第五話 面会人は、勇者の仲間
世界の言葉との通信が切れたあと、一人牢の中でスキルの特訓をしていた。
お陰でこの牢屋にいた過去の人を、見ることができた。
いやまぁ別に大したことはないが・・・。
「暇だなぁ」
牢屋ってずっと居続けると参るな。
いろいろ試して、なんでこんなスキルが備わったのか考えてみた。
【過去探査】は、多分こっちに来てずっと向こうの事ばかり気にしていたから・・・。
ってことはないのかもな・・・。
ぶっちゃけこのスキルのついては、全然分からん。
【研究者】は、大方予想をつけた。
恐らく向こうでの行動が理由だろう。
ゲームの相手や情報を分析とかしてたからな。
多分それが理由。
【複製】もそんな感じだろう。
つまり全く分からないってことだ。
まぁ考えても無駄なことは考えないでおこう。
・・・・・・・・・・
それからまた時間が経ち。
カッカッカと誰かが近づく足音が聞こえる。
「・・・」
足音が牢屋の前で止まる。
「・・・囚人番号3067番!出ろ!面会だ!」
牢屋のドアが開く。
「面会?」
そんな馬鹿な、知り合いなんて居るわけないのに?
疑問に思いながらも牢屋から出る。
その後看守に囲まれて面会室に連れて行かれる。
「あのぉ・・面会ってどんな人が?」
質問をするがまたも無視だ。
この人たちには、質問するだけ無駄か・・・。
しかし、一体どんな人が面会に?
・・・・・・・・・・
面会室に到着。
看守の一人が扉を開く。
面会室の中には、綺麗な女性と帽子を深くかぶる男性。
女性の方は魔法使いか何かか?服装がそれっぽい。
男の方は中世ヨーロッパを彷彿とさせる服装だ。
この人たちが面会者か?
男と女を目の端に捉えながら、椅子に座る。
「・・・えぇーっと」
椅子に座った後、誰も何のモーションも起こさない。
呼び出しといて沈黙かよ・・・。
一人重い空気の中でオロオロしていると、綺麗な女性が口を開いた。
「・・・ねぇ貴方、単刀直入に聞くけど・・・」
そう言って目を閉じ、看守に向かって手で席を外せと合図を出す。
看守は、その合図に素直に従い部屋から出ていく。
それでいいのか看守方・・・。
犯罪者と面会人を部屋に残して出て行っちゃダメでしょう。
そんな風に看守に呆れていると、女性がまた口を開く。
「・・・貴方、異世界人でいいのかしら?」
なに!?呼び出して何を聞いてくるのかと思ったら。
俺が異世界人かどうかだと?
この人達は、何か知っているのか?
「それを聞いてどうするんで?・・・て言うか、アンタ等は何処の誰なんですかい?」
とりあえず質問を質問で返す。
「そうね、失礼だったわね。では、まずは自己紹介から始めましょうか」
そう言って女性が立ち上がる。
「私は、シャミア・ルーテス。こっちは、カルデン。よろしくね」
「・・・」
女性が自己紹介をした後、握手を求めてくる。
男の方は無口なのかな?
「はぁども、俺は、朝倉遥ですよろしく」
あっ普通に名乗っちゃったけど大丈夫かな?
「そう、その名前やっぱり貴方は、タクミと同じ異世界人ね」
シャミアさんが気になる言葉を言う。
「・・・今、タクミと同じって・・まさか!俺の他にも居るんですか!?」
「えぇそうよ、気になるかしら?」
シャミアさんがそう言って微笑む。
「まぁ気になりますよ・・・こっちきてずっと牢屋暮らしですからね」
外の情報は看守をとうして聞いていたが、俺の他にもこっちに飛んできた奴がいるとはな。
「ふふ、実はね?私達は、異世界から飛ばされた人を保護して回っているのよ」
なるほどそれで今度は、俺を保護しに来たってことか?
「そいつは、大変ですな?流れ的には、今度は俺を?」
「えぇそう言う事よ。それでね?貴方元の世界に帰りたいでしょ?私たちは、その手伝いもしているのよ」
元の世界・・か、考えてなかったなぁ。
てか別に戻らなくても・・・。
「私達と来れば比較的早く帰ることが出来るはずよ!」
自信満々に言うシャミアさん。
「何か帰る目処でもあるんですか?」
「ふふ、それはね?この計画の立案者が勇者タクミだからよ!」
あぁーそういうことかぁ。
つまり今のところ何も進展はない感じかな?
「どうかしら?いい話だと思わない?勇者の保護下に入るのよ?」
確かに、何も知らない状態で異世界に放り出されるよりかは安全だろうけど・・・。
「まぁ美味しい話ではありますが、遠慮しておきますよ」
縛られるのとか好きじゃないしな。
「なっ本当にいいの!?こんなチャンスそうそうある物じゃないわよ!?」
シャミアさんは、驚いているようだ。
「あのですね?別に俺、元の世界に帰りたいわけじゃないんでね?」
「いや!でも勇者の保護下に入れるのよ!?」
「誰かの下に付くのとか好きじゃないんですよねぇ」
「・・・はぁ・・・わかったわ」
そう言って立ち上がるシャミアさん。
「あっ!ちょっといいですか?」
立ち上がるのを静止させる。
何?という顔でこちらを見てくる。
「その杖貸してもらってもいいですかね?」
一瞬だけなんでと言って杖を借りる。
杖を握って頭の中で【過去探査】を発動させる。
すると杖の記憶が頭に流れてくる。
そして同時発動させていた【複製】と【研究者】により杖の記憶から、魔法を習得する。
どうやらシャミアさんは、水系の魔法と回復系が得意なようだ。
記憶を見たのはほんの一瞬だたらしく、杖を返すと不思議な顔をされた。
「さて、それじゃ準備しなさい」
シャミアさんが当然のように話しかけてくる。
「えっ?でも俺勇者の下には行かないって・・」
「えぇそのことはもういいの。その事じゃなくて、この世界で生きていくって言うんなら、貴方に色々教えなきゃでしょ?」
マ、マジでか!?
「まぁ牢屋生活がいいって言うなら止めないけど?」
意地悪な笑顔をしながら歩き出す。
「あっ!ちょ、ちょっと待ってください!行きます!行きますから!!」
慌てて後を追おうとする。
けども、すっかり忘れていた、今の俺の格好や手錠をどうにかしなきゃじゃん!!
「看守さん彼の手錠を取ってもらえるかしら?」
シャミアさんが看守に頼んでいる。
もしかしたら最初から俺を出すつもりだったのか?
「服は、カルデンが用意してるわ」
「・・・」
なんて用意周到なんだ・・・!
まぁ保護してまわってるらしいし、慣れてるのかも。
そんなこんなで俺は、牢屋暮らしとさよならすることになる。