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売れ残った転移者は異世界を謳歌する  作者: 無糖こーひー
1章 売れ残りは動かない
12/21

11"噂はいつも歪んで伝わる

噂は、正確に伝わることの方が少ない。

 行商人が酒場で話した内容は、こうだった。

「魔物が近づかない村がある」

 それだけのはずだった。

 だが翌日には、別の形になっている。

「傷ついた人間が、何もしなくても癒えるらしい」

 さらに日が経つと、尾ひれがつく。

「奇跡を起こす転移者がいる」

 誰も、その姿を見たわけではない。

 剣を振るったところも、魔法を使ったところも。

 それでも、人は理由を欲しがる。

 理由のない平穏は、信じられないからだ。

 村では、変わらぬ日常が続いていた。

 畑を耕し、家畜の世話をし、夕方には焚き火を囲む。

 ユウトは噂のことを耳にしても、表情を変えなかった。

「……外で、変な話になってるらしい」

 そう伝えられても、ただ頷くだけだ。

「そうか」

 それ以上、何も言わない。

 だが、噂は村の外で勝手に育つ。

「救われる場所があるなら、行くしかない」

「力をくれるに違いない」

「選ばれなかった俺たちにも、価値があるはずだ」

 期待と絶望が、同じ方向へ向かい始める。

 同時に、別の視点も生まれる。

「何かを隠しているのではないか」

「危険だから、魔物が近づかないのでは」

「放っておくべきではない」

 街道を歩く兵士たちは、立ち止まり、地図を見直した。

「……また、ここだ」

「報告が多すぎるな」

「奇跡か、厄介事か」

 まだ、結論は出ない。

 だが、記録は増えていく。

 村では、子どもが笑い、大人が働く。

 何も変わらない。

 それが、外から見れば異常だった。

 ユウトは夜、空を見上げる。

 静かだ。

 何も起きない。

 それでも、胸の奥に小さなざわめきがある。

「……来るな」

 誰に向けた言葉でもない。

 噂は、人を呼ぶ。

 期待も、疑念も。

 そしてそれらは、決して穏やかな形では辿り着かない。

 村はまだ、何も知らない。

 自分たちが、

 “何も起きない場所”として注目され始めていることを。

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