村長宅、襲来
シリアスっぽくしてみましたが。
今回誰も喋らないなぁ。
魔物について説明しよう。
魔物と言うものは厳密には生き物ではない。
<生物で無くなった後>に魔物になるのだ。
例えば虫等の死骸を核に魔素が結晶化する。
それが周囲の物質を取り込み魔物化するのだ。
打ち倒した後は無害化した魔素が結晶化した魔石を得る事が出来る。
故にどちらかと言うと現象に近い。
魔物化へのしやすさは対象となる核が小さいほど頻発しやすくなり
その動作形質は核となった死骸などに大きく依存する。
したがって核となるものは虫もしくは小動物などが大半で
大きくとも犬猫等の死骸がたまに見られる。
前述の通り周囲の物質を取り込み巨大化するために
中型の動物からなった場合は牛や熊ほどの大きさになりコレは脅威である。
もちろん『通常の場合であれば』だが。
場所は変わって村長宅。
村長アルベルトは届いた試作品を前にどうしたものかと思案していた。
大規模な計画である。
ある程度のサンプルは取っておくとしても放出される試作品もかなりの量になる。
彼の家が既にいくつかの計画にかかわっている事も手伝いそれなりの量の試作品が届けられていた。
「コレは洗面器にするには小さいし皿にするのもなぁ。水か何かの器に…」
手にしているのはジョージ作水の沸かない鍋である。
他にも兜を鍋に直したり一通り試したりしている。
何しろ性能はいいがその性能がチグハグなものが多い。
知らないで使う事は危険に思われたのだ。
例えば携帯型の竈。
用は携帯コンロなのだがコレが酷い。
火の調整が聞かず鍋が溶けてしまう。
熱源は魔法の産物だそうだ。
鍛冶に使うにしても使いづらいのではなかろうかと言う熱量は感嘆に値する。
他にも盾。
尋常じゃない防御力を誇るがその大きさに比べとにかく重い。
見た目は人が持つようの大きさなのだが大人三人でやっと運べる重さだ。
既に盾ではなく壁かなにかにしか使えない代物になっている。
そういった品々やそれに使われていた梱包材を元に内装を仕上げる計画を起てる。
幸い量はあるのである程度の目処は付きそうだ。
と、そこで騒がしくなる。
魔物だ。
平和なこの村にも魔物の被害がないというわけではない。
そのために少なくはあるが自警の容易もしてあるし今回は計画関連の軍人もいる。
落ち着いて避難を指示すると軍に出動の要請をする。
周辺の治安維持も任務の内の彼らはすぐさまコレを承諾。
なれたもので瞬く間に鎮圧する。
だがそこで終りではなかった。
「なんだこれは。」
誰が言ったかはわからないが思わず言葉が漏れる。
異形である魔物よりもはるかに異形。
墨で塗られたように黒く光を返さずその形は子供が書いた絵より酷い。
四角や三角をただ繋げただけのようなそれはとても何らかの亡骸を核にしたとは思えないものだった。
強い。
木々をなぎ倒し石垣を砕いた。
速い。
予測できない動きと速度が合わさり対するものを困惑させる。
硬い。
鍛え抜かれた槍が剣が弾かれる。
偶然にもこの村に訪れた異形。
それこそが魔物の王の影響その一端である。
精強なる軍人達が翻弄される。
魔物は意思があるのか無いのかわからない動きを見せ暴れまわる。
決め手に欠ける。
剣も槍も弾かれダメージが通っているのかすらわからない。
魔物が不意に進路を変える。
鎮圧後に兵達に礼を言おうとしたアルベルトがそこに居た。
手に持っていた何かを構えるも人生の終わりを覚悟する。
魔物の鋭利な部分が彼の胸に迫る。
衝撃と金属音。
何とジョージ鍋が攻撃を防いだのだ。
串刺しにならずにすむも吹き飛ばされるアルベルト。
試作品の山に叩き込まれ雑多なものが撒き散らされる。
その衝撃で何かが飛び出し魔物の関節?のようなものに引っ掛かる。
なおも動き回る魔物の怪力によりそれは歪み暴走する。
ジョージ作携帯竈だ。
攻撃の通らなかった魔物の体をそれは赤熱を上げ溶かしだす。
やがて何か叩き割られるような音を上げ魔物は沈黙する。
九死に一生を得たアルベルトは後に
それが魔物の王の影響によるものだと聞き事態の深刻さを痛感するのであった。