと、マリーは、素直に後を付けていった。
やがて2人乗りは、世界樹の元にやって来て、
「エドワードには、きっと精霊魔法の素質が有ると思うから、今から、下位の精霊を呼び出すわね。
何もしなくていいから、精霊の波動を感じるのよ。」
と言って、目を閉じると、無数の精霊達が集まって来た。
ところが、精霊達に反応したのは、エドワードではなく、世界樹の上で葉っぱを食べていた、巨大な芋虫のリリーだった。
実は、リリーは、本来グリーンキャタピラーと言うモンスターなのだが、何故か、上位の精霊を宿して生まれた変異種だったので、にわかに集まった精霊の中に顔を出そうと、糸を垂らして世界樹の上から降りてきたのだ。
しかも、シェーラの目の前に。
リリーがいきなり目の前に現れたシェーラは、言葉を発する事も無く、意識を手離してしまった。
倒れそうになるシェーラを、リリーが受け止め、ゆっくりと、地面に寝かすと、リリーは困った様に辺りを見回す。
エドワードは、マリーの力を借りてシェーラを、リリーの背中に載せてテントに向かった。
すると、テントの前で意識を取り戻したシェーラが、白く巨大な芋虫の背中に乗っている事に気付いて、大声で叫びながら、再び気を失った。
シェーラが次に目を覚ました時に、また驚いてはいけないと、エドワードとマリーが、リリーの背中から、シェーラを引き摺り降ろしたところに、シェーラの叫び声を聞いて、テントの中からシーナとニッキーそれにレジーナが飛び出して来た。
レジーナはリリーを見た瞬間に、その姿を消してしまった。
おそらく、意識が途絶え思念体を維持出来なくなったのだろう。
シーナは、意識を失ない膝から地面に落ち正座をした様な姿で動かなくなり、ニッキーは、立ったまま口から泡を出していた。
隣の元女性用のテントから、ハクタイセイとゴールディと、マークが顔を出し、マークが腰を抜かしていた。
ハクタイセイに状況の説明を求められ、エドワードとマリーが、事細かに状況を説明すると、ゴールディは、声を出しで笑い、ハクタイセイは、気を失った3人を見て、笑いを堪えていた。
腰を抜かしたマークは、必死に威厳を取り戻す為に、立ち上がろうとしていたが、産まれたばかりの子馬の様に脚が、ガクガクしていた。
それを見たマリーが、思わずププッと息を漏らしていた。
幸い、ハクタイセイの説教は、無かったが、後で意識を取り戻したシェーラとシーナには、一時間近く小言を言われてしまった。
その日の夕食は、久し振りに、食堂テントに大工3兄弟以外のメンバーが揃った。
すると、皆に酒を振る舞ったゴールディが、第二子の名前は、ライアンに決まりました。
と乾杯の音頭をとった。
そんな事が有ってから、10日程過ぎた頃、オリヴィアの機嫌が目に見えて悪くなった。
どうやら、ヘレンもゴールディも、ライアンの夜泣きのせいで、睡眠不足になった上、思った以上にライアンが手の掛かる子だった様で、オリヴィアが寂しい思いをしていたらしい。
そんなオリヴィアを多尾狐のマリーがよく遊び相手になっていたのだが、暫く家で面倒を見るとハクタイセイがオリヴィアを連れて来た。
エドワードは、妹が出来たようだとオリヴィアを可愛がり、マリーも今まで通り遊び相手になっていた。
後、何故だか、レジーナまで、オリヴィアの面倒を見る為に毎日、顔を出す様になった。
オリヴィアは、連れて来られた当初、ヘレンとゴールディを恋しがっていたが、3日目位から、こちらの家に馴染んで、両親を恋しがらなくなった。
昼間は、ライアンを見に行ったり、マリーと遊んだり、エドワードの、修行を見に行ったりと、生活のパターンが定着し始めた頃。
気が付けば、多尾狐のマリーの尻尾が、また一本増えていた。
今回も、最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます。
次回は、芋虫のリリーが…………と言う話しと。
多尾狐の尻尾に纏わる話し、それから、エドワードの、修行の体術編が少し。
後、出来ればセリーヌ(存在を忘れた訳ではありません、エドワードの、双子の姉ですね。)をそろそろ遊び来させようかなと思っていますが、こちらは、予定ではなく未定の話しです。
余力があれば、次回か、その次辺りでそんなエピソードを挿入するかもです。
それでは、皆様、又のお越しをお待ちしておりますね。




