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ヲワリノウタ

作者: 香和 心炉

序章 マツリゴト


冬も、もう終わる時期。わたくしは今日もマツリゴトを楽しんでおります。あなたさまは、元気でいらっしゃいますでしょうか。冬景色のすっかり凍ってしまった小池の薄氷も溶けてきて、桜のつぼみも膨らんできました。春が待ち遠しいです。

それでは、また。


一章 『生に生き 死を恐れるのが 己なら 生を望まず 生きるも己』


今朝、主人が亡くなりました。自害でございました。

主人が亡くなった今、わたくしはどうして生きていけばよいのでしょう。

わたくしも自害しようかと、短刀を持ったのですが、どうしても手が動きませんでした。

そこで、村で有名な殺し屋に、頼んでみたのです。

少し、いや結構変わったお方でしたが、腕は確かです。

あの方は、わたくしに詩を詠うように頼みましたので、これを残しわたくしは主人の元へと帰りたいと思います。

それでは。


二章 『この世中 あるのは自身 心だけ 目にうつるもの ないものばかり』


どうしてなにも伝わらないのでしょう。権力なんて関係ないとあれほどいったはずですのに。

わたくしの友は三日前、亡くなった主人を追って自害致しました。あれほどの愛する人を持てた友が本当に羨ましかった。

わたくしは、あの子を見習って愛を死で表してみようと思います。

友の自害を手伝って下さった、村で有名な殺し屋さんに、手伝ってもらうことにしました。殺し屋はわたくしに詩を詠うように頼みました。わたくしは、貴方のためにこの詩を詠い、死にます。

お元気で。


三章 『光差す 方にありける 運命に ヲワリ待つ者 その時を待つ』


「今夜、あなた様を殺しに参ります。よろしければ詩でも詠って待っていて下さい。それでは、今夜に。」

こんな手紙が届きました。死を望んでいたわたくしにとっては、嬉しいお知らせでございます。生きる意味がなく、死を望んでいたわたくしには、人生の光といっても過言ではありませぬ。「詩を詠って」ということは、村で有名な殺し屋さんが来てくださるのでしょう。それならば、わたくしも安心して死ねましょう。

そろそろ来るはずなので、この辺りで。


四章 『天の者 降りるトキマに 見えけるは 紅の彩り 降りかかる月』


もう生きることなど出来ませぬ。友三人を亡くし、主人や子供を残してでも、わたくしはあの人たちと生きる運命なのです。

あの人達はとてもいい人でした。なのに、いくら自害とはいえ、殺し屋に殺されたなんてわたくしは、絶対に許しませぬ。

殺し屋にお願い致しました。

あの方は、不思議な詩を詠って下さいました。本当に素晴らしいお詩でした。するとなぜだか、あの人たちが綺麗な紅の衣装を待とって迎えに来てくださったのです。

あぁ、わたくしは逝きます。

あの人たちと、悔いなんてございませぬ。

待ってください、今逝きますから。


終章 『桜花 散り際に見る 風景に 残る涙と ヲワリノウタ有り』


わたくしに自害を頼みにきたひとは初めてでした。本当に驚きました。わたくしに、ヲワリノウタを詠えと言ったのです。あの人は、そのあとわたくしに、自分を殺してわたくしも死ぬように言いました。

わたくしはそのお願いを承知し、ヲワリノウタを詠って差し上げました。

すると、あの方は「はやく、早くわたくしを殺して下さい。あの人たちがわたくしを、迎えに来てくれたのです。早く、今すぐに。」

それは、私が詠ってすぐのことでしたので、本当に驚きました。

わたくしの死ぬ覚悟はございましたので。この人を殺し、わたくしはやっぱり、マツリゴトの中で自害致しますことをお決めしました。

いま、会いに逝きます。


あまり、昔の風景が浮かんでこないかもしれませんが。

興味を持っていただけたら嬉しいです!

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