第二章(5)
今回、最後に金龍が、災難に逢います。
世界樹の森(それぞれの日常2)
剣術修行の元盗賊達が、世界樹の森へとやって来て、三ヶ月が経った頃、ニッキーは、ハクタイセイの指導の下、既に見違える位に女性らしさと、相反する剣術の腕を身に付けていた。
その身形も、ボサボサのショートカットだった髪の毛も少しずつ長くなり、毎日櫛を通し美しいストレートヘアになっていた、
「そろそろ少し揃えましょうか?」(ハクタイセイ以後ハク)
そう言ってニッキーの髪の毛に手櫛を入れると、
「私が、切りましょうか?」(シェーラ以後姉)
すると、ニッキーとハクタイセイに向かってエドワードがハイハイしながら、やって来る。
その後をレジーナが、ふわふわと浮かびながら付いて来て
「なになに、髪の毛切るの?
いいなぁ私も切りたいけど、身体が無いし。」(レジーナ以後レ)
楽しそうに笑うレジーナ、実は、髪の毛を切りたいのは、只の冗談かも知れない。
シェーラがニッキーの髪の毛に鋏を入れようとしたところで、レジーナが、エドワードを念動で宙に浮かすと、
「そうね、ハイハイしてると、切った髪の毛が付くから、エドワードは、浮かんでいるのがいいわね。」(ハク)
「髪型は、私に任せてね、チャンと可愛くしてあげるから。」(姉)
宙に浮いた為に、手足を動かしても移動出来ないのが、歯痒いのか、地面の抵抗から解放された為なのか、エドワードの、手足を動かすスピードが上がりハクタイセイとレジーナは、楽しそうにエドワードの、動きを眺めていた。
シェーラは、流れる様な洗練された動きで、ニッキーの髪の毛を切り揃えると 「こんなものかしら。」 と、ニッキーの顔や身体に付いた髪の毛を、風魔法で払い落とし、ニッキーに鏡を見せた。
「これが私………」(ニッキー以後二)
鏡の中のショートボブに切り揃えられた自分の姿を見て、
「私、絶対に可愛い髪型とか似合わないと思っていたけど、何かこの髪型、しっくりくる。」
花が咲いた様に顔を綻ばして喜ぶニッキーに、ハクタイセイ、レジーナ、シェーラは、可愛くなったねと、自分の事の様に喜んでいる。
「しかし、シェーラは、店が開ける位に素晴らしい腕前ですね。」(ハク)
「里では、婆ちゃんの御弟子さんや、御弟子さんが連れて来た子供達の髪の毛を揃えたりしていましたからね。
ちなみに妹のシーナも上手ですよ。」(姉)
「シェーラさんって、お料理だけじゃなくて何でも出来るんですね。
尊敬します。」(レ)
「エルフの里には、人間の町の様に店とか無かったから、何でも自分達でしなければ、ならなかったからね。」(姉)
「シェーラを嫁に貰う男はが羨ましいな。」(ハク)
「そうですね、私が男だったら、ほっときません。
美人でスタイルも良くて、何でも出来るし、私の嫁になって下さい(笑)」(レ)
「私も、シェーラさんを嫁にしたい(笑)」(二)
「私にそんな趣味は有りません(笑)
でも、嫁ぐなら、顔より才能よりも、心の美しい人が、いいですね。」
シェーラが珍しく頬を薄く染めながら話すのをみてニッキーが、
「何て美しい表情なんだろう!」
と声に出したので、シェーラは、真っ赤になり、両手で頬を隠し、普段冷静でクールビューティを体現する様な本物の美女が、見た事もない位に本気で照れていた。
微笑みながら、その様子を見ていたハクタイセイが
「心の美しさなら、私が保証します、序でに顔と、才能も折り紙付きですので、エドワードに娶って貰いなさい。(笑)」(ハク)
「エ~~ッ! エドワードは、私の為に生まれてきたのでしょ。
私が旦那様にするんだから(笑)」(レ)
「エディ(エドワードの、略称)ってそんな、優良物件なら、私も旦那にしたいけど、私の場合、エディが、成人した頃には、おばちゃんに成ってるから残念だけど、諦めるしかないなぁ。」(二)
本当に、残念そうに話すニッキーを見て
「じゃあ、エドワードが、成人して貴女と同じ年頃に成るまで、貴女を年齢の理から、解放しましょうか?」(ハク)
「「「えっ?」」」
驚いた3人が同時に叫んだ。
「そんな事が本当に出来るのですか?」(二)(レ)(姉)
「出来ますよ。
一応、私も頂上の神格を持つ神様の1柱ですからね、まぁ、死者を甦らせたりは、私では出来ませんけどね。」
ハクタイセイの意外なまでの権能にレジーナと、シェーラが、言葉を失う中ニッキーは
「御願いします。ハクタイセイ様。」
直ぐ様返事をしていた。
「いいけど、これにも、修行が必要になりますよ。」(ハク)
「頑張ります!」(二)
「ニッキー今の返事が、貴女から聞いた返事の中で、一番良い返事でした。
それにしても、エドワードは、モテモテですね。
私もエドワードに嫁ぎましょうか(笑)
この際ですから、シーナも入れてエドワードには、ハーレムでも作って貰いましょうかね(笑)」
どこまで、本気なのか分からないハクタイセイの言葉とは裏腹に3人の乙女達は、ほんのり桜色に頬を染めていた。
薬草採取に出掛けたシーナを除いた女性陣が、和気あいあいと、お喋りに夢中になっている頃、剣術修行中の3人は、、ようやく技の練習を許され、伸び伸びと刀を振っていた。
ハクタイセイとルイが神明流と言う事もあり、元盗賊の4人には、ルイが鍛えた、刀(日本刀)が、一振りづつ渡されていた。
最初は、反りの入った刀身等、この国の標準的な剣との違いに戸惑っていたものの、何万回と振り続けた素振りの型が、刀を振る上で最も理に叶った型だったのと、類を、見ない切れ味に、次第に心を奪われて行った。
そんな、修行中の剣士達に、ルイは、三ヶ月後を目処に、冒険者として、簡単な討伐クエストに出てもらうので、一層修行に励む様にと、はっぱをかける。
湖に付き出した半島の先端辺りでは、外観の完成した、ばかりの家の裏手で、ゴールディが若い農夫から購入してきた鶏の玉子を集めていた。
今夜は、玉子料理と喜びなからゴールディは、鶏を購入してきた日の事を思い出す。二羽の雄鶏と八羽の雌鳥を二羽づつ、籠に入れ両手に、一籠づつぶら下げ、背中に籠を三段重て縛り着けた物を背負って、また歩いて帰って来た。
その姿を見たハクタイセイに、
「あら、兄様、そんなに沢山フェニックスを連れて来て、唐揚げにでもするのですか?」
等と言われた、我が妹分は、どれ程フェニックスを嫌っているのだろうか?
一度聞いてみなくては、と考えてみる。
外観の完成した家の中ては、長男のジョルジョが一階の、次男のセルジオが二階の、各々内装工事を行い、三男のオーラスは家の外で、玄関から、運び込める大きさの家具を制作している。
薬草採取から、帰って来たシーナは、ニッキーの変身振りに驚いていた。
姉のシェーラが髪を整え、ハクタイセイによって薄く化粧を施されたニッキーは、別人の様に艶やかで可愛くシーナの目に映った。
あまりの可愛いさに、シーナがジロジロ見詰めると、顔を真っ赤に染め上げて恥ずかしがるニッキーを見て、三ヶ月前の男の子と見間違う姿を思い出す事すら出来そうにない。
シーナは、心の中で、ハクタイセイ様の女子力講座恐るべしと思うのであった。
それから、一ヶ月が過ぎ、ルイに教えを請う3人が技の修行に入って一月経ったと言う事で、ハクタイセイとルイの愛弟子同士で、練習試合が、行われた、結果は、ニッキーが、ルイの弟子達3人に圧勝して終わり、3人は、一層の努力を誓い、また一ヶ月後に再戦の約束をして閉幕となったが。
一ヶ月後の再戦でも、ニッキーは、見事な体裁きに、後の先を取る流れる様な返し技を駆使して、難無く3人を下した。
あまりの負けっ振りに、ハクタイセイが、男性陣にも技の修行を付ける事で、男性陣の不満は収まったものの、ルイは、人知れず、1人でいじけていた。
やはり、今回も「遠くへ行きたい。」 と呟きながら、現実逃避していた。
更に、一ヶ月後は、ニッキーと男性陣は互角の戦いを演じ、観戦していた、シーナは、ハクタイセイ様、戦闘も半端ない。
と、改めてハクタイセイの凄さを思い知った。
師範として己の未熟さを思い知ったルイではあるが、開き直り、改めてハクタイセイに弟子入りを敢行して、何故かニッキーの事を、姉弟子と呼び始めるのを見て、ルイの愛弟子3人も、最終的にハクタイセイの弟子になり、どう言う訳か、ニッキーが、師範代となり、3人に稽古を付ける姿を見てシーナは、シュールに思った。
この頃には、エドワードは、物に掴まりながら立ち上がろうとする事を、覚えてハクタイセイやレジーナ達をハラハラさせるが、1人で立てる様になるのは、時間の問題だろう。
そして、いよいよニッキー達の討伐クエストと言う時に、畑と家畜の世話三昧で農夫と化していた、ゴールディが、皆を連れて王都へ行くと言い出した。
翌日、朝食の後、大工3兄弟、晴れて剣士と認められた元盗賊の4人とエルフの里の美しき最長老の2人の孫娘に、エルフの里の長ルイ、2柱の神龍に、ハクタイセイに抱かれたエドワードの、総勢13人が、ハクタイセイの空間転移で、王都に入った、場所は、予めゴールディが前日から押さえていた宿の一室へと転移した、一行は、ゴールディに連れられ、王族御用達の服飾店へと向かい、店長直々の見立てで、派手さはないが、上質でセンスの良い服と、簡単なアクセサリーを購入して宿に戻った。
ここにきて、初めて王都が来た理由を、皆に伝えた。
「実は、明日、新しい王の戴冠式なのだ、戴冠式の後、晩餐会が終わってから行われる内輪の飲み会に招待されているので、皆で、お邪魔させて貰おうと思ってな。」
どや顔で胸を張って言い放つゴールディの右側頭部にハクタイセイの美しいハイキックが炸裂した。
「兄様は、いつも大事な事を相談もせずに、1人で決めて、振り回される身にも成って下さい。」
ハクタイセイがゴールディに苦情を告げると。
「ハクタイセイ様、ゴールディ様は、既に意識がありませんが。」
震えながらハクタイセイに、伝えるシーナは既に顔面蒼白で、心の中で、ヤッパ、ハクタイセイ様、半端ねぇーと、絶対服従を誓うのだった。
ハクタイセイは、素知らぬ顔で
「仮にも最強の神龍です、この位では、死んだりしません、ほっといて、お昼御飯食べに行きましょう。」
涼しげに言い放つハクタイセイを見て、その場に居る全ての者が、「最強は、アンタだ!」 と思った。
昼食を済ませ部屋に戻ると、ゴールディか目覚めていたので、ハクタイセイが、笑顔でゴールディを正座させ、説教を始めた。
誰かに助けを求めようと周りを見回しても、ハクタイセイが怖くて誰も目を会わせてくれない中、説教が始まり、2時間が過ぎようとした時、シーナがエドワードが、立ったと叫んだお陰で、ゴールディは悪夢の様な時間から解放された。
今回も読んで頂きありがとございます。
次回は、王都にて、大聖堂で、マリウスの戴冠式から、王城内での、内輪の飲み会へと続きます、後半の飲み会は、会話がメインとなります。
予定では、その後エドワード2歳位で、マリウスの結婚等のエピソードを織り混ぜた後5歳のエドワードの話しになる予定です。




