第十話 鍛冶屋に行こう!
シャミアさんが支度を済ませ店に降りてくる。
と、同時に朝食を済ませて、店を出る俺。
「お前、そんなに腹減ってたの?」
俺に付き合って、珈琲を御代わりし続けたカルデン。
何だかんだで良い人だ。
「んーまぁ?なんか、食っても食っても、食った気しないんだよねぇ」
全然腹がふくれないんだよなぁ・・・。
実を言うとまだ食い足りないし。
「さぁさぁ、二人とも!準備できてるなら、早く行くわよ!」
先陣をきって歩き出す、やけにノリノリなシャミアさん。
「何か、機嫌良いですね?」
別に聞かれても良いんだが。
なんとなく、小さな声で隣を歩くカルデンに質問する。
「・・・今から向かう鍛冶屋にはな?」
俺に合わせて、声のトーンを下げるカルデン。
ヤバいッ!!メッチャ良い声///
俺が女ならコロっとイッちゃいそうでありますッ!!
「・・・っと言う事だ」
変な妄想をしてたら話が終わってしまった。
「あっ!すいません、話聞いてませんでした!・・・も一度ヨロシ?」
「聞いといてかよ・・・つっても別に特別な理由は無いぞ?」
そう言って、カルデンが語り出そうとした時・・・。
「ちょっと二人とも?なにこそこそ話してるの?」
前を歩いていた、シャミアさんが不思議そうに戻ってきた。
「すまんすまん、コイツが色々質問してくるんでな適当に返事をしてただけだ」
適当かよッ!?
「・・・行けば分かる」
そう言ってカルデンは、帽子を深く被り、何事もなかったかのように歩き出す。
「もしかして、めんどくさい?・・ねぇめんどくさい!?」
そんなやり取りをしながら歩くこと数十分、鍛冶屋のある通りに到着する。
たしか此処は、西通りのデリアス通り、とかだったはず。
「ほぉーデッケェ」
見渡す限りに様々な工房が建ち並ぶ。
革職人や武器職人、錬金術師?他にも日用品を製作している工房まである。
ここって、工業地区的な所かな?
それから、歩くこと約30分、ついにお目当ての鍛冶屋に到着した。
「たのもーッ!!!!」
道場破りでもするかのような勢いで、店の扉を開け放つシャミアさん。
「・・・やっぱり、テンションおかしいですよね?」
「・・・いつもの事だ」
帽子を深く被りそっぽを向き、そう答えるカルデン。
いや、いつもは、もっと落ち着いてると思うんだけど?
こっちが素?いや、まじか。
シャミアさんに続いて、俺とカルデンも店に入る。
店に入ったものの、全く人の気配がしない。
留守かな?でも店の鍵開いてたし・・・。
店内を見渡しても、人らしき影も形もない。
と、思っていると店の奥で何かが動いた。
店の人かな?・・・あ、もしかしてイベント的な?
実は、店の人は、魔族的な何かに殺されてて!
ちょうどその魔族的な何かが、まだ店に居るときに来ちゃった的な!!
やっべ!ここで会った、魔族的な何かが、後に世界を狂わす歯車的な存在で、これは序章にすぎない・・・的なッ!!
展開まで読めたぜ!
・・・てか、的なって言葉多いなッ!
そんな妄想を広げながらニヤケていると、それは、勢いよく、シャミアさん目掛けて、飛び出してきた。
「ニャーッ!!」
勢いよくシャミアさんの胸に飛び込む。
「ッ!?・・・あっ」
一瞬驚いた表情を見せた後、飛び込んできたそれに気づき、表情が緩む。
「こんな所に居たのね!」
そう言って抱き締めるシャミアさん、抱き締めるとそれが胸に沈む。
何と羨ましい光景ッ!!
お年頃な男子には、堪えるぜッ!
ちなみに、鳴き声でお気付きかと思うが、それの正体は、猫である。
えぇ全く、普通の、猫である。
「あのぉカルデンさん?もしかして、テンションおかしかったのって・・・これが理由?」
少しカルデンに近寄りながら話しかける。
「確かにアレも理由の1つではあるが、根本的には、別だ」
帽子を深く被っているのでよくは、分からないが多分困った声だったと思う。
そもそも、根本的ってなんだよ?
そんなやり取りをしていると。
「おいおい、にゃーさん急に慌ててどうしたんだ?」
店の奥から何やら、渋いおっさんの声が聞こえてきた。
「もしかして客でも来てんのか?おいおい、今日は、休みだって店先に出してるハズだぜ?」
ゆっくりと、かなりラフな格好の、ほぼ下着姿じゃないのか?って格好のおじさんが出てきた。
「おいおい、やっぱ客来てんのかよ。なんだお前さん等、外の看板が見えねぇのか?それとも字が読めないのか?」
やれやれと言った具合にカウンターを越えて近付いてくる。
「お久し振りです、リーマス」
おっさんに対して笑顔で挨拶する、シャミアさん。
すると、声に気づいたおっさn・・いや、リーマスさんが、シャミアさんの方を見る。
「んー?その声は?もしかしてオメェ、シャルか?」
「はい!シャミア・ルーテスです!」
「おいおい、元気だったかよッ!」
「えぇ、リーマスさんも元気そうでよかった」
そんな二人のやり取りを見つめながら。
「・・・ねぇねぇカルデン、もしかしてリーマスさんって恋人か何かで?」
おっさんだけど、むしろそれが良かったりするって言うケースかもだし?
「・・・いや、リーマスは、シャルにとって親も同然の男だ」
親も同然?ってナニ?
「シャルが居るってこたぁ・・・」
シャミアさんと最近どうなんだ?みたいな話をしていたリーマスさんが、何かに気づいたようで、顔をこちら見向ける。
そして、俺と目が合うや否や。
「・・・ッ!!そこに居たかッ!!ドぐされがァァァアアッ!!」
突然掴み掛かってきた。
「ちょっ!?えっ?な、ナニ?何々?」
「貴様ぁ性懲りもなくッ!また家の敷居跨ぎやがったなッ!!この!腐れ聖霊がァァァアアッ!!」
「ちょっ!?俺、カルデンじゃないですよッ!!!」
助けてカルデン!そう叫びながらカルデンの方を向くが。
「って居ねぇしッッ!!!」
あの野郎逃げやがったなッ!!
てか、いったい何をしたんだアイツ!ここまで怒り狂うってよっぽどだぞ!
リーマスさんが、いつの間にか手に取ってた刃物を掲げる。
「次、敷居跨いだら殺すって言ったよなぁ!?」
「ま、まってまってッ!人違いッ!人違いですぅッ!!」
ギャー殺されるーッ!?と叫んでいると、やっとシャミアさんが仲裁に入ってきた。
「リーマスさん、その子は、カルデンじゃないわよ、訳あって面倒見てる子なの。それと、カルデンは、外にいるわ」
そう言って入り口の方を指差す。
そこには、平然と、いつも通りに装う、カルデンが居た。
「・・・ホントにソコに居るんだな?」
何故か、シャミアさんに確認をとる。
「えぇ居るわよ」
当然のように答えるシャミアさん。
そして、少しずつ店から距離をとるカルデン。
「そうか・・・すまんかったな嬢ちゃん」
俺の顔を、目を凝らして、よく見てから謝罪したリーマス。
んーまた女に勘違いされた。
「さて、・・・てめぇ俺にその面見せんなって言ったよなぁ!?」
すぐさま標的を変更、カルデンに向かって飛びかかった。
「チッ!シャルのヤツ余計なことをッ!上等だッ!掛かってこいよクソジジィッ!」
突然目の前で老人と聖霊のバトルが勃発!
「の前に、リーマス、ニーニャは、居るかしら?彼女に依頼を頼んでおいたはずだけど?」
「ニーニャ?あぁアイツなら裏の工房に居るぜ?最後の仕上げをやってたはずだから、多分終わってんじゃねぇか?」
リーマスさんが、動きを止めてからシャミアさんの質問に答える。
そして、バトル続行。
「そっ分かったわ、それじゃ行きましょうか♪」
シャミアさんは、そのまま店の裏に向かって歩き出す。
えっ?行きましょうかって、えっ?カルデンは?えっこのまま?
「いいんですか?二人の事止めなくて」
「あぁいいのよ、ここに来たらいつもあぁだから」
気にしない気にしない、と言って俺の手を引く。
「まぁシャミアさんがそう言うなら、気にしないけど」
一度二人を見てから気にしないようにシャミアさんの方を向く。
向いたときに、二人の方から、物凄い爆風と爆発音がしたが、シャミアさんが気にしていなかったので、とりあえず聞かなかったことにした。