12"最初の違和感
その一団は、昼過ぎに村へ入ってきた。
旅装ではあるが、行商でも巡礼でもない。数は五人。全員が武器を身につけ、周囲を警戒するように歩いていた。
「……ここか」
先頭の男が、村を見渡して呟く。
畑では作業が続き、子どもたちは道の端で遊んでいる。警戒の様子はなく、見張りもいない。
「拍子抜けだな」
「だからこそ、だろ」
後ろの男が低く返す。
「本当に何かある」
彼らは宿を求め、村人に声をかけた。
「この村、魔物が出ないって本当か」
「最近は、見てないな」
それ以上、村人は答えない。
曖昧な返事に、男たちは顔を見合わせた。
「隠してるな」
「まあ、いい」
その日の夜、焚き火の周りで彼らは酒を飲んだ。
「奇跡の村だって話だったが……」
「奇跡を見せるのは、人じゃなく場所かもしれん」
「どちらにせよ、確かめる価値はある」
言葉の端々に、期待よりも打算が滲む。
ユウトは少し離れた場所から、その様子を見ていた。
視線が合うと、男の一人が口角を上げる。
「お前も、噂を聞いて来た口か」
「……住んでるだけだ」
「ふうん」
それだけで、会話は終わった。
だが、空気は変わった。
夜が更けても、村は静かだった。
魔物の気配もない。
異変も起きない。
「……何も起きねえな」
「それが一番、おかしい」
翌朝。
一団の一人が、村の外れまで足を伸ばした。
「結界……でもない」
地面を調べ、空を仰ぐ。
「だが、確かに近づきたくない感じがする」
説明できない違和感。
それが、彼らを苛立たせた。
「力があるなら、使わせる方法はある」
その言葉を聞いた瞬間、ユウトは立ち止まった。
胸の奥が、冷える。
村人たちは、まだ気づいていない。
噂を信じて来た者の中に、
“奪う”選択肢を持つ者がいることを。
この村にとって、初めての異物。
それは剣を振るう敵ではない。
静けさを壊しかねない、人の意思だった。




