第1章 目覚め
今回、エドワードが、やっと目覚めますが、目覚めるだけです。第一章は、今回のエドワードの目覚めで終わりになります。
エドワード目覚める
大工3兄弟達が、テーブルと椅子や舟等を作り始めた頃。
王都近郊の農村で金龍は、家畜の購入の契約を済ませていた。
エドワードが目覚める前に、乳の出る家畜をと思い、農村を周り、家畜を飼っている農家一軒一軒回り地道に交渉を続け、村外れの、若い夫婦から、雄2匹、雌2匹、合わせて4匹の山羊の購入の話しを纏めた後、相場よりも、かなり高い金額での購入となり、喜んだ農家の夫婦から、大量の野菜を土産に貰い、購入した山羊のうち、2頭の背中に土産の野菜を括り着けて、湖を目指しのんびりと歩を進めた。
やがて、太陽が沈み始める頃、湖の畔の林道に差し掛かった時、茂みの中から、抜き身の剣を手に持った4人組の男達か、人化した金龍と4匹の山羊達の行く手を阻む様 前に並んだ。
人化した金龍は、男達をみるなり。
「お前達は、素人か?
見たところ、隠れてる者もおらず、4人だけで、盗賊紛いの事をするなら、もっと頭を使わなければ仕事にならんぞ!」(人化した金龍以下ゴ)
と、いきなり怒鳴りつげた。
4人は、いきなりの事に面食らったが、リーダー格の男が剣を振り上げ威嚇しながら。
「うるせい!こちとら、これで飯食ってるんだ!
命が欲しけりゃ、有り金と、その山羊を置いて、とっと失せやかれ!」(盗賊リーダー以下リ)
「おい、素人!お前ら全員で、儂の前に出てきただろ、もし、儂と羊達が、お前らより足が速ければ、回れ右して、全力で逃げると、お前達は、飯にあり付けない事になる。
解るか? だから、4人で組むなら、前から1人飛び出し、足を止めさせたら、道の両側から1人づつ、そして、後ろから逃げ道を塞ぐ様に現れて、前後左右を塞ぎ退路を断つのじゃ!
解ったか! 解ったなら返事をせい!」(ゴ)
「「「「へい!分かりやした!」」」」
何故か素直な盗賊に、御満悦の金龍は、4人に小金貨5枚を渡し
「精進せよ!」
と、言い残し、その場を去ろうとする
「あんた、いや、貴方様は、きっと名の有る盗賊に違いない、あっしらの頭になって下さい。」(リ)
「いやいやいや、儂は、盗賊ではない。」
金龍がリーダーの申し出を断ると
「なら、あっしらが一端の盗賊になれる様に、修行着けちゃぁもらえませんか?」(リ)
金龍は、少し悩んで
「修行と言うなら、剣の修行ぐらいなら着けてもよいぞ、今日は、遅いので渡した金で宿にでも泊まって、明日の朝にでも、この湖の森の一際大きな樹の元まで来るがよい。」
金龍は、そう言い残して、真っ暗になった林道を世界樹の方へと去って行った。
残された4人の盗賊達は、拳を強く握り締め
「俺達の未来は明るい。」
およそ盗賊らしからぬ台詞を吐きながら、力強い足取りで街へと向かった。
翌朝、金龍は、世界樹の根本で目を覚ました。
回りには、4匹の山羊達が、金龍を取り囲む様に眠っているのが見え、山羊達を、起こさぬ様にエルフ達のテントへと向かった。
真ん中のテントでは、エルフの姉妹、シェーラとシーナが、朝食の支度をしていたので、昨日、農家の夫婦から、持たされた土産の野菜を姉妹に渡し、山羊を4匹、購入した事を告げると、その足で、男性用テントで、
先ずは、大工の3兄弟には、山羊を調達して来たので、暇を見付けて、家畜用の柵を頼むと、既に、今日の仕事が無いらしく、快く引き受けてくれた。
続いてハイエルフのルイに、「話しが有る。」
と、真ん中のテントで2人は話しをはじめた。
ルイから、昨日の様子を説明聞き終わった頃に、朝食の出来たと聞かされ、2人で朝食を食べながら、山羊を購入した経緯などを話し、朝食の後、剣の練習に付き合ってくれと頼み快諾された。
2人が剣を手に世界樹の元に来た時には、昨夜の盗賊4人組は既に来ており、山羊達を撫でながら待っていた。
リーダー格の男が、金龍を見付けると、皆一斉に。
「「「「お頭、おはようございます!」」」」
と、元気な挨拶をした。
ルイは、思わず金龍に 「お頭?」 と、尋ねてみた。
「そんな目で見るな。
これには、退っ引きならねぇ訳がある。」
金龍が額に怪しい汗を流しながら弁解すると。
「ゴールディ様、その退っ引きならねぇ訳ってやつは、後でゆっくり教えて貰いますからね。
いつの間に、盗賊のお頭になったのかも。」(ルイ以下ル)
「お頭の お名前は、ゴールディと仰るのですか?」(リ)
「あぁ、ゴールディと、呼んでいいから、そのお頭と呼ぶのはやめてくれないか、お願いだから。」
額の汗を拭いながら金龍は、盗賊達に、呼び方を代える様に頼んだ。
そして、盗賊達をその場に座らせ、先ずは少し質問が有ると
「先ずは、修行の前に少し質問があるのだが、よいか?」(ゴ)
「はい、おか……いや、ゴールディ様、何なりと」(リ)
「お前達は、まだ若く、なかなか素直な性根をしているのに、なぜ、盗賊の真似事をしているのだ?」(ゴ)
「いや~俺達、最初は、6人で同じ辺境の閑村から出てきて、冒険者になろうって、頑張ってたんスよ。
最初のうちは、なかなか順調だったんスけど、ある時、依頼で運んでた荷を盗賊に奪われ、仲間の中でも、一番強い奴と、その時、俺達のリーダーしてた2人が盗賊に殺され、
逃げ帰って来た俺達は、違約金の他に、奪われた荷の代金まで請求されて、その金が払えないから、いっそのこと、俺達も盗賊やって、高飛びする金を貯めようって………」
リーダー格の男は、そこまで話すと、声を詰まらせた。
「よし、理由は解った、儂に任せろ。
お前達が、もう一度、真っ当に冒険者として、大成出来る様に、儂達が鍛え直してやる。」(ゴ)
「儂達?」
ルイは、怪訝な表情で金龍を睨むが、金龍は、目を合わせようとしない。
「しかし、冒険者やるにしても、俺達、ギルドに顔出したら、莫大な金を請求されるから、冒険者には……」
「それを、踏まえた上で任せておけ、と、言っておるのじゃ、よいな。」(ゴ)
「なるほど、ゴールディ様は、この4人の若者を、立ち直らせようと。」(ル)
「そう言う訳で、先ずは、ルイよ、この4人に基本の素振りの仕方を教えて、素振りを千回程やらせてくれ。
最後まで、基本の形が崩れない様にしっかりと、指導するのじゃ。
儂は、修行の邪魔になりそうなので、山羊を、シェーラとシーナに預けたついでに、こやつ等の分の飯を頼んでから戻ってくるから。」(ゴ)
「ハメられた!」(ル)
ルイは、身体の力が抜けるのを覚えたが、気を取り直し、盗賊達に、素振りの形を教えはじめた。
先ずは最初に言われた素振り千回を終らせた時、以外にも、盗賊達は、肩で息をしていたものの、疲れが見え始めた時に、楽をしようと、形を崩す者がいなかった事に驚いた。
これは、もしかすると、と思い4人に休憩を取らせて、男性用テントに戻り、素振り用に、剣よりも重量のある、鉄の棒を4本持って戻って来た。
「次は、この鉄の棒で二百回、先程と同じ打ち下ろしの形をやって貰う。
始めっ!」
勢いよく、号令をかける、今回も最後まで形を崩す者が、いなかった。
何故かルイは、最初の気持ちとは、裏腹に盗賊達に、剣を教える事が楽しく成りつつあった。
そんな時、テントの方からよい香りが漂ってきたので、4人を連れてテントに昼食を摂りに向かった。
4人に昼食を摂らせる間に、シェーラに金龍の事を尋ねると、山羊達を連れて、大工3兄弟の所に向かったらしい。
シーナに、 「師範役、楽しそうね。」 と言われて、我に返り
「何でこうなった?」
と自問しながら、頭を抱えた。
そして、午後もルイは、盗賊達の師範として、素振りをさせるのだった。
夕方になり、盗賊達の修行が終わる頃、金龍が
ルイの前に顔を出して、
「お前達の為にテントを用意したので、今夜から、ここに住んで修行を続けるがいい。
それから、ちゃんと飯は、三食食わせるから、心配しなくてよいぞ。」
と言いながら、ルイと4人を連れて、新しく用意されたテントへと向かって行った。
そして、テントの中には、既に夕食と酒が用意されていたので、その夜は宴会となったのは、言うまでもない。
翌朝、シーナが、金龍達が泊まったテントに駆け込み
「ゴールディ様、エドワードが目覚めました。」
と、報告しに来た。
金龍と、ルイは、急いで、エドワードの居る、女性用の、テントへとかけこんだ。
そこには、大人しく、シェーラの胸に抱かれて、眼を開いたエドワードがこちらを向いていた。
金龍とルイが、エドワードを見詰め、眼を見開いた刹那、シェーラの後に爆発的な閃光を発し、三対六枚の純白の翼を背にしたエンジェルフォームのハクタイセイが現れ。
「エドワードの目覚めを感じたので、急いで転移して来ました。」
「「め、目がぁぁ………」」(ゴ)(ル)
あまりの眩しさに、金龍とルイが、のたうち回っているのを見て。
「兄様にルイ、何で地べたに転がっているのですか?」
ハクタイセイが、輝く背中の翼をたたみながら、不思議そうに、尋ねる。
「ハクよ、いつも言っておるだろう、転移する時は、ゆっくり現れる様にしろと!
お前は、現れ速度で輝き方が違うのだから。」
「あぁ!そうでした。
エドワードの目覚めを感じたもので、つい。」
完全に人化し終わった、ハクタイセイは、エドワードの小さな手に、赤の羽と白の羽を1本づつ握らせて。
「エドワードよ、これが、迷惑なくらい、大きな声で鳴きながら天界を飛び回る、大きな鶏さんからの、プレゼントですよ。」
と言いながら、フェニックスの羽をエドワードに握らせた。
もしかしたら、ハクタイセイを、フェニックスが嫌いなのか?
あやつ、フェニックスの事を鶏と言いおった!そう思いながら、金龍は、立ち上がりながら。
「ハクよ、今回はどの位こちらに滞在できるのだ?」(ゴ)
「さぁ? 仕事を丸投げした部下が、根をあげるまで居ますよ。
10年になるか、20年になるか、まだ判りませんが。」
金龍は、不意にハクタイセイを見詰め、こやつ、色んな二つ名を持っている中に、慈龍と言うのがあるけど、出現の仕方に慈しみは無いな等と、思い薄い笑いを浮かべた。
今回も、ここまで読んでいただき、ありがとうございます。前書きでもかきましたが、第一章は、今回で終了します。一気に5歳ぐらいまで飛ばして、物語を進めたいところですが、もう少し、赤ちゃんのエドワードとお付き合い願います。
第二章の序盤戦は、ルイ達エルフと、盗賊の4人に少しスポットライトが当たります。
では、第二章も宜しくお願いいたします。




