今度は見ない。必ず見ない
からん
何かがコンクリートに落ちた音がした、思わず振り返って地面を覗く。
昨年祖父が亡くなった、祖母はひとりで住んでいるので、前より頻繁に家を訪れるようになった。
「あーちゃん?昨日開いた眩しいやつは持ってきてくれた?」
私は頷きながら「百合の香りのする眩しいやつだよね?」と問う
祖父と祖母に可愛がってもらったものの、御役目を果たすことになったのも、また祖父と祖母のせいで、私の意識は混乱していく。
「あんなに言ったのに、忘れてたね?」
祖母に言われぎくりとする。
鳥居の向こうのあの景色を思い出したからだ、沢山の、数え切れないほどの地蔵。
くどくどと祖母の説教に思わせない、優しい話が続く。
結局説教だ。
「あっちに行ったらおかしくなるんだもん」
がたん。
何かがひっくり返る音がした。
私は思わず頭を庇った。
透明だった水が煤けたような色に変色している。
水道から。
ぴちゃん。
と水滴の音がした。
祖母の家から出る、祖母は
「またうまくいったときは、いらっしゃい」いつもの台詞なのに毎回鳥肌が全身にびっしり立つ、足の裏まで。
祖母の真っ黒だった目に、一瞬だけ光が刺した。
ほんの一瞬。
からん。
コンクリートの上に、またなにか落ちた音がした。
今度は見ない。
必ず見ない。
閉じてもいい?は閉じなくてもいいに変わった。
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