第九話 本日の予定
[翌朝]
小鳥のさえずりで目を覚ました。
昨晩は、驚くほどぐっすりと眠れた。
そのお陰か、頭がスッキリしていて実に気分がいい。
ウキウキしながら鼻唄混じりに食堂に向かう。
そうそう、ここの宿は、酒場としても、食堂としても利用可能で。
早朝だと、食事処としての客が多いため食堂メインで活動しているらしい。
食堂の扉を開くと既に沢山のお客で賑わっていた。
「おはよ、よく眠れたかしら?」
二人を探して、辺りを見渡していると、既に朝の珈琲を頂いた後のシャミアさんに声をかけられる。
「おはようございます、早いですねぇ御二人さん」
あくびをしながら二人と同じテーブルに座る。
同時に適当な朝食を注文する。
「んで、何話してたんですか?」
「今日の予定を話し合ってたとこよ」
「今日の予定?」
そう言えば、寝る前に、明日も早いって、言ってたっけ?
てか、今何時なんだろ?時計とかあるのかな?
時計を探して、辺りをキョロキョロしていると。
「おやおや?魔導師さんにッ!精霊君じゃあないのさぁッ!」
派手な服装の、声の大きなおっさんが近づいてきた。
「あら?、マーティじゃない?久し振りね」
どうやら、知り合いのようだ。
こんな個性的な、知り合いもいるんだな?流石は、勇者パーティー。
「元気だったかい?魔道士さん?」
「えぇこの通りピンピンしてるわ♪」
笑顔で答える、シャミアさん。
「ハハハハハッ!元気なことは、良いことですッ!・・ところで?」
会話の途中で俺を見る。
やっぱ気になるか?
「あぁ紹介するわ、この子は、ハルカ、訳あって面倒見ることになった子よ」
「ほぉ!ハルカ君か!私は、マーティと言う!曲芸団をやっていてね!良かったら見に来てくれたまえよ!」
そう言って帽子を取って握手を求めてくる。
「曲芸団?」
曲芸ってことは、サーカスかな?
「まぁただ、曲芸団といってもウチは、色々な事に手を出していてね!猛獣ショーや奇術師によるパフォーマンス、後見世物小屋って言うのもやってるよッ!」
「・・・曲芸団というより何でも屋みたいな感じだな」
「ハハハ!言えてます!いい例えですねッ!」
へぇー、この世界にも、あるんだなぁこう言う仕事。
「興味が出てきたかい?それならコレをあげよう!お近づきの印にッ!」
マーティが、懐から、紙切れを三枚取り出す。
「入場チケットだ!何時でも見に来てくれたまえ!」
「おぉ!ありがとうございます!」
チケットを受け取ると、それじゃあね!と直ぐ様立ち去っていく。
「賑やかな人でしたねぇ」
「えぇ彼は、賑やかな事だけが取り柄だからねぇ」
カルデンが首を縦に振って肯定しながら、珈琲をおかわりする。
「あっ!そういや、今日の予定ってどうなってるんですか?」
マーティーが介入している間に来ていた朝食を食べながら尋ねる。
ちなみに、朝食を適当に頼んだのは、悔やむことになった。
まさかの、昆虫料理と言うヤツだ。
グロイ!そしてキモイ!
正直食べたくない。
でも頼んだ手前食べない訳にもいかず、チョッとだけ口に運んでみると、あら意外!何気に美味しいじゃないの!
虫の幼虫だと思うがプリプリで歯応えもいいし、噛めば中から濃厚な甘いクリームのような物が口の中に広がる!
そう言えば向こうでも何気に蜂の子とか食べたりするし、美味しいらしいし。
食わず嫌いだったのかもしれん。
「ん?えぇーっと今日の予定は、これから鍛冶屋に行きます!」
昆虫料理に夢中になっていると、先程の質問に返答が来た。
鍛冶屋だと?
これまた、ワクワクな場所ですな!
「鍛冶屋の紹介と、注文してた物を、取りにね♪」
「・・・その後は、少し街をブラついてから、お前に、魔法と剣術を教えてやる。」
「・・・マジで?マジでッ!?」
ついに来たぜ!この時がッ!
魔法は、シャミアさん経由である程度は、覚えたけど。
「嬉しそうね、でも、街中では、教えられないから、この辺で暴れてもいいところだと・・・魔物の森ぐらいかしらね?そこに行きましょうか?」
「あぁ、そこがいいだろう。シャルの魔法は、広範囲系が多いからな、物を壊しても問題ないところがいいだろう」
「剣術って誰が教えてくれるんです?」
シャミアさんは、魔道士だしカルデン?
でもカルデンって精霊なんだよな?
剣使えんのかな?
「安心しなさい、カルデンの剣技は、一等騎士に匹敵する実力が有るわ」
「えっ?は、はぁ?」
・・・一等騎士?
それってすごいのか?
「あら?分かってない?」
「・・・えぇーっと、はい」
「まぁ、大船に乗った気でいなさい」
そう言うと、シャミアさんが立ち上がる。
「それじゃ支度したら出発ね♪朝食、早く済ませるのよ?」
「ふぁーい」
シャミアさんは、そのまま一度部屋へと戻っていった。
「んじゃ、とりあえず朝食をとっとと済まして店の前で待機しとくか・・・」
その後、結局シャミアさんが降りてくるまで、朝食を食べ続けた。
もちろん、御代わりは、三杯までだ!