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第二章(9)

今回も、お越しいただきまして、ありがとうございます。

 今回で晴れて、エドワードの赤ちゃん時代の終わりになります。

 

        世界樹の森へ

 王城での酒盛りは、東の空が、白み始める頃には、全ての者が眠りに就き完全に、お開きになっていた。


 翌朝、部屋で目覚めた者、部屋に戻る途中で力尽き廊下で目覚めた者、ラウンジで目覚めた者など人各々だったが、皆朝食の時に顔を会わせると、昨夜の記憶を手繰り寄せ、笑顔で挨拶を交わしていた。


 朝食の席で、王位を退位したマークが、ハクタイセイの出現による祝福のサプライズイベントの礼だと、大金貨1000枚用意すると言い出したが、これをハクタイセイが断固として固辞した。

 ゴールディは少し欲しそうにしていたが、ハクタイセイに睨まれ、小さくなってしまった。

 それならと、フェニックスの羽の礼をさせて欲しいと言ってきたが、

 あんな物なら、幾らでもむしり取って来るし、必要なら、フェニックスの手羽先を唐揚げにして持って来ても良いと言い、これも固辞した。

 最終的に、私達に、お金を使うなら、国民に還元しなさいと、マークが説教されていた。

 その姿に、エルフの姉妹は、王族にも容赦無しってハクタイセイ様半端ねぇ!と思った。

 ニッキーに至っては、流石お師匠様と感心していた。


 帰る時に、本当に何も必要無いか聞かれると、ボム湖(爆発によって出来た湖だからと言う安易な名前が付いていた)の名称を変える事と、湖に橋を架けなさいと言った。

 マークが、訳を聞くと、後々必要になるから、王国内で職に溢れた者を集めて公共事業としで王都に近い岸から、半島まで繋げなさいと言われ、マークは、自ら陣頭指揮を取って必ず完成させると誓えば、エルフの大工3兄弟も手伝いましょうと、手を取り合った。

 そして、橋が出来るまでに、工事に携わった人々の働く受け皿を用意しておくのですよ。

 とハクタイセイは、アドバイスを送り、一行は、王城を後にした。


 途中、冒険者ギルドに立ち寄り、エドワード以外全員が、登録した勿論、ゴールディとハクタイセイも登録をして、ゴールディは、1人ギルド長の部屋に乗り込み、剣士達の違約金と賠償金について話しを着けた。

 一体どうやって話しを着けたのか気になったが、どうやら、この件に関しては、前王のマークが、書状を用意してくれていたらしい。

 これで晴れてギルドに復帰出来ると、何かの討伐依頼を受けて、男性3人は、依頼に向かった。

 残されたニッキーは、もう少しハクタイセイに教えを乞うと残る事にしたらしい。

 3人は、別れ際に、依頼を達成したら、世界樹の森へと、土産を持って帰って来ると言っていた。

 3人の剣士を見送ると、ルイが暫く旅に出ると別れを告げた。どうやら、エドワードの修行が始まる前に揃えておきたい物が有るらしく、それを求める旅になるらしい。


 残された一行は、王都の城壁の外に出ると、空間転移魔法で、世界樹の森へと、帰って来たテントの前まで歩いてくると、狐がテントの前で座っていた。


「おっ、また餌を貰いにきたのか?」


 ゴールディが、狐に話しかけると、狐は、嬉しそうに頷いた。


「この狐、人の言葉が解るみたいてすね。」(ニッキー以後二)


「この子、多尾狐みたいですね。」(ハクタイセイ以後ハク)


「たびぎつね?

 旅をするのですか?」(二)


「いえ、多尾狐とは、魔力量が増えたり大きな魔法を覚えたり、力が強くなれば、尻尾の数が増える神獣の一種で、大体土地神になる事が多いのですが、この狐は、土地に縛られてはいない様ですね。」(ハク)


「じゃあ、ここの土地神様に成るのかしら?」(二)


「ここでは、土地神に成れませんよ、一応、本物の神様が居ますからね。」(ハク)


「そっか、ハクタイセイ様が居るもんね。」(二)


「いえ、ニッキー兄様の方です。

 私は、兄様がちゃんとエドワードを育てられるか心配なので手伝いに来た、云わばベビーシッターのアルバイトてす。」(ハク)


「兄様は、ああ見えて、神様の中ては、最強なのですよ。」(ハク)


「えっ?私の見立てでは、ハクタイセイ様の方か強い様に思うのですが。」(シーナ以後妹)


「多分ですが、人化した時は、私の方が少し強いかもです。

 でも龍化すれば、確実に兄様の方が強いのですよ。」(ハク)


「まぁ、強さの話しは、置いといて。

 じゃあ、この狐は、何でここに?」(シェーラ以後姉)


「多分、親から離れて自分の治める土地を探している最中か?自分の治める土地を奪われ比護を求めてきたか?土地を治める気がなくてうろうろしているだけの野良なのか?暫く様子を見てみない事には分からないですね。」(ハク)


 こうして、この多尾狐は、世界樹の森で暫く面倒を見る事になった。


それから、三日後討伐依頼を受けていた3人の剣士が、世界樹の森へと帰って来た。


 3人でゴブリンのコロニーを壊滅させたらしく、本来10匹程度の依頼だったらしいのだが、コロニーを発見したので、序でに殲滅させて来たらしい。

 3人は、自分達の強さが、信じられない程強くなっているのを実感した上に、討伐数に、コロニー殲滅のボーナスまで手に入れたので、酒とエドワード用にベビー服を土産に持って帰って来ていた。


 その夜は、皆で酒を呑み剣士達の討伐の話しを何度も聞かされた。


 更に一週間が過ぎ、待望の家が完成しエルフ姉妹は、エドワードを連れて、テントから、引っ越して行った。

 姉妹の荷物が、かなりあったので、剣士達が荷物を運ぶ手伝いをして、引っ越しが済むと、剣士達は、また依頼を受ける為に王都へと旅立った。

 今回は、ニッキーと大工3兄弟も一緒に王都へと旅立ったが、大工3兄弟は、マークが、これから始めようとしている橋梁工事の話し合いの為で、工事の開始まで、日にちが開くようなら、一度戻って来ると言って出て行った。

 一週間程で戻って来た3兄弟は、まだまだ工事が始まりそうもないからと、ギルドの依頼をこなしてから戻って来たらしい、お土産は、やはり酒だった。


 エルフの大工達は、次の日から、枝振りの良い木を見付けて、ツリーハウスを作ると、またまた伐採を開始し始めた。

 今回のツリーハウスは10日程で完成した。

 家にあれだけ時間を要したのは、それだけエルフ姉妹の注文が面倒だったのと、細部に到るまで丁寧に仕上げた為らしい。

 3人が、これまでに建てた中では、間違いなく最高傑作だと言っていた。

 ツリーハウスが出来た翌日、剣士達が帰って来た今回は王都に宿をとり、幾つかの依頼を完遂させてきたらしい、今回も酒を土産に買って来ていたが、エルフ姉妹へ、服やアクセサリーも用意されていた。

 これは、姉妹が調合した薬が冒険では、かなり役に立った為の感謝の気持ちらしい。

 やはり、その夜は、宴会になった、今回は、討伐の自慢話をあまり聞く事ができないと思ったら、ニッキーの活躍が目覚ましく、ニッキーの前では、自慢し煩いみたいだった。

 宴会の最中、狐が頭の上に、卵から孵化したばかりのヒヨコを乗せてやって来たので、新しい命の誕生にゴールディが、喜び、いつもは最後まで呑んでいるはずの大酒呑みが、イソイソと狐を伴い家畜の様子を見に行った、最近、益々農夫っぽく成ってきた。

 ゴールディが、いなくなった処にエドワードがハイハイして登場した。

 ハクタイセイに掴まりながら立ち上がり「ママ」と喋った、それを聞いていた皆は、盛り上がったが、ハクタイセイだけは、冷静に「ママではありません!お姉さんと呼びなさい!」とエドワード相手に凄んでいた。

 シーナは、ハクタイセイに、「赤ちゃん相手に半端ないっスねぇー」 と声に出してしまい、ハクタイセイには睨まれたものの、皆には馬鹿ウケしていた、そんなこんなで、この夜は、盛り上がりのうちに幕を閉じた。

 翌日、更に2羽のヒヨコが孵化してゴールディが喜び小躍りしていた、となりでは、狐も嬉しそうにしていた、どうやらこの多尾狐は、鶏を餌とは思わず友達の様に思っているらしいが、ヒヨコは懐いてくれるが、親の鶏は多尾狐の事を恐れているみたいだった。

 最近、この狐は、昼寝中のエドワードを見付けると横に来て一緒に寝ている事が多い、一度エドワードが起きている時に、シッポと耳を思いっきり掴まれたので、寝ている時しか寄って来ないがエドワードの事も友達の様に思っているのだろう。

 そして、剣士達は、冒険に向かい、大工達は、2つ目のツリーハウスを作り始めた。

 世間では冬だと言うのに、世界樹の周りは今だに春の暖かさである、ゴールディか、ハクタイセイの魔法なのかと聞けば、どうやら、世界樹の神気によるものらしい。



 そんな日常が続き、1年か過ぎた頃、王都側から、橋の工事がやっと始まった。

 その頃には、大工3兄弟の作ったツリーハウスの数も30近くになっていた。

 半島の中には、5つそして湖の北に広がる森の中に20以上作り上げていた。

 こちらのツリーハウスは、エルフ姉妹の指示で、薬草採取や狩、食料調達に都合の良い場所を選んで拠点や中継地点、資材置き場等の機能を持たせている、たから、狩や薬草採取をしていて日が暮れてきても、野営せずにツリーハウスで朝を待てば良いので、外の森で安全に行動出来る様になった。

 

 大工3兄弟は、橋の建設工事に伴い、冒険に向かう、剣士達と共に王都へと向かっていった。

 この頃になると、エルフ姉妹の料理に変化がでて来た、これは、1年前に戴冠式の後、王城のシェフから貰ったレシピ帳の料理を研究して、森の中で調達出来る材料などで、いろいろなアレンジを試しながら、宮廷料理とエルフの料理をミックスしたような料理体系を作り上げていた。

 やはりテントの厨房よりも、家の厨房の方が創作意欲が湧くらしい。

 エドワードは立って歩ける様になり、最近では、ハクタイセイの事を「お姉ちゃん」と呼ぶようになった、お陰で、ハクタイセイの機嫌がいい。

 これは、幾度にも繰り返し「お姉さんと呼びなさい!」と、呪文の様に言い続けた執念の勝利である。

 エドワードに、お姉ちゃんと呼ばれ悦に入っているハクタイセイを見ながら、シーナは、ハクタイセイ様いったい年、幾つなんだろう?と思っていた。

 そして、家畜達は山羊達は、7匹になり鶏達は、現在27羽になった。

 鶏のフェニックスは、半年前にハクタイセイの手で唐揚げにされて、剣士達に振る舞われていた。

 現在のフェニックスは、三代目で二代目は、二ヶ月前に、やはりハクタイセイの手によって唐揚げにされている。

 どうやら、ここでフェニックスと名付けられるとハクタイセイによって唐揚げにされる運命にあるらしい、三代目フェニックスの命も風前の灯なのだろう。


 ゴールディは、毎朝、家畜のフンを集めて畑に運んでいる、どうやら、本格的な農夫に成りつつあるようだ。


 冬が明けて春になれば、王都ではマリウスの婚礼の義が行われるらしい、普通の貴族ならもっと早くに結婚するのだろうが、王位継承権を持つ者は、結婚相手を簡単に選ぶ事も出来ないようだ。

 王城からは、婚礼の義に出席してくれないか?

 と打診してきたが、返事は、保留している、皆のスケジュールが分からないからだ、全員揃うなら出席しようと思うが、新郎がハクタイセイに見とれてしまいそうなので、ハクタイセイには、少しメークおして貰おうと思う。


 やがて春が来て、マリウスの婚礼の義は、盛大に行われた。その頃には、ルイ戻っていたので、全員で出席する事になった、ハクタイセイは、メークする事を拒否したので、目立たない所での参列となったのだが、マークの要望でまたも、ハクタイセイによる、サプライズが行われた。

 今回は、新郎新婦共にハクタイセイに見とれてしまったので、夫婦間に亀裂が入るような事態には、ならなかった。

 余談ではあるが、その後また晩餐会に招待され、ハクタイセイは、また信者を増やしていた。

 今度は、マリウスの嫁のウインスレットだった。

 ハクタイセイは、王城に来る度に、誰かの嫁を信者にしているようだ。

 晩餐会の間、所狭しと、トコトコ歩き回るエドワードも、ファンを着実に増やしていた。

 アレックス夫妻に関しては、マーガレットは、ウインスレットと2人でハクタイセイに付きっきりで、アレックスは、歩き回るエドワードを見て涙を流していた。

 エドワードの姉のセリーヌより発育が早いと、エルフ姉妹に育て方などのアドバイスを受けていた。

 結局、戴冠式の時の様に、泊まりになった。

 一行は、エルフの大工3兄弟を除いて、世界樹の森へと、帰って行った。

 エルフの大工3兄弟は、湖に架ける橋の工事のために、王都に残った。

 工事に関しては、この3人がメインで作業の指揮をとってるらしい。


 早く橋が架かるといいですね、ハクタイセイが微笑みながら言う、剣士達は、橋が出来れば、ギルドへの道程が楽になると、楽しみにしている。

 完成は、まだまだ先である。




 マリウスが結婚して2年が過ぎた。


 湖に架ける橋の工事は、もうすぐ終わりを迎える、剣士達も討伐依頼を受けない時には、工事の手伝いをしている。

 マリウスの細君ウインスレットはもうすぐ母親になる。

 マリウスの子供の誕生日に合わせて、橋の竣工式を行うと、マークがはっぱを掛けているが、同じ日になれば、竣工式に国王が立ち会えないと言う事を解っているのだろうか?


 何はともあれ、エドワードは、無事3歳になった。

 そして、ルイによってエドワードの両手に、魔導具の腕輪が装着された。

 エドワードの修行の始まりである。

 今回も最後まで読んで頂きまして、ありがとうございます。

 これまでエドワードの存在感あまりなかったのですが、次回から、エドワードの修行と言うか、日常を盛り込んでいきたいと思いますので少しだけ期待して下さい。

 今後、3歳、5歳と年を追うごとに、修行のシーンが増える予定ですが、予定通りにいくかは分かりませんが、今後も宜しくお願いします。


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