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ロボ子さんといっしょ!  作者: 長曽禰ロボ子
番外編。同田貫組の事情。
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同田貫一家の事情。いけいけ!三人組!

挿絵(By みてみん)

 同田貫(どうだぬき)一家はやくざ屋さんである。

 ただし、どの系列にも入っていない。

 誰と誰が義兄弟でどんな義理があるとか、そんなものは一切ない。

 武闘派どころではない「戦闘のプロ」として、ほんの数年でのし上がってきた新興一家なのである。

 戦闘のプロ。

 簡単にいってしまいがちだが、彼らの場合、正真正銘戦闘のプロである。


 事実として、同田貫一家はえっち星えっち国宙軍宇宙駆逐艦補陀落渡海(ふだらくとかい)の宙兵隊出身者でほぼ構成されているのだ。

 個人の戦闘能力、組織力、武装、練度。

 どれひとつとっても洒落にならないのである。


 隊長、ソウルネーム同田貫正国(まさくに)大尉。


 副隊長、ソウルネーム人間無骨(にんげんむこつ)中尉。

 同田貫さんは代貸と呼びたがっているが、本人が副隊長と呼ばれない限り返事をしない。殴り合いが大好きな同田貫さんの下にあり、なにかといい加減な補陀落渡海宙兵隊にあって組織を引き締める、冷徹でいい加減な人である。


 ところで、宙兵隊出身者で「ほぼ」構成されている、と書いた。

 これには理由がある。

 補陀落渡海の乗員は二〇〇名と少し。

 そのうち海兵隊は十七名。

 大尉に中尉、そして軍曹が三名。明らかにトップヘビーである。

 限られた乗員の中で宙兵隊には一個分隊分しか割けなかったが、いざというときには三個分隊による一個小隊。さらにはそれ以上にも増やすことができるようになっていたわけだ。いわゆる陸戦隊というわけだが、そのための訓練は「強制徴募」として恐れられていた。

 艦内通路で「きみ、いい体してるね」と肩を叩かれ、そのまま訓練に引きずり込まれたのである。

 当然、他の科からは苦情が出たが、「亜光速航行中は暇なんだからいいじゃん。だらけてる若いの、ぼくたちが鍛え直してあげるよ?」と人間無骨さんに言われ、「それもそうだ」とあっさり引き下がったのだという。

 ここで「強制徴募」された宙軍兵は、地球で解散した後も多くが同田貫さんの元に残った。

 異星の地で他にあてがない。

 なんだか食いっぱぐれなさそう。

 隊長はでかいし、副隊長は陰険だし、先任軍曹は無駄に声でかいし。

 そんなわけで宙兵隊および陸戦隊から横滑りで結成されたのが同田貫組なのである。ちなみに「喧嘩が強ければ儲けられる職業が地球にはある」とそそのかしたのは、虎徹(こてつ)さんであったという。

「艦長、おれや部下にショーの格闘技は無理だ。手間をかけず殺す技しかしらんのだ」

「ばっか、そんなんじゃない。一対一でもない。とにかく、殺せ、殺せ! ガンホー、ガンホー!でやっていける職業らしいぞ。ぼーりょくだーん。という。ドラマでやっていた」

「あんた、テレビ好きだな」

 しかしこのあと、当の同田貫さんがヤクザ映画にはまることになる。


 さて、いい加減な情報でいい加減に結成された同田貫組。

 ここに少年が三人いる。

 同じ孤児院出身で、高校にも通わせてくれるというので中学生で体験入隊。

 なぜか補陀落渡海に迷い込み、気づいてみればそのまま発進してしまっていたという、強引な引きのある少年たちだ。

 周囲も扱いに困った。

 補陀落渡海はすでに加速シークエンスに入っていた。

 亜光速への加速だ。

 途中で中止すると補陀落渡海が負荷で空中分解してしまいかねない。

「おまえたちもこの船で地球に行く。覚悟しろ」

 虎徹さんに言われた三人は、むしろ歓呼したのだという。

 三人は士官候補生見習としてそれぞれ士官の元につくことになった。


 のちにソウルネーム鳴神(なるかみ)となる少年は、艦長虎徹さんに。

 のちにソウルネーム歌仙(かせん)となる少年は、副長清麿(きよまろ)さんに。

 のちにソウルネーム千両(せんりょう)となる少年は、機関長宗近(むねちか)さんに。


 そしてあっという間に三人は宙兵隊に「強制徴募」された。朝昼晩と付きの士官に教育を受け、空いた時間は軍曹に無闇にしごかれ。

 地球では、そのまま同田貫組に。

 ほんの少年だった彼らは、今やたくましい男に成長している。


 たぶん。


「地球の女の子って、かわいいよな」

「かわいいよな」

「でもいないよね、この村」

「いねえよな。そもそも人類いねえよな、この村。見渡す限り田んぼと山だもんな」

「若さに不自由なさっているご婦人はそこそこいるけどな」

「それ、政治的に正しい表現のようで、よけい酷くなってるよな」

「でもかわいいアンドロイドは多いよね。RH系はおいといて」

「かわいいよな、RH系はおいといて」

「かわいいけどさ、アンドロイドだろ。恋人になれるわけじゃねえじゃん」

(あね)さんは隊長の奥さんじゃないの?」

 三人の会話が止まった。

 これは微妙な問題なのだ。

「知っているか。姐さん(つまりまあ、一号機さんのことである)は、本来は戦闘ロボとして招かれたんだ」

「まあ、強いよね」

「おれたちが作戦行動とっている間、この本部を護る。なんせ、両腕にガトリングガン装備している上に剣の達人でもあるからな、ヤクザの襲撃くらいならひとりで充分だ」

 実際の一号機さんは、その間、高級オイルを呑んで酔っ払っているのだが。

「よく考えたら、それ、姐さんをよその組に突っ込ませればいいんじゃね」

「よく考えなくてもそうだけど、それじゃ隊長たちのバトルへの無駄に強いデザイアはどこに行くんだって話だ」

「上の人たち、喧嘩できりゃあいいだけだもんな」

「やってられないよな」

「やってられないよね」

「強い上に美人だよね、姐さん」

「三号機さんもきれいだよね」

「きれいって表現を使うなら、板額(はんがく)さんがやばくね」

「日立のフローラⅡも捨てがたいな。なんともいえない素朴さというかダサさというか。角の家にいるぞ。船務長の家なんだってな」

「士官はいいアンドロイド雇えていいよな」

「二号機さんの名前が出ないね」

「出ないな」

「出ないな」

「やっぱりいちばんは姐さんだろう」

「スリムで長身で、もちろん和服も似合うけど、実はドレスも着ちゃうって知ってた?」

「知ってた」

「知ってた」

「たまらんよな」

「たまらんよな」

「おっぱい小さいのだけが問題だよな」

「だよな」

雪月(ゆきづき)ってさ、どんなファッションも似合うように、わざとおっぱい小さくしてるんだってさ」

「馬鹿じゃねえの」

「馬鹿じゃねえの」

「でも、おっぱいなら板額型二番機さん、すごかったな」

(ともえ)さんな。たまらんよな」

「男の浪漫だよな」

「やっぱり二号機さんの名前が出ないな」

「出ないな」

「出ないね」


「黙って聞いてりゃ、おまえら、まったく成長してないのな」


 ザッ!!

 突然割り込んできた声に、三人組は弾かれたように立ち上がった。

「代貸ッ!」

 鳴神くん、正面を向いたまま声を張り上げた。

「いつからそこにいらっしゃったのでありますか、サー!」

 人間無骨さん、ゆっくりと立ち上がり三人組を眺めた。

「いつからって、ほぼ最初からだ。おまえら、おれを見てなんだと思ってたんだ? オブジェか? おれはそんなに影が薄いか?」

 同田貫組は廃校を本部として利用している。

 ここは離れだ。

 雪深い冬に通えなくなる子たちのための宿舎だったらしい。そのまま三人組の宿舎としてあてがわれている。

 三人組は別にサボっていたわけじゃない。

 同田貫組制式銃M93Rの分解結合の訓練を繰り返していたのだが、ルーティンを繰り返すことでなにやらトリップしてしまう。陰険さで定評のある人間無骨さんがやってきて隣に座っても、誰も気づかなかったのだった。

「陰険とかいうな」

 いつもの眠たそうな半眼の眼で人間無骨さんが言った。

「それとだ。こら、鳴神。だれが代貸だ。副隊長と呼ばんか。いい加減にせんと殴るぞ」

「サー、イエッサー! 力いっぱい殴ってから言わないでください、サー!」

「ふうん、そうか。一号機さんはおっぱい小さいか、歌仙」

「サー、イエッサー! 自分は今、死にたいであります、サー!」

「一号機さんはきれいか、千両。好きか?」

「ノーサー! いえ、きれいです、すごくきれいです、大好きです、サー! いっそ殺してください、サー!」

 人間無骨さん、三人組をねめまわし、テーブルにネジを一個置くと背を向けた。


「今朝な」

 と、人間無骨さんが背中で言った。


「隊長との打ち合わせに一号機さんも同席していてな。わかる?」

「サー?」

「それ、一号機さんが座ったソファーに残されてたの。それ、一号機さんのネジ。わかる?」

 そして人間無骨さんは去って行った。


 残されたのはリビドーにあふれる少年三人とネジである。


■登場人物紹介・アンドロイド編。

ロボ子さん。

雪月改二号機。長曽禰ロボ子。マスターは長曽禰虎徹。

本編の主人公。買われた先が実は宇宙人の巣窟で、宇宙船を廻る争いに巻き込まれたり、自身も改造されて地上最強のロボになってしまったりする。

時代劇が大好き。通称アホの子。


一号機さん。

雪月改一号機。弥生。マスターは同田貫正国。

目と耳を勝手に超強力に改造して、一日中縁側で村を監視している。村の中で内緒話はできない。

和服が似合う。通称因業ババア。


三号機さん。

雪月改三号機。私の天使。マスターは源清麿。

小悪魔風アンドロイド。マスターが彼女を溺愛している上に中二病小説家で、それにそったキャラにされている。

基本的にゴスロリ。描写は少ないが眼帯もつけている。


板額さん。

板額型戦闘アンドロイド一番機。

高性能だが、乙女回路搭載といわれるほど性格が乙女。三池典太さんと付き合っている。浮気などしたら許さない。


■人物編

長曽禰虎徹。(ながそね こてつ)

えっち星人。宇宙艦補陀落渡海の艦長。宙佐(少佐相当)。

ロボ子さんのマスター。地球に取り残されるのが確定した時も絶望しなかったという、飄々とした性格。生きることに執着しないので、ロボ子さんからときどき叱られている。


三条小鍛治宗近。(さんじょう こかじ むねちか)

えっち星人。機関長。宙尉(大尉相当)

長曽禰家の居候。爽やかな若者風だが、実はメカマニア。ロボ子さんに(アンドロイドを理由に)結婚を申しこんだことがある。


源清麿。(みなもと きよまろ)

えっち星人。副長相当砲雷長。宙尉(大尉相当)

三号機さんのマスター。補陀落渡海を降りた後、小説家に転身。現在は超売れっ子となっている。三号機さんを溺愛する中二病。


同田貫正国。(どうたぬき まさくに)

えっち星人。宙兵隊隊長。大尉。

一号機さんのマスター。補陀落渡海を降りた後、任侠団体同田貫組を立ち上げ組長に座る。2Mを軽く越える巨体だが、一号機さんに罵られるのが大好き。



ちなみに、ロボ子さんの呼称は

虎徹さんが「ロボ子さん」

宗近さんが「ロボ子ちゃん」

それ以外は「二号機さん」で統一されています。もしそうじゃないなら、それは作者のミスですので教えてください。


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雪月改三姉妹。
左から一号機さん、二号機さん(ロボ子さん)、三号機さん。
雪月改三姉妹。
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